(4)
子ども達は、浜辺に近い林の端に集まっていた。
海の傍にいない方がいい。
そう真っ先に指示したビクターの言葉を、皆は素直に聞いて過ごしている。
4人がどこか落ち着かず、そわそわしているのを黙って見て感じるリサ。
彼女の隣には、炭で字を懸命に書くジェドがいる。
だが、よく見ると同じ単語ばかりが並んでおり、もしかすると別の事を考えているのではないか。
それを覗き込んだウィルは、眉を顰める。
シェナの擂り粉木を握る手が、また止まっている。
クロイが籠いっぱいに摘んできた花を潰し、絵を描く為のピンク色を作ろうにも、これでは一向に進まない。
なかなか出来上がらないそれに、クロイは寂しげな顔をした。
「なぁーあ、なんか はなせよっ」
静か過ぎる4人に痺れを切らしたケビンは、木に凭れてぼさっと立つビクターの服を引っ張る。
ビクターは、先程からずっと無言のフィオを見ていた。
彼女は木に凭れ、気を張り詰めた表情をしながらずっと海に目を凝らしている。
ビクターがケビンに振り向くと
「なんであんな、みどりいろ だったんだ?
かいそうでも、かぶったのか?」
体も漁船も酷く緑色をしており、生臭さもあった。
だが、これになかなか返答できない。
ずっと前の自分なら、何も気にせず平気で話していたのだろうが。
「ああ、網に海藻が付きまくってて。な?」
ビクターは適当に誤魔化すと、背後のジェドに投げかける。
彼は少し苛立ち気味に短く息を吐き、話しかけるなと言いたげに顔を険しくさせたが
「波もあって、絡まった…
ほら、まだここに付いてんだろ」
彼もまた同じように、小さな彼等を怖がらせるまいと誤魔化し、横にいたウィルに左腕を見せてやる。
こびり付いた汚れは、他にも点々と拭いきれずに残っていた。
「わー……きーったなっ!」
「るっせぇ…」
これもまた奇妙でならない。
ジェドはいつもなら、もっと力強く怒る筈だろうと、ウィルは眉を顰める。
「ちがうわね。
ほんとはもっと、ちがうことが あった」
リサは鋭い。
「だって そらが Boomって!
そして、きゅうに ぎょしぇんが でてきた。
チッカチッカして、みえたり きえたり。
なぁに?りょうなんて、してなかったでしょ?」
「そーよ。りょうで、あのスキーに のらない」
クロイもまた、目の前でぼんやり手を止めるシェナに言う。
「おれたち、みてたんだからなっ」
ケビンが強く放った時、冷風が植物をそよそよと吹き、木漏れ日を揺らした。
その場は一時、自然が奏でる音だけになる。
温かみある夕陽が射し込むが、空気はどこか不気味だ。
シェナは子ども達から視線を海の方に逸らす。
その顔は不安に満ちており、心が騒ついてならないようだ。
その時、海から一切目を離さずにいたフィオが、すっくと立ち上がる。
水面が光った。
陽光を受けたのではなく、もっと別の光だったのではないか。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




