神への拝謁
「あれが、ハーベルさんですか、なるほど、メルキドが熱を上げていたのも理解できます」
物陰から様子を伺っていた深緑のローブのフードを目深にかぶった男が呟いた。
「シグマ、見ましたか?」
「はい、大したことありませんね」
シグマの左手の魔法陣が、緑色に強く輝いていた。
ハーベルは、一度家へもどってマクリアさんの様子を見に行くことにした。
「あ、ハーベルどうだった?」
「ネルさん、大体のことは分かったよ。マクリアさんもひどい目にあったようだから、しばらくはゆっくりさせてあげよう」
ネルさんに事の経緯を説明した。
「何で、そんなことに姉さんが巻き込まれなきゃいけないの···」
俺は、ネルさんの頭を優しく撫でながら慰めた。
「リーフィア、神様にはいつ会えるんだ?」
「すぐにでも会えるわよ」
「じゃあ、急いでくれ!」
「分かった、準備をするから少し時間をちょうだい」
リーフィアは、しばらくして迎えに来ると、光のポータルを開いた。
「じゃあ、行くわよ」
「ああ」
ポータルを通り抜けると、そこは静かな田舎の村の風景だった。
「ここが神様のいるところなのか?」
「この家よ」
そこには、普通の農民が住むような質素な家が建っていた。
中へ入ると、ベッドの上に髪の長いきれいな女性が眠っていた。
人間の年齢でいうと70歳くらいだろうか?それほど、
弱っているようには見えない。
「神様、リーフィアです」
「リーフィア、ご苦労様」
「あなたが、ハーベルさんですか?遠いところを来ていただき、申し訳ありません」
「いえ、あなたが神様なのですか?」
「はい、神様と言っても見ての通りただの老人です。
少し他の方より、いろいろなことができるというだけです」
「なんか、思っていたのとだいぶ違うので、拍子抜けです」
「あら、ずいぶんはっきりとおっしゃるのね」
「神様、申し訳ありません。ハーベル···」
「いえ、いいのですよ。かえって気兼ねなく話ができそうだわ」
「神様になるとどんな特典があるんですか?」
「特典何てありません、ただ···」
「ただ···?」
「人々の苦しみや悩みに耳を傾け助けの手を差し伸べることができるようになるのです」
「あとは、この「天界の指輪」くらいでしょうか?」
俺は、解析スキルで確認して見た。
解析によると、天界への交通手形のようなもので、自由に行き来ができるようになる、さらに、「未来予知」を使うことができるようになるらしい。
悪党が欲しがりそうなお宝だ。
「そうなんですか、やはり俺には興味はありません」
「神様なのに、なぜ悪魔を直接倒せないのですか?」
「神だからといって何でもできるわけではありません。魔界への干渉はできませんし、私には悪魔と戦う体力も魔力ももうありませんから···」
「何で俺を選んだんですか?」
「あなたは、正義感も強く、何よりも優しい。力も魔力も申し分ありません」
「それだけなら、もっと良い候補がいくらでもいるだろ?」
「確かに、1つはソーサリーエレメントを手にする資格があるのが必須条件、もう1つは、魔物や他種族にも分け隔てなく接することのできる寛容さが決め手です」
「これは、簡単なようでいて、非常に難しいことなのです。これをあなたは無意識に心から疑いもなく行うことができる。これは、とても素晴らしいことなのです」
「なるほど、理由は解った」
「それなら、師匠の方が俺より神様になる資格があるのではないかな」
次回 【残酷な真実】




