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*完結* 大海の冒険者~人魚の伝説~  作者: terra.
第三話 鋒
31/187

(10)




 こうしてはいられないと、シェナはやはり、展望台から下りて皆に合流しようと決めた。

普段通り網を伝っていては、もたもたしてしまう。

何かいい方法はないかと模索し、不意に掴んだのはロープ。




柱に巻かれたそれを解くと、固定を確かめるべく、数回引く。

カイルやレックスがするロープ下降はした事がないが、何度も見てきて知っている。

彼女は展望台の縁に攀じ登ると立ち上がり、戦い続ける仲間達を見下ろした。






 強い風を受けてピンと張る帆の音に、漁船の揺れが軋み音を上げている。

身を貫くような冷風が吹き荒れる中、シェナは踏ん張ってロープを両手で握り、口をきつく結んだ。

ここの誰よりも高い位置にいる。

少々怯むがしかし、自分は、空島の高い城から竜の口を目指して飛び降りた。

それを思えばこのくらい、何ともない。






 体の前でロープを掴み直すと意を決し、縁を蹴って宙に飛び出した。

だが




「わあああーーー!」




彼女の恐怖に満ちた絶叫と共に、強風が長く、力強く吹き荒れる。

彼女は風に靡き、大気に尾を引いているようだ。

人魚や漁師達、3人までもが風で立位を乱し、視界を髪や飛沫で遮られていく。




「「「シェナ!?」」」




下の者達は青褪める。

下降どころか彼女は、ロープをしっかり握って放さない。

できる筈がなかった。

ロープは垂れ下がるどころか宙を微かに上下し、まるでシェナを凧のように泳がせているではないか。

彼女は風を受けて膨らむ帆に衝突し、鈍い声まで溢している。




「助けてーーー!」




人魚の緑の血に汚れるビクターが、1体を海に投げ飛ばした直後、シェナの真下へ駆けた。




「手ぇ緩めろバカ!」




しかし、彼女に目を奪われている場合ではない。

人魚達はまだ、船内で狂気を放ちながら襲撃を繰り返している。




「キリがないわ!」




フィオが声を張ってカイルを振り返った途端、後方から影がみるみる伸びて覆い被さる。




「屈め!」




カイルが怒鳴りながら槍を投擲(とうてき)

フィオは瞬く間にしゃがむと、頭上にそれが通過する風を感じた。






 彼が投げた槍は、フィオの後方から迫っていた人魚の右肩を貫き、そのまま船の中央の最も太い柱に打ちつけられる。




「おい死んじまったんじゃ!?」




グレンが慌てるところ、レックスが3体目を投げ捨てたところで槍を仕舞う。




「してられるか!外へ気を逸らす!

その隙に島を探せ!」




彼は、予め積み込んでいるジェットスキーで海上に出て、この群を自分に引き寄せると言う。




「なら2手だ!」




レックスが去ろうとするところ、グレンが肩を掴み、そのまま先を越して下のフロアに消える。

レックスは急ぎ後を追った。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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