(9)
「これ、鏡じゃねぇか?ほら、俺達が映ってるぞ」
ビクターは、シェナから取った飾りを傾けながら皆に見せる。
海に長く沈んでいた割には、どこも錆びておらず鋭利な光を放っていた。
面の1つ1つに子ども達の顔が映る様子を見たグリフィンは
「何だかダイヤモンドみたいだな…」
「だいもん って なに?」
ウィルが横入りしてくる。
「ダ・イ・ヤ・モ・ン・ドだろ」
ジェドが持っている魚を下げ直して答えた。
「なあに?」
リサはグリフィンに前のめりになって問う。
「石の名前さ。
そうだな、空島で結晶を見なかったか?
表面の造りが、それに似てる」
旅に出た4人はそれを聞いて表情をパッとさせる。
光り輝く湖や滝壺に、巨大な半透明の岩が存在していた事を思い出した。
一方、空島を知らない子ども達は、分からないと騒ぎ立てる。
ブローチや髪飾りにしては、やはり大きい。
この鏡の星のような装飾は一体、何なのだろうか。
「ねぇ貸しておいてよシェナ。
後で2人もこっちに来るでしょ?」
ビクターの手にあった装飾は、フィオの手に渡っていく。
彼女は、皆でこれを調べようと提案しながら、じっと眺めた。
「見て海!……あ、消えちゃった。
これ、海が見える!」
フィオはそこに、波と気泡を見たと話す。
「うみ が みえるの!?」
「かせかせ!」
「ひゃあ!いたいっ!」
フィオの手から乱暴に奪われたそれは、激しく床に叩きつけられてしまう。
壊れたかと騒ぎ立てるが、どうやら無事のようだ。
尖っているならば欠けていそうなものだが、しっかりと形状を保っている。
「映っただけじゃねぇの?」
ビクターの言う通りかもしれない。
何せ、鏡のようなのだから。
「さあさ戻った戻った。観察するんだろう?
ちゃんと両手で、下から持つんだ」
グリフィンの促しに、皆が散らかったテーブルに戻っていく。
それを見届けながら彼は、ビクターに振り向いて静かに中へ促した。
「ん。お前の」
捕れた魚をジェドが突き出すが、ビクターは家の外の木箱に置いとけと頼み、やっと中へ入っていく。
そこへ思い出した。
「お前、今日」
既に通過して背を向けていたジェドは、ふとビクターに振り返ると、悪戯な笑みを浮かべた。
今夜の作戦は、彼もしっかり把握しているようだ。
「なーによ、気持ち悪い」
「言ってろ。どーせお前ものるさ」
ジェドの発言が理解できず、シェナは肩を竦めて自分の家に戻っていった。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します