ひとりでダンジョン攻略(3)
扉を潜り、ボスの間へと突入した。
そこで、オレを待ち受けていたのは……。
「……んん?」
部屋の中央に、人の姿があった。
いや、人というのは語弊がある。
正確には、それは獣人と呼ぶべきものだった。
ウサギの獣人である。
【ラビットソルジャー・アサシンナイト】
Lv:45
「アサシン……?」
軽鎧と手甲を装備し、右手には短剣が握られている。
レベルは45、これまで戦ったどの相手よりも強い。
武器を構え、瞬時に警戒態勢に入った。
「―――!」
「……ッ!」
一瞬の内に距離を詰められ、ラビットソルジャーの先制攻撃を受けた。短剣が左胸に当たるが、突き刺さる事無く弾き返された。
「オレの方が、硬い!」
すぐさま蹴りを入れて距離を離し、体勢を整えて攻撃に転じる。
「食らえ、バンカー!」
左手の大バサミを射出し、捕獲にかかる。
「―――!」
が、オレのバンカーショットは避けられ、空を斬った。
攻撃をかわす時、余裕があるように感じた。
つまり、素早さだけで無く器用値までが高い事になる。
……え、ちょっと待って。
「もしかしてオレ、攻撃当てられない……?」
このままではまずい。
いかに攻撃が通らないとは言っても、無効化出来てる訳では無いので1ダメージは食らう。
現状オレには回復手段は無いので、攻撃を空振り続ければ、いずれオレはやられてしまう事になる……。
攻撃が当たらないせいでやられる……。
そんなダサ過ぎる結末は、何がなんでも回避しなくては!
「チェンジ、【ロックヴェノムアームズ】!」
オレは形態変化でガントレットを切り替え……。
「からの、【ヴェノムショット】!」
一気に毒のマシンガン攻撃を全弾、ラビットソルジャーに叩き込んだ。
が、あまりの素早さに毒の弾丸はほとんど当たらず、毒状態にするだけで手一杯だった。
「くそ、弾切れ……!」
「―――!」
ラビットソルジャーは回避しながらオレとの距離を詰め、背後に回り込んで斬撃を浴びせてきた。
「くぅ……っ!」
振り向きざまに殴りかかるが攻撃は当たらず、ラビットソルジャーは瞬時に距離を取っていった。
「面倒くさ……っ!」
攻撃は痛くも無いが、相手はヒットアンドアウェイを徹底していて、こちらの攻撃が全然当たらない。
現状オレが与えられているダメージは、常時発動型スキル【物理反射】による反動ダメージと毒によるスリップダメージの2つだけ。
それらによってラビットソルジャーのHPはじわじわと削れていっているが、まだ7割近く残っている。
さっさと猛毒状態にまで持っていかないと、さらに時間がかかって余計に面倒な事になる……!
「―――!」
「くっ、また……っ!」
ラビットソルジャーは一気に至近距離まで接近し、剣撃を浴びせてきた。何とか捕まえようとチャレンジしてみるも、オレの動きよりも早く離れ、再度突っ込んできた。
本当に、ヒットアンドアウェイを徹底してきている相手は面倒だ。ある程度のパターンがあるとはいえ、素早過ぎて接近戦だと分かっていても当てきれない……。
と、ここでヴェノムショットのクールタイムが終了し、弾数が一気に回復した。ナイスタイミングだ!
「ダダダダダダダダーーーッ!」
オレはラビットソルジャーが最接近するタイミングに合わせ、ヴェノムショットを至近距離でぶっぱなした。
「!!!」
さすがにゼロ距離のマシンガンは避けられず、ラビットソルジャーに猛毒状態が付与された。
「これで勝ったな! 【ヴェノムフォッグ】!」
一気に毒の霧を噴射し、さらに畳み掛けていく。
反動と毒のダメージがどんどん積み重なっていき、それから数分後にラビットソルジャーは消滅した。
「やっと、終わったぁぁぁ……」
ヘトヘトになったオレは、その場で仰向けに倒れ込んだ。
長かった……。そしてめんどくさかった……。
攻撃が当たらないというのは、もの凄いストレスだったんだな。初めて知った……。
もう、しばらくは素早い相手とやり合いたくない……。
『レベルが28になりました。ナックルの熟練度が3に上がりました』
「お、ラッキー……」
レベルアップと同時に、武器の熟練度も上がったようだ。
結局一度も殴れて無かったけど、武器のスキル攻撃ならカウントされるらしい。これも初めて知った。
むくりと起き上がると、目の前には恒例の宝箱が出現していた。
さぁて、今回の中身は何じゃろなっと……。
「…………は?」
そこには、思わず目を疑うような、衝撃的な装備品が入っていた。
【ラビー君なりきりセット・白】




