無茶苦茶な団長さん
遠くでは、信じられないようなバトルが繰り広げられていた。
「うおおおおっ!」
ミサイルの雨に晒され、ガトリング砲の嵐を受け、巨大なグレネード弾を片手で受け止め。
それでも尚、チョコロボに向かって走る足は止まらない。
そんな自分たちの団長を見て、3人は呆気にとられていた。
「…何なんですかね、アレ……」
「お、お姉ちゃん……」
「何って、私たちの団長さんでしょう?」
「それはそうですけど……。…まさか、フリントさんがいるだけでここまで楽になるとは思いませんでした……」
敵の射程範囲内まで近づいたというのに、チョコゴーレムの攻撃はやって来ない。フリントが前でチョコゴーレムの気を引いているからである。
「…んっ」
矢をつがえ、狙いを定めるスミレ。
矢の先端に魔法陣が現れ、徐々に小さくなっていく……。
弓の熟練度を上げると獲得出来る、射程延長効果のあるサポートスキルである。
「…フリージングアロー・エクステンション!」
氷属性を纏った矢が放たれた。
先端の魔法陣を潜った矢は失速する事無く、遠くのチョコゴーレムの頭部へと直撃した。
「わーお。流石ねスミレちゃん。あんなに遠くの相手に直撃させられるなんて……」
「頑張って練習しましたから……。でも、あまりバーは減らせてないみたいです……」
「気にする事ないよ、スミレちゃん! 敵はレイドボスなんだよ? HPが膨大なだけで、ダメージ自体はちゃんと出てるんだから!」
「そうよ。急所に直撃させてクリティカルダメージも稼げてるんだから。ほら見て、10パーセント以上もバーが削れて……、……ん?」
何かに気づいたユリネはセリフを止め、じっと目をこらして敵のHPバーを確認した。
「どうしたんですか……?」
「んーとね…、ちょっと予想外の事態がね……」
「「予想外……?」」
「あのチョコゴーレムのHPバー、その下の色を見てみて」
「は、はい……!」
促され、サクラとスミレは慌ててチョコゴーレムの頭上に出ているHPバーを確認した。
白いバーの削れた部分から、緑色が顔を覗かせていた。
「緑、ですか……?」
「でも、それがどうしたんですか……?」
「2人とも、何か気づかない?」
「「???」」
問われるも、頭上にクエスチョンマークを浮かべる2人。
「…2人とも、自分のHPバーは何色かしら?」
「赤ですけど……?」
「……あっ」
スミレは気づいたようで、小さく声を上げた。
「そう、普通のHPバーは"赤"。その下は何も無い、"無色"のはずなの」
「でも、あの敵のバーは白……、あぁっ!」
「気づいた?」
「は、はい……!」
「つまり、今回のレイドボスは……!」
「HPバーが複数ある、って事ね」
「「!!!」」
それは、あまりにも衝撃的な出来事だった。
集団戦を想定して創られたレイドボス。そのHPが普通であるはずが無いのは、もちろん全員が知っていた。
しかし、サクラとスミレはバーが複数ある状態を今まで見た事が無かった。
故に思いつかなかった。考えが至らなかったのである。
「ど、どうするんですか?!」
「別に、やる事は変わらないでしょう?」
「え?」
「敵のHPを削り切る。それだけよ」
「…で、でも、MP切れが先かもしれないです……。MPポーションも限りがありますし……」
「そこは大丈夫。私がたくさん持ってきてあるから。それに、サクラちゃんも仲間のMPを回復させてあげられるし、問題ないでしょ。それに……」
「「?」」
「私たちがこうして話している間にも、フリント君は最前線で戦っているんだけど?」
「「!!!」」
ユリネの一言に、2人はばっと振り返った。
「うおらああああっ!」
その視線の先には、チョコゴーレム相手に毒の銃弾を至近距離で浴びせるフリントの姿があった。
『グオオオオ……ッ!』
「っ! ヤッベ……のわああああっ!」
つまづいて転んだ瞬間、チョコゴーレムがフリントを踏みつけた。
「っんの…、ヤロウ……!」
チョコゴーレムに踏みつけられても、フリントのHPバーはほとんど減っていなかった。いや、バーが動いたかすらも怪しい。
「…無茶苦茶な団長さんね、フリント君って」
「ミサイルやロケットバズーカも食らっているのに、その上踏まれても平気だなんて……」
「凄すぎです、フリントさん……」
「ホント、何であれだけ食らって生きてるのかしらねあの子……。でも、今がチャンスよ。フリント君が持ちこたえている内に、私たちの全力をあの敵にぶつけてやりましょ!」
「「はいっ!」」




