アルバズ家にて、
手を引かれている俺は苦笑いしながらヴィータに声をかけた。
「すまない。母様が勝手にあんなことを申し立てて」
先ほどまで少し早歩きをしていたヴィータは俺の声かけを聞き一度足ををとめたので俺も合わせ足を止めた。
「気にするな友人を助けれるなら本望だ。」
くすっと綺麗に笑うヴィータに俺は少し遠い目になった。こいつは自分の顔の使い方をよく知っているからたちが悪いと。
アルバス家ご当主とよくにた少しつり目のめに淡い青色の目。下の妹君より少しだけ茶色を多く含んでいる金色の髪。アルバス夫人の美しい、目以外のパーツをきっちりと受け継いでいる顔はこの国、ルチル国の誰よりも美しい、と評判なのだ。そして何より、家柄も申し分ない。つまり女はいくらでも寄ってくるのだ。そんな女たちに向けるべき笑顔というものや、自分の顔を最大限に使い話を進めていく、そんなことさえこいつはやってのける。
まぁ俺も昔はこいつの笑顔一つのドキッとしたりしていたが、なんだ。2年もしないうちに恋心的なものも冷めた。その原因があいつの現婚約者の前の元婚約者が原因だったという話があるんだがまぁこの際は言わなくてもいいと考える。
話は戻って、たわいもない話をしながら歩いて行くとヴィータの屋敷に来ていた。ヴィータは俺の手を引いたままゆっくりと自室に向かっていた。
「今日は実はラズリ思い人が来ているんだ。」
嬉しそうに話すヴィータにお前の頭大丈夫?と聞きかけたのは仕方ないと思う。
ラズリ嬢というのはヴィータの現婚約者様である令嬢なのだ。そのラズリ嬢の思い人というのは将来の嫁の浮気相手になるかもしれない相手じゃないか!と怒りたかったのだが、ヴィータは俺の手を引きながら楽しそうに笑った。
「ラズリとの婚約なんだけどな、もともと破棄すること前提に結ばれた婚約だったんだ。」
…お、おう
「ラズリとラズリの思い人、まどろっこしいからいうがアロイス・カタストロフは長年おもいあっていた。」
…お、おう…………ん?
「ちょっと待て」
「ん?なんだ?」
さらっと話を進めていこうとしてるが俺は混乱している頭で訪ねた。
「アロイスってお前の従兄弟だよな?」
俺が耳を疑うような名前をもう一度聞き返せばヴィータはなんでもないように肯定した。
「ああ、そのとうりだが?続けていいか?」
「あ、そう…話し続けて」
俺は混乱した頭のままヴィータに言った。ヴィータはそうか?といってまた話を始めた。
「アロイスに婚約者がいること知ってるだろ?その令嬢がだな、頭のネジが何本か抜けているらしく」
「もっと包んだ言い方して」
どんな令嬢でも最低限の扱いを、これモットー。
「……少々変わった考え方で行動するらしく」
んよろしい。
「…それで我が家やカタストロフ家に汚名がつきかけたことが多々あってな、ラズリとの婚約はアロイスの婚約破棄までの俺とラズリの虫除けって意味で結ばれたんだ。双方の親の納得がある。利益のある偽装婚約だ」
……なかなか濃い偽装婚約の理由でして…
「なるほどな、つまり俺がはいはい幸せにとか言ってたときお前一人だったわけか」
俺が少し哀れみを含んだ目でヴィータを見るとヴィータは苦笑いしながらそういうことだ。と笑った。
「だから気に止むことなく俺の家にきてくれていいんだぞ?」
ああ、最悪だこれまでそれを理由にして避けてきたってのに避けれねぇじゃねぇか。
「…ああ、なら母さまに相談してみよう」
この婚約破棄がさらに俺をお前の家にやすやすとあげれなくする理由だとお前は気づかないのだろうか。
俺はそんなことを考えながらヴィータに連れられ、ヴィータの自室に連れられていった




