(2)
「戻るよ。何事も、絶対は無い。君も上がって……」
暗い林の路を向くと、気遣うグリフィンの手が、アリーの腰を僅かに押す。
「変な事考えないでね」
振り返ったアリーの顔は、強張っていた。
「貴方もまた、率先して行ってしまうでしょう」
否定はできない。
元々住んでいた西の島が、完全に海に呑まれると予測できた時、死ぬ覚悟で、天に昇る光の正体を突き止めようと荒海に出た。
その傍ら、ここ、東に辿り着こうとした。
どうせ死ぬにしても、最後まで行動したかった。
何が起こるか分からない、縋るものもない大嵐の先に無事がある事に賭けよう。
そんな発言をした、無茶な自分だ。
その結果、共に飛び出した人々に死を齎してしまったような気になっている。
自分だけは、生き残って。
しかし、失われた仲間はこれを恨む事をしないだろう。
だからこそ、いつだって最大限を尽くしたい。
その意志は、端で火の粉と化して弾け、舞い上がる。
「ああ、きっとそうする……してしまう……
でも……」
アリーは眉を寄せ、恐々と目を震わせている。
「今度はもう少し、賢くな。
前とは、状況が随分違うから。今の俺には……」
松明を見上げる瞳に、炎が焼きつくように揺れ動く。
「今の俺には、あの時よりも守りたいものがあるからな……」
口調こそ柔らかいが、力強い眼差しは、過去から未来にかけて篤と眺める。
島が消滅する嵐の時を。
砂になってからの闇を。
切り開かれた光と、更なる可能性を。
それらを暫し噛み締めては、ふとアリーに微笑んだ。
止まっていた足が動き出し、再び林を二人で進むと、ぼんやりと温かさを灯す家々が垣間見える。
「エドが難しい顔をしてる……
相変わらず、いつもの箱を開けて……」
長老のお決まりの動作だが、何を覗いているのかは分からない。
「あまり気にかける時間が長いと、体に障るわ……」
「仕事柄だともう、染みついて取れやしないさ。
割り切って、考え方の知恵を貰えばいい。
それが役目だろうし、きっと……
そうありたいんじゃないか」
アリーは曇っていた表情を和らげると、小さく頷く。
林を抜けた先には、まだ共に過ごしている子ども達が集まる自宅がある。
グリフィンにとって今や、大切な場所だ。
中からは小さく、賑わう声が聞こえてくる。
彼等は随分、安心しているようだ。
今はそれに、胸を撫でおろす。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
9月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




