(3)
「はーやくしろよ、着かねぇのか?」
ビクターが舳先から飛び降り、フィオとジェドの間に颯爽と割り込むと、あっさり自分のランタンを灯してしまう。
それに追いつくように、ようやくジェドの灯が手元の闇を退かした。
「ねぇ何? 何かあるなら言いなさいよ」
フィオは素っ気ないジェドについ、口調を強めてしまう。
「別にいいだろ」
そんな筈はない。
何故、独りになろうとするのかが気になった。
「シャンディア!」
フィオは踵を返し、苛立ちながら彼女を呼ぶ。
その場から急に2人が離れ、ビクターは置いてけぼりだ。
張り詰めた空気に、脈が徐々に速まる。
「シャンディア何か話して。何でも。
貴方の事とか、色々知っておかないと」
シャンディアは桶から立ち上がり、どこか力任せなフィオの両腕に触れて宥めた。
「そうよ。貴方の一族はどんなの?
どんな風に生きてるの?」
シェナは3人の様子を気にしないまま、興味津々で訊ねた。
ビクターはフィオが心配になり、慌てて近付く。
「貴方、分かるんでしょう? 私達の事。
教えて! 私や皆は何なの!?」
その時、フィオの肩をビクターとジェドが同時に掴んだ。
ビクターは、真逆の位置にいた筈のジェドの速さに目を見張る。
騒ぐ5人の間にグレンが入った。
四人は、振り向かずとも分かる。
他の大人達の集まる視線に、少し身が縮まるような感覚がした。
「俺はおっちゃん達から聞く……」
ジェドの声は小さく震え、俯いてしまう。
そして、自分の事はいいとシャンディアに告げると引き返した。
一方、グレンや、遠目で見ていたマージェス、見張り台のカイルは、特にジェドの言葉に驚きを隠せなかった。
この子達は、自分達が思っている以上に感性が鋭くなっている。
「俺の事を教えてくれないか」
その、何ともないように取り繕うビクターの頼みを瞬時に遮ったのは、シェナだった。
彼女はビクターの腕を掴むと、激しく首を振る。
彼の選択は、ただ3人のために下しているだけだからだ。
「い、生きてく中で感じて、大事に向き合おうって言ったっ!
そう言ったんだからっ!
それに……じ、自分で見つけるっ!」
シェナは戸惑いながら放つと、船縁に顔を伏せてしまった。
フィオとジェドがビクターに向ける視線は、緊張に揺れている。
3人もまた、シェナが言う、いつか4人で話した事を思い出していた。
作り笑いをしなくなったビクターの視線が、宙に彷徨う。
ジェドは船縁によじ登り、そっぽを向いた。
ふと浮き彫りになったフィオは、グレンに優しく抱き寄せられる。
「悪いな、シャンディア」
シャンディアは、グレンの静かな言葉に小さく首で否定した。
「君の力は便利だろう。
借りたっていいんだろうが、いざとなりゃあな……。
どうしても不慣れなんだ」
「ええ勿論……
そう、これは……良い事ばかりではない……」
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




