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世界戦史の中で~研究所長の狂人マスラさん!~  作者: ルミネ
第1章 研究所に来たマスラさん
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第1章3話 時計塔での出来事


 翌日。


「マスラさぁ~ん!マスラさぁ~ん!!」

 涙で顔をグチャグチャにしたマミが研究所の所長室に飛び込んできた。


「今度はどうしたんですか?」

 呆れた表情をしつつも、話を聞こうと椅子へと誘導するマスラ。

 だが、マミはマスラの白衣を掴み、

「うぇぇぇん!うぇぇぇぇん!エミリが死んじゃうぅぅ」

 と、泣き出した。


「ちょっと待ってください。どういう事ですか?」

 知り合いの"死"という言葉に反応したマスラはちょっと口調を強めにしてマミに聞いた。



「ううぇっううぇっじ、実はぁ~…」



--------------------------------------------------------------


 本日。夕方この研究所へ来る前、マミはシマザキ・ユカが一人で飛び降りたとされる学校の屋上へ行こうとした。

 だが、厳重に封鎖されており、行くことは出来なかった。

 そこで、なんとしても現場を見ておきたいマミは、旧校舎に隣接している時計塔へ向かった。

 旧校舎の時計塔は現在の新校舎よりも高い位置にあり窓もある。マミがそこに行く理由は、シマザキ・ユカが飛び降りたとされる新校舎の屋上が時計塔の窓から見えるからである。


 なぜ、マミがそんな事をしたのか。

 理由は、シマザキ・ユカが本当に自ら盗難事件を引き起こしたのかが疑問だったからだ。


 かねてから噂されていた事。それはシマザキ・ユカは常日頃から脅されて金品を要求されている。という事だ。

 その噂から結びつく事とすれば、シマザキ・ユカは無理やり泥棒役をやらされて、それがバレた結果、指示した者が自身も同罪となると判断し、シマザキ・ユカを自殺に見せかけて殺したのではないか。

 そうマミは推理したのだ。


 元々大人しく優しい性格だったシマザキ・ユカ。

 彼女を知っているものは口々にそう言っていた。

 そのシマザキ・ユカが本当に脅された挙句殺されたのだとしたら許せなかった。


 本当に他にも犯人がいるのであれば、彼女一人が泥棒の汚名を着せられているのが許せなかった。



 早速時計塔へ簡単に忍び込んだマミは窓へと近付き、新校舎の屋上を見た。


 だが、


「(望遠鏡がないと分からない…)」



 そう。細かく調べようとしても時計塔からでは遠すぎたのだ。



 マミは自分の考えが浅はかだった事を反省しつつ、天文学部から望遠鏡を借りてこようかと画策した。


 が、ここで予期せぬ事が起きる。


ガタッ!ガタッ!


