「デスティニーハーデス」
少女レレノは、目の前で両親を殺された。
両親を殺したのは六人の敵だった。彼らはこの街を滅ぼし、街にいた人々を襲っていた。
「お父さん……お母さん……」
レレノの声は震えていた。何が起きたのか理解したくなかった。けれど、目の前の現実は変わらない。
六人の敵は、今度は日本全土を滅ぼすつもりらしい。そんな話が聞こえてきた。
この街だけでは終わらない。次は日本全土。
レレノは絶望した。
もうだめだ。誰も助けてくれない。自分もここで殺される。
そう思った瞬間だった。
敵の攻撃がレレノに迫る。
しかし、その攻撃は彼女に届かなかった。
突如として現れた巨大な影が、攻撃を防いだのだ。
「なんだ、こいつは……?」
敵の一人が驚きの声を上げる。
そこに立っていたのは、四本の足を持つ化け物だった。ケンタウロスのような体つきで、全身は黒い鱗が鎧のように覆っている。顔は人間のものではなく、まるで骨そのものだった。
化け物は敵を見据えた。
次の瞬間、敵が放った攻撃を反射する。
攻撃は放った本人たちへと返り、六人のうち二人が倒れた。
「くそっ、何者だ!」
残る四人が身構える。
化け物は答えなかった。代わりにレレノへと視線を向けると、彼女を背中に乗せた。
そして、地面を蹴った。
凄まじい速度で走り出し、敵を置き去りにしていく。レレノには、周囲の景色が流れていくことしかわからなかった。
「きゃっ……!」
必死にしがみつくレレノを乗せたまま、化け物はどこかへ向かって走り続けた。
やがて、敵の姿が見えなくなった頃。
化け物の体が変化し始めた。
黒い鱗に覆われた巨体が縮み、四本の足が人間の手足へと変わっていく。骨の顔も消え、そこには一人の子供の姿が現れた。
いや、違う。
人間の姿になったのではない。
元の姿に戻ったのだ。
レレノは目の前の少年を見つめた。自分を助けてくれた存在が、普通の子供の姿をしている。その事実が、かえって彼女を混乱させた。
恐怖を押し殺しながら、レレノは尋ねた。
「あなたは人間、じゃないわよね……?」
少年は彼女を見て、あっさりと答えた。
「俺は人間だよ。化け物になれる」
その言葉に、レレノは息をのんだ。
この少年はいったい何者なのか。
そして、どうして自分を助けてくれたのか。
レレノには、まだ何もわからなかった。
ただ一つ確かなことがある。
彼女を絶望から救い出した化け物――デスティニーハーデス。
その正体は、プロスト・アスカという名の少年だった。
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