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(3)




※シーン都合につき 約1580字でお届けします。







 (よもぎ)を磨り潰したものは、切り傷に塗ると消毒効果が期待できるとされている。

初めは野草を扱う事に慣れず、抵抗があった人々だが、元を辿ればこのような草花の研究を経て、薬が誕生している。




嘗て服用したり、塗布したりしていた馴染みある薬など、もう無い。

こんなに変わり果てた地球でも、引き続き懸命に生き永らえる為に、薬をなんとか生み出そうとしていた。




4人の空島からの帰還を機に竜の精霊達が訪れた事で、島に植物がより多く発見されるようになってから、植物科学に詳しいアイザックは意気込んでいた。

元は寡黙な性格だが、得意が活かされるようになってからは明るく過ごせている。

日々、慣れない島暮らしをする中で俯く事は多かったが、こうして変われたのもまた、空の神々のお陰だ。






 レックスが未だ目を覚まさずぐったりと横たわっている側を、彼のパートナーは一切離れる事なく見守っている。




 太陽は早くも傾き始めていた。

僅かに開いていた窓の隙間から射し込む淡い陽の光が、横たわる彼の体の上でそっと揺れている。




 この場には南から来た老人、スタンリーがいる他、長老とアリー、自宅から出直したマージェスがいた。

グレンとカイルは、漁船の修理を進めている。






挿絵(By みてみん)




 しんとしたレックスの家では時折、頭を悩ませるように小さく唸る声がした。

長老は漁船での出来事を聞き終えると、硬い表情のまま、火の粉を立てる薪に目を向けて黙っている。

マージェスは首筋を搔き、何が起ころうとしているのかと、不安を宙に描いていた。






 レックスの深傷は、見るからに縫合せねばならない状態だ。

しかし現状、止血と消毒の応急処置までしかできない。

南にいる技術者に会うまでに、彼は持ち応えられるのか。

このような場合、最悪過()ぎるのは切断だ。

それに皆の顔が青褪める。






 片や、現れた人魚と、スタンリーが捜索する行方不明の親子が気がかりだ。




「………喰われたなんて事はないか…」




長老の鋭利な目に横入りする、揺れる炎。

低い声に被さるように、真っ先に素っ頓狂な声を上げたのはスタンリーだ。

だが、断じてそれは無いなどとは言い切れない。




「探しに向かった島に…何かしら痕跡は無かったか…

乗っておった船の残骸………

喰われたと仮定した場合……骨や肉片……

近辺で血が滲んでおったなど…」



「おいおいおいおいおいおい止めてくれそんなおっそろしい!」




スタンリーは長老の言葉に血の気が引き、慌てる。

彼や他の南の住民はただ、一般的な人探しをする感覚で動いていた。

人魚なんて誰が想像するだろう。

それも、人喰いの類など。

長老が言うような事は、誰も思いつく筈もなかった。




「しかしじゃ、スタン……

見たろう……ただ事ではない……

急に出ていく事が考えられんのなら…

襲われた可能性も視野に入れんと…」




その親子とは決して、仲違いしていた訳ではない。

南でも東同様、皆が結束して生きているとスタンリーは言う。






 再び沈黙が生まれ、火の粉が上がる音を背に、長老は視線を窓の外に向ける。

そして、どこか急いだ様子でマージェスを振り返った。




「あの子等はどこにおる……」




4人が気がかりだ。

以前、西の海底の沈船に封じられていた、グリフィン。

彼を(おとり)に、彼等は魔女に誘き寄せられた。

現実離れも一体どこまでか、次は人魚ときている。

恐ろしい事この上ないその者共の目的は、何か。




「チビ共といると思うがな……」




マージェスも、ここへ来るまでに彼等の姿を見た訳ではない。




「…………他の者にもじゃが

浜に寄らんよう言ってくれ………

片した訳ではない今……油断できん……

何かは来る……」




暗く落ちる長老の目はそっと、曝け出されたレックスの右足に向く。






 傷を合わせるように布で硬く包み、締め付けられていた。

そこには薄っすらと、血液と緑の薬草の色が滲んでいる。

今は静かに寝息を立てているが、直に激痛に襲われるだろう。

この静かな内に、一刻も早く施術ができる南への移動を実行したいところだ。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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