「!?」

 なんと、マミの他に別の者達がやって来てしまったのだ。


 そんな必要も無かったはずだが、反射的に隠れてしまったマミ。

 まぁ、入ってきた人物が教師だった場合、立ち入り禁止となっている時計塔に入り込んだことが知られれば説教が待っているので、マミの対応は間違ってはいない。


 そんな事とは露知らず、時計塔に入ってきた新たな侵入者は会話を始めた。



「ねぇ。警察はどこまで知ってんの?」

「彼女が一連の盗難事件の犯人というところまでだ。俺達のことはバレていない。校長から直々に盗難品のことについては黙認してもらえるように頼んだらしい」

「だから落し物連絡表の中にあんなに大量に財布や時計とかが入っていたのね…」

「そういうことだ。俺達の事は嗅ぎ付けられてはいない。だからこのまま大人しくしていればその内落ち着くはずだ」

「そうね…そうよね…」

「あぁ。僕達の未来の為に、黙っておこう」

「えぇそうね…未来の…為に」

 男女の声。

 マミは気になって隙間から覗いて見て見る。

 すると、目に入ったのはなんとこの学校の数学教師と隣のクラスで美女として有名な女子生徒だった。

 数学教師の名前は『イソダ・リョウジ』。

 美女の方は確か『ナカガワ・ヒジリ』だった。と、マミは思い出していた。


 ヒジリは顔はいいが見た目が派手で素行もよくないと有名であった。


 会話からすると…もしかしたらこの二人がシマザキ・ユカにロッカー泥棒をさせていたのかもしれない。


 しかし、その後の二人の会話は泥棒よりも恐ろしいものだった。


「全く、殺人罪なんて洒落になんないからな。お前もそう思うだろ?」

「えぇ。勿論よ」


 なんと、教師イソダからとんでもない爆弾発言が出た。


 つまり教師イソダがシマザキ・ユカを屋上から突き落としたと言っているのだ。



 これは拙い!そう判断したマミはそーっと二人に悟られないように積み重なった荷物の裏を通って部屋から出て行った。







「<えぇ、分かったわ。―――えぇ、そうね。そうして頂戴>」

 その日、ナカグラ・エミリは旧校舎の一階のとある一室で、電話をしていた。

 緊急の電話だったため、急いで誰にも見られないように、今は使われていない旧校舎へやってきたのだ。

 エミリは電話をし終わり一息つく。すると、


「あ!」

 と、廊下で声が聞こえた。


「!?」

 エミリは心臓が飛び出るかと思った。

 慌てて声が聞こえた廊下を見てみると、


「…また貴方ですか…」

 そこに居たのはマミであった。

 マミが教室の扉の窓からエミリを指差し驚いていた。

 マミはエミリを見つけると扉を開けズカズカと入ってくる。


「な、なんですか?いったい!」

 エミリは警戒していたが、マミはそれどころじゃない。



「ご、ごめんなさい!あ、それと昨日はごめんなさい!でもそれどころじゃないの!!」

 マミはただならぬ様子を見せながらエミリに詰め寄った。


「な、何!?いったい何なの?いいから落ち着きなさい。いったいどうしたって言うの?」

 エミリはとりあえずマミを落ち着かせ、話を聞こうとした。


「さ、ささささっき、時計塔の所で数学のイソダ先生と隣のクラスのナカガワ・ヒジリさんが密会していたの!」

「あら?なるほど、それはスクープね」

 なんだそんな事かとエミリは笑う。


「違うの!その密会の内容なんだけど、どうやら二人はシマザキさんを殺したみたいなの」


「何ですって!?」

 思わぬ情報に目を見開くエミリ。


「ちょっと待って。それじゃああれは自殺じゃなくて他殺という事なの?」

「そう…みたい…」

「はぁ~…」

 エミリは眉間を指で押さえて溜息を吐いた。


「どうして貴方はいつもいつも余計な事に首を突っ込んで…」

 エミリはマミに対して呆れているようだ。


「し、仕方ないじゃない!ど、どうしよう!どうすればいいの??」

 マミはそう言ってエミリにしがみ付く。


「えぇい、鬱陶しい!そんなの警察に言えばいいじゃない!」

「私一人で!?」

「当たり前でしょ!?」

 二人がヒートアップしていると、




「それは困るなぁ…」




 と、再び入り口から声が聞こえてきた。

 今度は男性の声だ。


「「!?」」


 二人はいきなり声がした方向を見る。


「あ…」

 マミは青い顔をしてその人物を見た。

 そう、その人物こそマミが先ほどエミリに殺人者だと話していた人物"教師イソダ"であった。

 教師イソダの後ろにはヒジリの姿も見える。


「ふぅ。時計塔でチラっと影が見えたから怪しいと思って追いかけてみたら案の定。俺達の会話を聞いていたとはね…。あそこは生徒は立ち入り禁止だったと思うんだけど?」

 そう言ってニヤリと笑う教師イソダ。


「そ、それはナカガワさんだって一緒でしょ!」

 マミはそう言ってヒジリを指差す。それに対しヒジリは、


「私?私はいいのよ。だって先生と一緒だったんだから」

 そう言って教師イソダの腕に絡みつく。


「まぁ、そういうことだから、君達には黙っておいてもらいたい…。殺しはしない。だけど、それ相応の保険はかけさせてもらう。フフフ、丁度来たみたいだ。おい。そこに居る二人を捕まえろ!」


「え!?」

 教師イソダが声をかけた方向をマミは見た。すると、不良男子生徒が3人反対側の扉から入ってきてこちらに向かってきた。


「な、何をするつもり!?」

 エミリがそう言うと、


「はははっ。死んだユカと同じように、イケナイ画像を撮らせてもらうだけさ。いやぁ~一気に女子二人の画像を手に入れる事ができるなんて、運がいい」

 と、教師イソダは笑っている。


「くっ。モチダさん、逃げるわよ」

 そうコソッとマミに耳打ちするエミリ。

「え!?でも、どうやって…」

 と、戸惑うマミ。


「こうやって…よ!」

 すると、エミリは突然向かってきた男子生徒一人に対して回し蹴りを食らわせる。


「グゲ!?」

 モロに蹴りを食らった男子生徒は倒れてしまう。


「テメェ!」

 もう一人の男子生徒がエミリに掴みかかるが、それをエミリは避けて股を蹴ろうとしたが…。


ドガッ!


