いざ、初のレイドボス戦へ
「……おぉ!」
初の転移が完了し、目を開ける。
そこは、街の中だった。が、どこか違和感を感じる。
「ん〜……? ……!」
近くの一軒家へと近づき観察してみると、違和感の招待はすぐに分かった。
―――フィールド上にあるこの街の全てが、お菓子で出来ている。
生クリームを塗りたくった壁には様々な形のクッキーで彩られ、ドアは板チョコ、ドアノブと思われるものはマカロンが当てはめられている。窓ガラスは半透明だが、もしかして水アメか……?
なんとも手の込んだフィールドである。道路のマンホールまでお煎餅で表現されてるし……。
そして、肝心のレイドボスはというと……。
「もしかして、アレか……?」
遠くからでも見える、超巨大なチョコレートのホールケーキ。明るい色で統一された街中でのどす黒いチョコケーキは、お菓子の街中であってもなお違和感抜群である。
「とりあえず、他の皆は……」
「ここにいますよー!」
路地裏から、サクラちゃんとスミレちゃんが手を振りながら走ってやってきた。ユリネさんの姿は無いところをみると、別の座標に飛ばされたのだろう。
専用ステージに飛ばすくらいなら、最初から一箇所にまとめて転送して欲しい……。
「フリントさん、ユリネさんは……?」
「分からない。とりあえず手分けして探して……」
「おまたせ〜」
「っと、噂をすれば……」
軽やかな足取りでユリネさんが駆けてきた。その表情は、とっても晴れやかである。
「ユリネさん、いい事でもありました?」
「もちろん♪ だって見てよ、辺り一面お菓子の家だらけなのよ? まさか子供の頃に夢見ていたお菓子で出来た街並みを疑似体験出来る日が来るなんて思わなかったもの、嫌でもテンション上がっちゃうわ♪」
「そ、そうですか……」
身振り手振りで表現するとは、なんとも子供っぽい……。
ユリネさんの新たな一面を見た。この風景、目にしっかりと焼き付けて脳内アルバムに記録しておこう。
「それで、あのビッグなチョコケーキがボスな訳ね?」
「あ、はい。そうです」
切り替えはっや。
「近づくと反応して立ち上がるんだっけ?」
「はい。索敵範囲内になると動き出し、こちらが射程圏内に入ると先制でミサイル攻撃が飛んできます」
「そして、ミサイルの雨を掻い潜ったら今度はガトリング砲で迎撃されます。背中にはロケットランチャーみたいなものも確認出来ました。さっきは使われませんでしたけど……」
ちっ、前情報にはロケットランチャーなんて無かっただろうが……。
それにしても、飛び道具がえげつない。絶対近づけさせる気無いだろコレ……。
しかし、攻略法がない訳じゃない。
距離さえ詰めてしまえば、図体がデカいだけののろまな相手だ。落ち着いていれば余裕で見切れる。
いつか戦った、あのすばしっこいウサギよりも遥かに楽だ。
「それじゃ、早速おとりになって引き付けてくるから、攻撃は任せたよ」
「「分かりました!」」
「は〜い、任されました〜♪」
キャラが違い過ぎる返事が聞こえてきたが、それをオレはあえて無視。
今回のレイドボスであるチョコレートゴーレム(通称:チョコロボ)へと突撃を敢行した。
『グオオオ……!』
オレの接近を感知し、動い出すゴーレム。
ホールのチョコレートケーキから両腕が生え、底から足が伸び、一段しか無かったホールケーキが三段になり、その頂上から頭部がニョキっと顔を出した。オマケに効果音は『ガシャッ、ガチャン!』のようなロボットっぽいものである。
ロボットアニメで1本撮れそう…じゃなかった、集中しないと!
『グオオオオ……!』
変形を終えたチョコロボから、いきなり6連装のミサイル攻撃が放たれた。砂糖菓子のミサイルである。
オレは左手の大バサミでガードしつつ突撃。
回避運動はしない、全部受け切る!
「ううおおおおっ!」
6発のミサイルを全て受け切った。
走りながらHPを確認すると、ダメージ総量は僅かに12。1発あたり2ダメージしか受けていない。
勝ったな。
『ググ、グオオオ……!』
チョコロボはミサイルを全弾受け切ったオレに動揺するそぶりすら無く、両腕からのガトリング砲をダブルでぶっ放してきた。
ダメージは1しか受けていないが、塵も積もれば山となる。さすがに少々うっとおしく感じる。
『グオオオオンッ!』
「……マジかよ…!」
右手だけガトリング攻撃を止め、代わりに右肩後ろから巨大なロケットランチャーが真っ直ぐ上に伸びた。そして、その砲身の先はオレの方に向けられた。
『グオオオオッ!』
耳を貫く程のどデカい発射音を上げ、弾は発射された。
「くぉんのおおおおおおおおっ!」
オレはその人間大の巨大な弾を、右手でガシッと受け止めた。
瞬間。
「え……、のわああああっ!」
受け止めた瞬間、弾は大爆発を起こした。
めちゃくちゃ痛いし、灼ける程に熱い!
…と、普通ならそう感じると同時に即死だろう。
だがこのユートピア、痛覚というものは再現されていない。感じられるのは匂いや衝撃までだ。
そして、オレは……。
「…ふぅ、死ぬかと思った……」
両足を踏ん張り、何とか吹き飛ばされずに耐え切る事が出来た。
ダメージ量は200ちょっと。しかし、焼夷弾と炸裂弾のハイブリット弾とは、さすがに驚いた。
爆発した瞬間に周囲に炎上効果、さらに破片が炸裂して追加ダメージまで与えてくる。実に厄介な攻撃である。撃たせない戦術が必要だ。
が、今のオレには関係ない。
万が一のためにポーションも買い揃えておいたし、耐久戦ならそれこそオレの土俵だ。
「頼むよ、皆……!」
いざとなれば切り札もある。
ある程度敵のHP削れたところで勝負に出る!
「行くぞ、デカブツ! うおおおおっ!」
雄叫びで気合いを入れながら、チョコロボに向かって再び走り出した。




