(2)
シャンディアの言葉の意味を深く訊ねる事もしないまま、否、怖さのあまりできなかったというべきか。
フィオは焦り、勝手に口走っていた。
時に過ぎる事があった、自分に対する不可解な謎。
知らなくていいと思ってみたり、やはり知るべきではないかと苛立ったりする日々を乗り越えてきた。
シャンディアはきっと、自分の何かしらを知っている。
ならば全て聞いて楽になれるかもしれないのに、どういう訳か何も聞こうと思えない。
自分の事を聞く事が怖くなっている。
これまでのものが、違って見えるような気がしてしまうのだ。
聞いてしまったその瞬間から、自分が別のものになってしまうのではないか。
皆の目が、自分が皆を見る目が変わってしまうかもしれないならば、嫌だ。
足が震える最中、小さな細長い影が床に伸び、服の裾を引っ張った。
「フィオは、まほうをつかえるの?」
会話から察したクロイに、フィオはすぐさま否定する。
「私は槍とナイフが使えるだけ。
皆と同………同じ…」
目はあてもなく、宙を彷徨ってしまう。
自分は本当に、皆と同じなのだろうかと。
人魚の声や、漁船が襲われる前に捉えた黒い影の群。
空島で、竜の精霊達の城の位置が真っ先に分かった事。
他の3人には、それと同じような事は起こらなかった。
「だーっ!一体どうなっとる!
こんな事が直ぐに受け入れられるか!?
わしからすりゃ、あんたらに見つけてもらってここにいる事が、果たして本当に良かったんか、怖くなってきたぞ!」
スタンリーはいよいよ耐え切れず、腰を激しく浮かせた。
その拍子に椅子が転倒し、その風圧で炎が辺りの影と共に大きく揺らめく。
「わしゃ行方不明の親子を探したいんじゃがな?」
シャンディアは咄嗟に彼を振り返り、眉を顰める。
そこでグレンが、スタンリーとの出会いをシャンディアに話した。
彼女はそれを聞いている内に南の島が引っ掛かりだした途端、スタンリーに大きく眼を見開く。
その急な動作に慌てるスタンリーは息を呑むと、じっと次の言葉を構える。
シャンディアは目前の彼を通して見たものに心底恐怖し、フラフラと首を左右に振りながら両手を頬に当てた。
こうしてはいられないと言わんばかりに、顔はみるみる青褪めていく。
「どうちたの…?」
子どもながらに心配するリサの問いかけも他所に、シャンディアは早口になる。
「船は直ぐに出せますか…?
この方の島が危ない…どうにか、結界だけでも張りたい…」
一体どういう事かと、皆は騒ぎ始める。
「私の仲間は今や…人喰い人魚と化している…
貴方が探す親子はもう…」
「おいおい…」
レックスがやっと言葉を溢すそこに、スタンリーの悲鳴が合わさった。
予測が的中した長老もまた、声も無く両拳を震わせる。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




