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3/3

「最初の一歩」

アスカとレレノは、街を離れて歩いていた。


後ろを振り返れば、かつて街があった場所が見える。けれど、そこにレレノの帰る場所はもうなかった。


レレノは何度も振り返りそうになった。そのたびに、両親の最期が脳裏によみがえる。


「……アスカ」


「ん?」


「あなたは、怖くないの?」


アスカは歩みを止めた。


「何が?」


「あの六人よ。あなたは二人を倒したけど、まだ四人も残ってる。それに、日本全土を滅ぼすつもりなんでしょ?」


レレノは拳を握った。


「私には、あの人たちがどれくらい強いのかもわからない。でも……普通じゃないことだけはわかる」


「そうだな」


アスカは否定しなかった。


「だったら、どうして戦えるの?」


その問いに、アスカは少しだけ考えた。


「戦えるから戦う。それだけだよ」


「……それだけ?」


「目の前で誰かが襲われてたら助ける。悪いことをしてる奴がいたら止める。俺はそうしたいだけだ」


レレノは黙り込んだ。


簡単な言葉だった。けれど、それを実際に行動に移せる人間がどれほどいるのだろう。


少なくとも、レレノにはできなかった。


両親が殺されたとき、彼女は何もできなかった。敵に立ち向かうことも、両親を守ることもできなかった。


だからこそ、アスカの言葉が胸に残った。


「……私も、強くなれるかな」


思わず口にしていた。


アスカはレレノを見る。


「さあな」


「そこはなれるって言ってよ!」


「いや、俺に聞かれてもわからないだろ」


あまりにも正直な返事に、レレノは思わず言葉を詰まらせた。


そして、ほんの少しだけ笑った。


両親を失ってから、初めてだった。


もちろん、悲しみが消えたわけではない。笑ったからといって、失ったものが戻ってくるわけでもない。


それでも、今だけは少しだけ息がしやすかった。


そのときだった。


アスカが突然、足を止めた。


「……誰かいる」


「え?」


レレノも周囲を見回す。


けれど、見える範囲には誰もいない。


「どこに?」


「前だ」


アスカは視線を向けたまま答えた。


レレノの表情がこわばる。


「まさか、あいつら……?」


「まだわからない」


アスカはゆっくりと前へ進んだ。


レレノも、置いていかれないように後を追う。


やがて、二人の前に一人の人物が姿を現した。


レレノは息をのんだ。


アスカは相手を見据える。


街を出て、まだそれほど時間は経っていない。


それなのに、二人の冒険は早くも新たな出会いを迎えようとしていた。


この出会いが何をもたらすのか。


それは、まだ誰にもわからなかった。

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