女神様の言う通り
(裏)との同時投稿はミスするので回避しました。
中央校舎へ向かう道すがら、晶の異世界へ対する期待感は薄まり始めていた。
学園は見たことないような規模ではあるが、行き交う生徒は普通の女子ばかりだし、校舎や通路に特異なギミックなどは見当たらない。
異国の学校を歩いている気分しかしない。
通りすがりの女子生徒に微笑みかけられ、晶はある事に気がついた。
「ヴァネイさん。みんなの制服がまちまちですが何故なんですか?」
三歩前を進むヴァネイに尋ねる。
「それは元の世界の制服を着ていたり、他の学園の制服を着ているからだ」
「ここでは服装は自由なんですか?」
「何らかの制服は着用する義務がある。だが中二階の学園同士の垣根は低いので、手続きさえすれば比較的簡単に転校や留学が出来るんだ。そうなると制服を転校の度に変えるのは大変だからね」
晶の隣を歩くラズが言葉を続ける。
「……ワタシもここに転校。元の世界での職業は卜占官。……でもワタシの世界は危険。占いだけでは身を守れないから一年間だけエイテスに授業を受けに来た」
「ラズさんの世界は危険なの?」
「……魔物より人間が危険。パパもママも政敵に殺された」
「そうなんだ……」
「……安い同情は要らない」
ラズはピシャリと言い捨てる。
「……同情するなら添い寝して。性的な意味で」
「……」
ラズはこういう性格らしい。晶は絶句して、ラズの無表情な横顔を見つめた。
「……晶タンの熱い視線でワタシの性的な場所が性的に汗……」
「さあ! ここがエイテネ学園の中央校舎だ!」
妙な事を口走りそうになったラズの顔を脇に抱え、ヴァネイは前方の校舎を指差した。
木造三階建て。赤いスレート瓦とクリーム色に塗られた外壁、大きさや形も他の校舎と何ら違いがない。
ただ一つだけ決定的に違う点は、校舎中央に取り付けられたら時計台だ。
アナログな時計は地球と同じ十二時表記で短針長針も同じである。数字は見慣れぬ表記だが、何故か晶の頭の中では時間表記として認識できる。
晶は文字の意味が理解できる事を不思議に思いつつ、ヴァネイの後について、校舎の玄関をくぐった。
日本でも良くある形の扉付き下駄箱が並ぶ昇降口。下校する年上の女子生徒たちが、晶たちの横を次々と通り過ぎていく。
彼女たちの目は好奇心にあふれ、晶に目礼と微笑を投げ掛けてくる。
この辺りは落ち着いた生徒が多く、無闇に騒ぐ生徒はいない。それでも晶の美貌は、年上の女子生徒を魅惑して止まず、羨望の眼差しが、そこかしこから飛んでくる。
晶は異世界というより、近所の女子校を訪れたような気分になりつつ、心許ないスカートの裾を気にかけながら、来客スリッパを履く。
「中央校舎は主にランクⅥとランクⅤの生徒が学ぶ教室と学園長室や生徒会室や各委員会室がある」
校舎は日本の学校と同じ土足禁止で、いよいよ異世界である雰囲気が薄らぐ。
板張りの廊下は鈍い光沢を放つほど磨き上げられ、塵一つ落ちてない。
中央校舎はコの字型で、内側には×状の別校舎が立っている。字で表すならば「区」の字型だ。
×の中央はガラスのドーム状だ。外壁も植物園のようなガラス張りになっている。
「あのドームの下が礼拝堂で、宮殿にいる女神様とお話が出来る」
案内をするヴァネイを先頭に、晶たちは渡り廊下を進み、ドーム施設のある別校舎へ入った。
別校舎は特殊な礼拝堂となっており、ドーム手前側は礼拝者用椅子が並びに、ドーム奥の通路は様々な祭具が並べられている。足元は大理石調の石床で、銅の波紋が表面に広がり、その光沢に顔が写り込むほどだ。
何故か後ろから付いて来るラズの鼻息が荒いが、荘厳な雰囲気に飲まれて晶は気付かない。
ドーム中央には柔和な笑顔の女神像が、訪れた晶たちを台座の上から俯き加減で出迎えた。
『きましたね? ようこそ中二階のエイテネ学園へ』
ドームの天井から降る声に驚き、晶はヴァネイの隣に身を寄せた。
「女神アメンテス様だ。女神像は君の世界で言う所の通信端末だと思えばいい」
晶はヴァネイの説明で納得してみせ、彼女の影から離れた。
ヴァネイは晶が冷静であることを確認してから、一歩前に出て女神像へ向かって跪く。
「エイテネ学園ゲート委員、ヴァネイ・ヴァイシェーシカです。こちらがご指示の元、本日召喚致しました八椚晶でございます」
「あ、あの……は、初めまして」
ヴァネイに紹介され、晶は胸に手を寄せながらも女神像へ向かって挨拶をした。
『良くいらっしゃいました、八椚晶さん。私はこの世界を創り管理する【受容者にして配分者】アメンテス。我々はあなたを歓迎し……む? 晶さん?』
「は、はい」
女神の声色がおかしい。晶は女神に質問したい事が、山ほどあったのだが、場の雰囲気に飲まれて口を噤む。
『晶さん。ちょっとスカートの裾を捲って見せて頂けませんか?』
いきなりバレた!?
晶はとっさに内股になると、無意識にスカートの前を両手で隠した。
「あ、あの……その違うんです」
『いいから早く。それでは下からも覗けなくなります!』
え? 覗く?
晶は足元を見た。
顔が写り込むほどの石床。
ガラス張りのドーム。
陽光を反射し、スカートの中を照らし出し……。
「きゃあっ!」
晶はペタンと座り込み、見事な恥じらう乙女の姿を見せた。
(今、『きゃあっ!』って言ったぞ、この子)
ヴァネイは晶の女の子らしい仕草に恐れ戦いた。
「大丈夫かい?」
戸惑いつつも、ヴァネイは晶に歩み寄る。
ふと晶は近づいたヴァネイの足元を見てしまう。石床に写り込む際どい布切れと眩しく長い足……。
「ご、ごめんなさい」
晶は真っ赤な顔を両手で覆い隠した。
「やれやれ……。石床とガラス張りのドームにこんな秘密があったとは……」
全く悩ましい……と、ヴァネイは額に手を当てた。
「……ワタシ知ってた。晶タンのお尻ラブリー」
背後でラズの鼻息が荒かった理由は、覗き見だったらしい。
『さあ、晶さん! 立って! そしてスカートを捲って見せなさい。女神アメンテスの名の元に、あなたのような可愛い女の子がボクサーパンツだなんて!』
「……女神様がご所望。晶タン。座ったままでもいいから……ぅん……、捲って。ペタンコ座りでまくり上げたスカート。……とても冴えたいいアイデア」
前門の変態。後門の変態……。