 最後に向かってきた金髪の男子生徒がエミリの蹴りを止めて、掴みかかろうとした。

 金髪の男子生徒は背が高い。180cm以上はあると思われる。

 迫り来る手はかなり大きく、恐怖を感じる。


「くっ!」

 エミリは迫り来る大きな手を払いのけたが、弾みで持っていた携帯を落としてしまった。


「今よ!」

「は、はい!」


 マミとエミリは不良達の間をすり抜けて教室の外へと出て行った。


「!?追え!」

 教師イソダはそれを見て慌てて男子生徒達に指示を出す。


 男子生徒三人は急いで二人の女子生徒を追いかけて行った。





「おい、あいつ等じゃねぇか?」

「よし、捕まえろ!」


 マミとエミリは旧校舎から飛び出してきたが、その先に待っていたのは、携帯を片手に持った2人の不良男子学生達だった。


 旧校舎から出て直ぐに現校舎の職員室に飛び込もうと考えていたエミリはその案を断念し、マミの腕を引っ張って旧校舎側にあった裏口から飛び出した。


「待ちやがれ!」

 直ぐ後ろには不良達が迫り来る。


「ち、近くに知っている人の研究所があるの!そこに行って助けを求めよ?」

 走りながらマミはそうエミリに伝える。


「い、いい案ね!ちなみにそこには何人も大人がいるのかしら?」


「うん。マスラ先生も居るし」


「え!?そうなの?な、なら安心ね!貴方は直ぐにそこに行きなさい!」


「え?ナカグラさんは!?」


「私はそこの廃工場でやつ等を引き付ける!」


 そう言ってエミリは廃工場の入り口で止まりマミを一人走らせた。


「な、ナカグラさん!?」


「いいから行って!」


「う…うぅぅ…ゴメン!」


 マミは走った。走りまくった。近くのマルカワ軍需品研究所へ…。



「居たぞ!」


「こっちよ!間抜けども!」


「テメェ!!」


 曲がり角を曲がった辺りで、後ろからそんな声が聞こえてきた。



--------------------------------------------------------------


 と、こんな事があったのだが、それを伝えるはずの当の本人にはそんな余裕は無く、


「あぁぁううう~、学校でぇぇ~シマザキさんを殺した人が~学校の先生と生徒でぇぇぇええっ。その事をナカグラさんに伝えたら、犯人のイソダ先生達にも知られちゃってぇぇぇぇええっ。不良達が追いかけてきてぇ~えうえうえうっ!ひっぐ、ナカグラさんが囮になってすぐそこの廃工場で戦ってるぅぅぅ~」


 と、顔面汁だらけになりながらマミはマスラに必死になって伝えた。


「…なるほど…」

 マスラはその一言でなんとなくエミリの危機を感じ取る。

 すると、


ピロリロリッ!


 と、マミの携帯が鳴った。


「も、もしかしてナカグラさん!?」

 マミは希望を持って携帯を見る。

 しかし、メールの中身を見た途端顔を青くした。


「見せて下さい」

 マスラはマミの座っている方へと回り込み、携帯の画像を覗く。すると、そこに映っていたのは…、


「クッ…」

 マスラは苦々しい表情をした。

 そう。メールに添付されていた画像にはエミリが捕まり、文には、

「<誰にも知れせるな。すぐに廃工場まで来い>」

 という内容が書かれていた。


「ど、どどどどうしよううぅぅぅう!!!」

 もうマミはパニックであった。


「落ち着きなさい。私が行きますから」


「え!?」

 マスラが行くと言ったので驚くマミ。


「で、でもでもでも!」


「いいですね?誰か、モチダ大佐の娘さんの世話を!」

 そう言ってマスラはマミの世話を研究所の職員へと依頼する。

 勿論、余計な事をさせないように。という意味も含まれているので、研究所の職員はマミを見張りつつ、落ち着かせようとした。

 男性スタッフであり、イケ面だ。

 だが、マミはそんな事は関係ないとばかりに泣いている。


「…いくぞ"ルイ"」

「はい」

 マスラは眼鏡を光らせ、入り口のところに立っていた助手のルイにそう言って所長室を出た。

 そしてルイはその後ろを付いて行った。



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