(3)
シャンディアがスタンリーを通して見た、崩壊した街の断片、南。
そこから過去を遡ると、陸から少し離れた孤島で親子が人魚に襲われる映像を捉えた。
彼女が親子の特徴をスタンリーに伝えると、彼は行方不明者で間違いないと認めるなりその場に崩れ落ち、嘆き悲しむ。
俄かには信じ難い出来事だが、これまで既に異常事態を目の当たりにしており、彼は頭を抱えて整理に苦しんだ。
ここからは、新たな被害を防ぐ傍ら、呪いを払拭する為の手を打つ他は無い。
まずは早急に南に向かい、住民達を襲撃から守る必要がある。
「南が狙われてるって……
まさか今度はそこが消えるのか!?」
グリフィンがつい、声を上げた。
彼が元居た西の島は、空島を襲った蛇の魔女により消滅し、跡形もない。
それもまた、シャンディアの話によれば大地の神の仕業である。
元の住処が失われた惨事が、南に重なっていく。
「でもシャンディア、その島を救うってどうするの?」
シェナの問いかけに、シャンディアは僅かに俯いた先で視線を左右させる。
「鏡の結界を張り、島の姿を眩ます事で…
豹変した仲間達による襲撃は一時的に逃れられる……
その間に…何とか一族を復活させたい……
そうすればコアの封印を強化できる……或いは、
募った苦痛を払拭させられるかもしれない………」
だがそれを言い終わる頃の様子だと、殆ど自信が無いのだろう。
そう読み取ったビクターは、そっと彼女に近付く。
「君達だけでできるなら、こうはなってないんじゃないのか」
シャンディアの彼を見上げる視線は再び、足元にまで沈んでしまった。
多大な悲痛を抱え込んだ大地の神は、サタンと化した。
放出する呪いを蛇や陽炎に変形させ、生命を蝕む他、弄ぶようになった。
ミラー族は、その者を元居た地中に帰す術を持つ。
しかし、闇に再び光をもたらすには最早、彼等の力量だけでは限界だった。
「………サタンとやらの誕生の理由は…」
長老は鋭い眼差しを浮かべたまま、シャンディアに問う。
嘗て、生活する中で触れてきた聖書。
ただ耳から耳へと伝えられた、神話で知るだけの悪魔の存在が、実際に現れようとしている。
そんなものに一体、人間がどうして立ち向かえというのか。
「…………………」
サタンが何か、シャンディアは長く沈黙し、語らない。
フィオを返せと縋るように求めた際にも、相当な勇気を振り絞る様子が窺えた。
言葉を探り、選び、紡いでいくような話し方。
どうもまだ、言い出せない事があるのか。
長老は暫し待ったが、無理強いはしなかった。
現段階で、彼や周囲も情報量に頭を痛めている。
彼女からこれ以上を引き出す事は一度止め、フィオや他の子ども達を守る術を思案し始めた。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




