(4)
時はもう直、子ども達を眠りの世界へ誘う頃か。
帆は絶えず風を受け、漁船を押し続けている。
人魚に後を追われている気配も無い。
南へ向かう最中にシャンディアが話した通り、ここから2手に分かれる。
実行地点は、なるべく東に接近したところが望ましい。
4人が潜水から戻る際、漁船に直ちに戻れるよう待機が必要だ。
その計画も既に、漁師に伝えている。
南の住民は、下の階でランタンを灯しながら東への到着を待っていた。
そんな中、漁船に呆気に取られている。
彼等も船は使うが、これ程までのものは見事だと、事態も他所に辺りをまじまじと見渡してしまう。
また、突如現れた東の者の戦い方や、手際の良さを思い出していた。
同じ生き残りとはいえ、住む環境が違えばこうも動きが異なるのかと。
街の名残がある地を踏みしめながら、嘗ての地球で生活を送っていた時の知恵を絞り出し、遺る物資を当てにして生きてきた。
このまま上手く互いに手を組めば、世界の復興も夢ではないのだろうか。
来る時よりも風が強く、冷ややかだ。
シェナは未だ、顔を強張らせている。
シャンディアが気になって声をかけようとした時、ビクターがシェナに寄り添った。
華奢な体でも逞しいところがあるシェナの肩を、彼は柔らかく掴む。
触れていても、互いに何も言わない。
わざわざ、言葉を交わさなくともよいのだ。
シャンディアは双眼を潤わせ、波紋を生む。
鏡の瞳を通して、2人が出会った頃を覗いた。
その光景に、心が温まっていく。
ビクターは、シェナと初めて言葉を交わした時から決めている。
小さいながらも気が大きく、潔い事を急にやってみせるが、未だ多くの面で不器用さがあり、涙も見せる。
そんな彼女を、守ってやると。
「シャンディア」
ジェドの声に、彼女の双眼が戻る。
見たものを慌ただしく隠すようだったが、彼はそれに触れる事なく、潜水する件について問い始めた。
「着いてからの策は?
相手にする奴は、コアの他にいるのか」
シャンディアは暫し、東を向く。
まだ海底に向かうには距離があった。
もう少し接近した時、島の姿を一時的に可視化させる必要がある。
その心積もりをした。
「ここからは、深い鏡の路を進む事になる……」
「何それー!?」
何とも興味深い言葉を耳にするなり、シェナは先程までの表情を吹き飛ばすと、ビクターの腕から弾け飛ぶように振り返る。
しかし傍にいた漁師は、緊張の目を浮かべた。
「リヴィアが出したもの?」
フィオは、空島からの帰り道を思い出す。
女王リヴィアが湖にトンネルを作り、自分達の世界まで海の通路を繋げた。
言わずもがな、シャンディアの眼にその時が映し出されている。
「いいえ、あれではない。私達は違う種族だもの。
その際は苦しかったでしょう……そのような事はないわ」
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
9月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




