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異世界転生してやっぱ中世ヨーロッパっぽいなって思ってたら近世ヨーロッパに転生してました…  作者: あああ


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第62話 天才

サヴォイアでの大敗は、北イタリアに陣取るオーストリア・サルデーニャ連合軍に致命的な亀裂を生じさせた。


「バカな……! なぜあんな雪山から、疲弊ひとつしていないフランスの大軍が現れるのだ!?」


 サルデーニャ王国の首脳陣は混乱の極みにあった。


彼らの計算では、アルプスを越えてきたフランス軍は寒さと飢えでボロボロになり、簡単に追い払えるはずだったのだ。


 だが、現実に押し寄せてきたのは、携帯食料で腹を満たし、アランソン製小銃を構えた「満腹の鬼神たち」だった。


「報告! 敵将ナポレオン、我が軍の分断線を完璧に見抜き、怒濤の速度で各個撃破を仕掛けてきています!」


「モンテノッテで我が前衛が壊滅! モンドヴィでも陣形が崩壊しました!」


 ナポレオンの神がかった戦術眼と、行軍速度を一切落とさないマサトの補給システム。


この二つが組み合わさった「連戦連勝の電撃戦」の前に、サルデーニャ軍は手も足も出なかった。

 アルプス踏破からわずか十日あまり。

追い詰められたサルデーニャ国王は、たまらず白旗を揚げたのだった。


「降伏だ! フランスと休戦協定を結ぶ! これ以上戦えば国が滅びる!!」


 サルデーニャ王国の脱落により、ハシゴを外された形となったオーストリア軍は大パニックに陥った。


「くっそ、サルデーニャの裏切り者め! 撤退だ! ロディの橋を渡って態勢を立て直すぞ!」


 オーストリア軍は要衝ロディへと全軍を下げ、川を挟んで頑強な防御陣形を敷いた。

橋の向こうには数重の砲兵陣地。いかにナポレオンといえど、この橋を渡ろうとすれば大損害を免れない……はずだった。


 だが、ロディの対岸に立ったナポレオンは、不敵にニヤリと笑った。


「全砲兵隊、前へ! アランソン特製の『長距離大砲』をお見舞いしてやれ!」


 ナポレオンの号令とともに、フランス軍の砲兵隊が一斉に展開する。


オーストリア軍の予想を遥かに超える射程と精度を誇るアランソンの大砲が、対岸の敵砲兵陣地を一方的に射程外から粉砕していく。


「な、なんだあの砲の威力は!? 我が軍の砲台が届かない場所から叩かれているぞ!?」


 敵陣が混乱に陥った瞬間、ナポレオンが全軍に向けて軍刀を抜いた。


「今だ! 旗を持て、私に続けぇぇぇっ!!」


 ナポレオン自ら先頭に立ち、旗を掲げてロディの橋を駆け抜ける。

士気最高潮のフランス兵たちが、雄叫びを上げてその背中に続いた。



『オォォォォォッ!!』


 圧倒的な火力で敵を潰し、天才の指揮で一気に踏み込む。

ロディの戦いは、オーストリア軍の歴史的大敗という形で幕を閉じた。


 数日後。北イタリアの中心都市、ミラノ。

 花吹雪が舞う街頭を、ナポレオン率いるフランス軍が堂々と行進していた。

オーストリアの苛烈な支配から解放された市民たちは、熱狂的な歓声で彼らを迎え入れた。


「ナポレオン万歳! 新しいフランス万歳!」


 軍馬の上で歓声を浴びながら、ナポレオンは胸元からマサト宛ての報告書を取り出した。


『両総裁へ。サルデーニャを降伏させ、ロディにてオーストリア軍を完全撃破。本日、ミラノに入城せり。北イタリアの支配権は完全に我が手にあり』


 ナポレオンは遠くパリの方角を仰ぎ、不敵に微笑んだ。


 史実以上の圧倒的速度と、最小限の損害で勝ち取ったイタリア全土の平定。

フランスに莫大な戦勝品と領土をもたらしたこの快挙は、パリの総裁政府マサトとラ=ファイエットの求心力を、揺るぎない絶対的なものへと高めることになるのだった。

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