第二話「Argentum」
「それで」
Argentumが、あくまで銃を僕の眉間に押し付けたまま言う
「君の啓示が記された石版は」
「この部屋の何処にあるのかな?」
口元だけでも笑うようになってくれたのは、嬉しい前進なのだろうか?
そもそも、僕が啓示を受けた事について、何故彼は知って居るのか
或いは不安定な憶測を元に、僕の言葉から情報を引き出そうとして居るのか?
答え合わせの為、僕は「僕の石版?」と意外そうな表情を装って答えた
その結果、良かった事としては、Argentumは銃の狙いを僕の頭から外してくれた
悪かった事としては───
───彼は、僕の右の掌に狙いを定め、今度は迷わずに銃を撃ってきた
やった事は無かったので初めての観測になるが、人間の手と云うのは、強い力で撃ち抜くと鮮血を迸らせるらしい
一瞬、視界が総て埋まる程にまで血が炸裂すると、火薬による爆発のように、直ぐに血や指、様々な手の破片が床にびちゃびちゃと落下した
失血と痛みで、僕はその場に膝を突いた
過去に、暴漢から脇腹を剣で切られた事があったが、手の方が痛みが酷いようだ
「きっと」「骨や筋肉の多い場所ほど痛いのであるな」と、僕は思った
そして、もう一つ
「つまり啓示は、人によって違う内容が下されて居るのだな」とも
彼は何処までを知って居るのか
聞き出したかったが、これ以上刺激するのは得策で無いように思われた
「言わないのなら、探すよ」
一瞬だけ悲しげに嘆息すると、Argentumは引き続き僕に銃を向けたまま、部屋中をひっくり返そうとし始める
たまったものでは無い
僕は「やめておけ」と言った
「霊的な施錠をして居る」
「僕を殺すなら、永遠に手に入らなくなるだろうな」
言った後で、追加の暴力を受ける可能性に思い当たり、身を固くした
Argentumが僕の足首に狙いを定める
次の瞬間
爆発するような音と光の中で、肉と血が僕達の視界に飛び散った
「さすがの君も」
「………これなら戦闘不能だよな?」
安堵したような声色で、Argentumが銃を降ろす
血霧が晴れるよりも早く
僕は立ち上がると、指が数本取れた手で彼の頬を殴り抜けて
───そして余りの激痛に一瞬だけ気絶し、その場に頭から倒れ込んだ
意識が戻る
何処が痛いのかも解らない程、喩えようも無く痛い
硬い音を立て、何かが床に落ちる音がする
視れば、Argentumが殴られた顔を両手で押さえ、銃を取り落として居た
彼の指の隙間から、血が溢れてぽたぽたと床を濡らす
僕の血なのかも知れないし、殴られた結果、鼻孔から出血が有るのかも知れなかった
落ちた銃を拾おうと
僕は這って、銃に近寄っていく
Argentumが僕の肩を掴み
仰向けに表返すと、のし掛かって馬乗りになろうとしてくる
僕は身を捩って躰勢を入替え、反対に彼の上に馬乗りになり───拳を握ろうとして、自分の割れた手を視て戸惑った
「殴ってみろよ」
Argentumが、余裕たっぷりに言う
「今度こそ痛みで、完全に気を喪うかもな」
頭に来たので、僕は彼の眉間を肘で殴った




