「最初の一歩」
アスカとレレノは、街を離れて歩いていた。
後ろを振り返れば、かつて街があった場所が見える。けれど、そこにレレノの帰る場所はもうなかった。
レレノは何度も振り返りそうになった。そのたびに、両親の最期が脳裏によみがえる。
「……アスカ」
「ん?」
「あなたは、怖くないの?」
アスカは歩みを止めた。
「何が?」
「あの六人よ。あなたは二人を倒したけど、まだ四人も残ってる。それに、日本全土を滅ぼすつもりなんでしょ?」
レレノは拳を握った。
「私には、あの人たちがどれくらい強いのかもわからない。でも……普通じゃないことだけはわかる」
「そうだな」
アスカは否定しなかった。
「だったら、どうして戦えるの?」
その問いに、アスカは少しだけ考えた。
「戦えるから戦う。それだけだよ」
「……それだけ?」
「目の前で誰かが襲われてたら助ける。悪いことをしてる奴がいたら止める。俺はそうしたいだけだ」
レレノは黙り込んだ。
簡単な言葉だった。けれど、それを実際に行動に移せる人間がどれほどいるのだろう。
少なくとも、レレノにはできなかった。
両親が殺されたとき、彼女は何もできなかった。敵に立ち向かうことも、両親を守ることもできなかった。
だからこそ、アスカの言葉が胸に残った。
「……私も、強くなれるかな」
思わず口にしていた。
アスカはレレノを見る。
「さあな」
「そこはなれるって言ってよ!」
「いや、俺に聞かれてもわからないだろ」
あまりにも正直な返事に、レレノは思わず言葉を詰まらせた。
そして、ほんの少しだけ笑った。
両親を失ってから、初めてだった。
もちろん、悲しみが消えたわけではない。笑ったからといって、失ったものが戻ってくるわけでもない。
それでも、今だけは少しだけ息がしやすかった。
そのときだった。
アスカが突然、足を止めた。
「……誰かいる」
「え?」
レレノも周囲を見回す。
けれど、見える範囲には誰もいない。
「どこに?」
「前だ」
アスカは視線を向けたまま答えた。
レレノの表情がこわばる。
「まさか、あいつら……?」
「まだわからない」
アスカはゆっくりと前へ進んだ。
レレノも、置いていかれないように後を追う。
やがて、二人の前に一人の人物が姿を現した。
レレノは息をのんだ。
アスカは相手を見据える。
街を出て、まだそれほど時間は経っていない。
それなのに、二人の冒険は早くも新たな出会いを迎えようとしていた。
この出会いが何をもたらすのか。
それは、まだ誰にもわからなかった。
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