残酷な真実
「リーフィアさんは、ソーサリーエレメントには選ばれていませんし、何よりもう寿命がそう長くありません」
「何?師匠が死ぬって言うのか?」
「神様なら、病気でも何でも治せばいいだろ!」
「いえ、私には無理なのです。病気ではないのですから」
「じゃあなぜ?」
「もうすぐ、自ら命を絶つのです。私にはそれを止めることはできません。もしできるとしたら、ハーベルあなただけでしょう。ただ、あなたとリーフィアさんはまだ出会ってさえいません。今から行って間に合うかどうかも私には分かりません」
「師匠は、今どこにいるんだ?すぐにそこまで送ってくれ!それくらいはできるだろ?」
「ハーベル、神様に失礼です」
「リーフィア、いいのですよ。分かりました、送りましょう。ただ、私もあなたを諦めたわけではありません。それだけは覚えておいてください」
「早く頼むよ!」
「神様、いいのですか?」
「私も先が長くないからといって、今日明日にすぐ死ぬわけではありませんから···」
「リーフィア、送ってあげなさい」
「分かりました。ハーベル、いい?」
「ああ、早く!」
リーフィアは、再び光のポータルを開いた。通り抜けると大きな屋敷の前に出た。
「ここよ、ハーベル頑張って···」
「送ってくれてありがとう」
でも、いきなり見ず知らずの俺が訪ねても不審に思われるだろうな。あまり気は進まないが、今は時間がない。師匠には悪いが少し生活を覗かせてもらおう。
大きな屋敷には、たくさんの使用人や家族もいるのになぜか静まり返っていて暗い空気が漂っていた。
屋敷の中を覗くと、師匠は屋敷の隅の方の部屋で暮らしているようで、俺が知っている師匠とは似ても似つかないほど暗い雰囲気を醸し出していた。
「あれが師匠?とても幸せには見えない」
「リーフィア、いい加減部屋の外へ出ていらっしゃい!」
「お母様···」
「お父様といい、あの子といい、まったくいい加減にしていただきたいものだわ」
あまり家族とはうまく行っていないようだ。
「リーフィア姉様、外でお散歩でもどうですか?」
「私はいいわ···」
「そう言わずに行きますよ!」
男の子が、師匠の手を引っ張って連れ出そうとしていた。師匠は、嫌々ながら外へ出てきて庭を散歩し始めた。
「本当に、あれがあの師匠なのか?」
つまらなさそうに歩く師匠の横を、はしゃぎながら、
その男の子は走り回っている。
「お姉様、もっと遠くへ行きましょう」
そう言って、手を引っ張り門の外まで連れ出した。
俺は、姿を隠したまま後を着いていくと、その男の子が急に走り出して馬車の前に飛び出してしまった。
「危ない!」
師匠は、大きな声で叫んだが足は出なかった。
俺は、素早くその男の子を助け出すと、汚れを払ってやった。
「大丈夫か?」
「危ないじゃないか、バカヤロー!」
そう言って、馬車は去ってしまった。
「ああ、申し訳ありません。私の弟がご迷惑をおかけしました」
「とんでもない、大したことありません。怪我がなくてよかった」
「本当にありがとうございます。私だけなら大変なことになっていました」
「よろしければ、お名前を」
「名乗るほどのものではありませんが、ハーベルと申します。あなた様のお名前は?」
「リーフィアと申します」
「リーフィアさんいい響きですね」
「そんなこと言われたのは始めてです。変わったお方ですね。ああ、失礼しました」
「お姉様、顔が赤いですよ。具合いでも悪いのですか?」
「いや、やめてください」
俺が、クスクス笑っていると、
「ハーベルさん、ひどいですわ」
「ああ、すいません。つい、二人のやり取りを聞いていると楽しくなってきて」
「楽しい?本当に変わった方ですね」
「よろしければ、お礼に私たちの家へお招きするわ、
いかがでしょうか?」
「ありがたくお招きに預かります」
これは、思いがけないチャンスだ。
弟ナイスアシストだ。
「僕の名前は?」
「ザックと申します」
「ザック、よろしくな」
俺は、ザックの手を引きながら師匠の家へ向かった。
次回 【憩いのひととき】




