表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/87

調合2

「私、日本人なんです。でも、どうしてここにいるのか、思い出せないんです。ここ、何処ですか?」

私は泣きそうになるのを堪えて、尋ねた。パスポートは、鞄の中に入っていなかった。


「ここは、ザラって街よ。アルランメディエ国の王都ね。」


聞いたことがない国と街だ。


「あの、日本大使館に行きたいんですけど。その前に、スマホのバッテリーが切れてて、充電できないでしょうか?」

どうにか、この状況を脱する方法がないか、半ばパニックになった私は、助けてもらったお礼も言わずに、ずうずうしいお願いをした。


「タイシカンって何? スマホのバッテリー? ジュウデン?」

シャルロッテは、青い瞳を瞬かせ、首を傾げてみせた。


スマホって、和製英語だっけ?

通じてない言葉をどう表現したらいいのか分からず、バッテリー切れのスマホを見せてみた。


「何これ?」

シャルロッテは、好奇心に満ちた青い瞳で、スマホを見つめている。


そんな馬鹿な。スマホが分からないなんてこと、あるんだろうか?

私はまさかの事態に、固まってしまった。


その時、外からドアを叩く音が聞こえてきた。

「あ、誰か来たみたい。」

シャルロッテは、訪問者を出迎えに行った。


「ロティ。あの子、どうなった?」

若い男の声が聞こえてきた。シャルロッテは、ロティと呼ばれているようだ。


「それが……。気が付いて、怪我も無いみたいなんだけど、記憶が曖昧なの。名前はエリーチェちゃんね。二ホンって知ってる?」

シャルロッテは、訪ねてきた男を部屋に招き入れた。


「二ホン? 聞いたことないな。」

若い男が答えた。


「エリーチェちゃん。彼はグラン。冒険者で、いつも材料採取なんかを手伝ってもらってるの。」

「やぁ、こんにちは。朝、君がこの工房の前に倒れていたのを見つけて、ロティに見てくれるようお願いしてたんだ。」


冒険者?

会話の中にさらっと出てきた『冒険者』という単語と、紹介されたグランの服装で、私は、嫌な予感でいっぱいになった。グランは、明るい褐色の髪の背の高い男で、RPGの登場人物のような、いかにも冒険者な格好をしていたのだ。


「あの、助けていただいて、ありがとうございます。」

自分でも、声が上擦っているのが分かる。


工房の前に倒れていたって言ってたっけ。

工房っていうことは、職人さん? 冒険者と職人さん?、日本もスマホも知られてないって、どういうこと?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