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伝染都市アジュール  作者: 六波羅朱雀
覚醒の日
27/35

26.遭遇


 すぐに走って東へ向かう。ここ数日間、走ったり怪我したりですっかり足が疲れている。それでも歩くわけにはいかない。走り続けなければ。

 

「アリシア! 気を付けろ」

 

「分かっている」


 大きな声で返事が返って来るが、彼女は走ることをやめない。

 

「あいつ、ぜってぇーわかってねぇだろ」


 呆れ顔のレオンに、今回ばかりは同意だ。数十分もすれば建物に辿り着く。役所と書かれた建物の隣のビルだった。ガラス張りのビルでないのはよかったが、屋上へ向かうには階段を上る必要があった。エレベーターとやらを使えればよかったのだが、文明の利器はどうやら死んだらしい。

 

 「ええー、これ上るのかよぉ」と最初は不満げだったレオンだが、「すまない。少しだけ、頑張ってくれ」と申し訳なさそうな表情でアリシアに言われると「任せろ!」とやる気に満ち溢れだす。これだから男は、まったく。

 

「なんだよ、文句あるかよ」

 

「いいや」


 面倒だから、何も言わないでおこう。これ以上体力を使いたくない。

 

「ま、安心しろ。お前に言われてもやる気は出ねえからよ」


 は? いまこいつ喧嘩売った?


「なんか言ったかな? ん?」


 売られてしまった喧嘩は買う主義なのだ。

 

「いいえなにもぉ」


 笑顔で聞けばはぐらかされてしまった。そんな調子で階段を上り続け、ようやく屋上へ辿り着く。長い道のりであった。

 

「サクラ!」


 アリシアがそう叫ぶが。


「いない、のか」


 サクラはいなかった。けれども確かに煙はそこから上がっていた。ならば、肝心の彼女は何処に?

 

「おい」


 レオンが緊張した声でそう言った。レオンの言いたいことならば分かる。そこには、サクラはいなかったけれども。


 うらぁぁぁぁぁあああおおおおおぉあああああああああああああ!


 代わりに、

「バケモノだ」

 奴はいた。

 

 アレックスでなかったのは幸いだった。

 

 「遺体はない。サクラは無事だ」と銃を構え。

 「ああ。こいつを倒してサクラを探す」とアリシアが剣を構え。

 「よっしゃ! やってやる」とレオンが銃を構える。


 が。

 

「おいレオン。お前は怪我をしているのだから後方支援だ」

 

「え。まじか」


 そして三人同時に走り出す。レオンは後方、私たちは前方に。バケモノは私たちに気が付いて、ぎょろりとそのこぼれそうな眼玉を向けてくる。

 

「はぁぁぁあああっ!」


 アリシアが見事な剣裁きを披露したが。


 ぐああああああああああああああああぁっぁぁっぁああああああ!


 バケモノはそれをものともせずに血を流しながら歯向かい続ける。

 

「うっ」

 

「アリシア!」


 アリシアは足をもつれさせて後ろに転ぶ。


 ぐあぁぁあああ、と間抜けな声を上げたバケモノがアリシアに近づく。何とかしてアリシアが逃げる時間を稼がなくちゃ。

 

「はあっ!」


 撃鉄に指をかけ、銃をぶっ放し、アリシアが体制を整える時間を作る。

 

「恩に着る」

 

「どういたしまして、だ」


 アリシアは立ち上がり、再びバケモノに立ち向かう。腕を負傷しているレオンが床を撃ち、バケモノが進む道を誘導する。良い案だ。

 

「はあああああああああっ」


 キィン、と甲高い音を立ててアリシアの剣とバケモノの皮膚がぶつかり合う。その隙にも私とレオンは銃弾を放ち続ける。


 このままでは倒される。そう思ったのか、バケモノはターゲットをアリシアから私に変える。

 

「くっ」


 銃を使う私は、接近されれば戦う術を失う。たちまち腕で薙ぎ払われ、攻撃を受けた。見れば左手の甲から血を流していて、腕にはあざができていた。

 

「あ」


 目の前に迫るバケモノを見て、思わず間抜けな声が漏れる。とっさに右手で銃を探すが、今しがた薙ぎ払われた衝撃で銃は手から離れていた。


 ──死ぬ。


 ぐあああああああああああああああああああああああああああああっ!


 咆哮が吹かす風が髪をなびかせる。ぎゅっと目を閉じて、死を覚悟した。


 けれど、いつまでたってもその時は来ない。恐る恐る瞼を上げれば。

 

「大丈夫か?」


 片手を私へ差し出して、片手でバケモノの背中に剣を貫通させた女がいた。

 

「アリ、シア」


 その手を掴み、ありがとうと告げる。後ろでレオンが拍手をしていた。

 

「かっこよすぎだろ、まったくもー。俺今回出番なかったことね?」


 数秒の時が経つと、バケモノは重力に負けて倒れ伏した。斬られた場所から、ドクドクと血が流れている。

 

「さあ、行こうか」


 サクラを探さなくては。そう言ったアリシアはバケモノの背中から剣を抜く。真っ赤な血を払い、再び鞘にしまう。

 

「でも、一体どこに」

 

「煙が上がってから我々がここへ着くのにはそう時間はかかっていない。まだ近くにいるはずだ」


 うーん。この建物の中だろうか?


 その時、ぎぃ、と扉が音を立てて開いた。


 右手で銃の感触を確かめる。まさか、アレックスが来たのか?

 

「あれ」


 けれども、やって来たのはバケモノではなく。

 

「アリシア?」


 一風変わった天使だった。


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