新装備のお披露目
「ふぅ……」
風呂から上がり、ドライヤーで髪を乾かす。
このドライヤーが風呂で一番気持ちいい瞬間だと、個人的に思っている。
「〜♪」
「…………」
気分よく鼻歌を歌っていると、着替えを手に持っている妹がスっと横を通り過ぎた。
「……」
「〜〜〜♪」
「下手っぴ」
「?!!」
小声でぽそりと謎の罵倒を浴びせた妹は風呂場へと姿を消し、オレは心にダメージを受けた。
オレがいったい何をしたよ、カガリ……。
◆◆◆
第2階層の街にある、ユリネさんの武具店(2号店)にて。
「はぁ……」
「「……」」
オレはサクラちゃんとスミレちゃんと合流し、店内でユリネさんが到着するのを待っていた。
「あ、あの……」
「ん……?」
「どうか、しましたか……?」
「何が……?」
「その、ちょっと元気がないなと思いまして……」
「あぁ……。……そう見える?」
「「……(こくり)」」
2人は揃って頷いた。
ゲーム内アバターでのやり取りだとしても、今のオレはそう見えるらしい。
「ちょっと、妹に毒突かれただけだから……」
「妹さんに、ですか……」
「……」
妹と聞いて、急に黙り込むスミレちゃん。
別に君の事じゃないから、そんなに気にしなくても良いのよ……?
「っと、お待たせー♪ 皆、揃ってる?」
「「はい」」
「はい……」
「って、あら……?」
ようやくログインしてきたユリネさんは、オレの様子を見て少し違和感を感じたらしく、色んな角度からじろじろと観察し始めた。
いや、現実じゃないのだからそんなに見ても分からないだろうに……。
「何か、嫌な事でもあった?」
「ぎくっ」
いや、何で分かるんすか……。
女性というものは、見ただけで何かを察する能力でも備わっているのだろうか?
「まぁそんな事よりフリント君」
「はい」
「君の新装備、早速渡すからね」
そう言って、ユリネさんはメニューボードに何やら色々と打ち込んでいった。
それから程なくして、オレのメニュー画面のメールボックスに何かが送り込まれてきた。
確認すると……。
「…………?」
―――クラシックロリータセット・黒。
そんなタイトルのメールが届いていた。
「クラロリ……?」
「そう! 銀髪サイドテールが何よりも特徴的な美少女の魅力をこれでもかと引き出せる服……。それを考えに考え抜いた結果、"クラシックロリータ"しかないという結論に至ったの!」
「そう、ですか……」
何をどう考えたらそういう結論に至ったのか、詳しく聞かせ……いや、やっぱり良いや。
一度聞いたら最後、数時間は延々と語り尽くされそうで怖い。
「という訳で、ほらほら装備してみて♪」
「わ、分かりました……」
オレはメールを開いて装備一式を受け取り、早速装備してみた。
見た目はコート風の落ち着いたロリータ衣装。下はギリギリ膝が見えるくらいの短さで、角度によっては太ももまで見えてしまう。黒を基調とし、ワインレッドも取り入れられたトップスとスカート、黒のヘッドドレス、黒のシューズ、暗めの着色の花柄ソックス等々……。
細かいこだわりまで含めると解説し切れない程の徹底的な細部の作り込みが見事過ぎるロリータファッションとなっていた。
何コレ、すっげ……。
「か、可愛い……!」
「すごく、すごく似合ってます! フリントさん……!」
「あ〜〜〜、やっぱりちゃんと似合ってる〜♪ やっぱり時間かけてこだわった甲斐があったわぁぁぁ♡」
「あの、ユリネさん……?」
「なあに?」
「これで戦いに出るの、気が引けるんですけど……」
「そんなの気にしなくても良いのに……」
「いやいやいやいや!」
こんなに綺麗で凝った衣装をボロボロにするなんて、ユリネさんが気にしなくてもこっちが気にするわ!
「大丈夫よ。VIT+30でさらに2倍、その上さらに〈マジカルコーティング〉っていう特殊パッシブスキルまでついてるんだもの。フリント君の防御力なら問題ないわよ」
「えっっっ」
今、何ていった?
VIT値2倍?!
「どうしてそんなUR級の装備になってるんですか?! ユリネさんに渡したあの素材だけじゃこんなになりませんよね?!」
オレが渡したのは〈銀のラブリュス〉という、結構なレア武器。強い武器ではあったが、言ってしまえばそれだけの武器でしか無かったはずだ。
そんな武器が、どうしてこんな最上級装備に……。
「どうせならとっても可愛くしたかったし、それならいっそ徹底的にやりたかったの。そしたら、気がついたらそうなっちゃてたのよ、てへ♪」
てへじゃないよ、てへじゃ。
「大丈夫大丈夫。追加のお代は請求したりしないから♪ 安心してちょうだい」
「そりゃあどうもご親切に!」
絶対今のオレじゃあ払えない金額だっただろうし、正直助かる。
でも、コレ、派手過ぎ……。
絶対浮いて見えるぞコレ……。
「その衣装ね、サクラちゃんとスミレちゃんとの見栄えも考えてのものなの」
「え?」
「「えっ?!」」
「ほら、3人はパーティー組んでるんでしょ? なら、どうせなら見た目も綺麗に揃えた方が良いでしょう? その方が見た目のインパクトも十分だし、何より実力的にも舐められたりしないしね」
「な、なるほど……」
最後の一言は確かに納得出来る。
ド派手な衣装は、実力に自信がある証。そして何より、派手な趣味衣装が作れるだけの素材と資金と実力があるという証明でもある。
と言っても、今のオレはそれほど素材持ってないけどな。金もプレイヤーから奪った分だけだし。
「それじゃ、新装備のお試しがてらにどっかのダンジョンにでも潜ってみたらどうかしら?」
「ダンジョン、ですか?」
「そう。ついでにたくさんのプレイヤーの目につくし、そしたら私のお店の良い宣伝にもなるしね」
「なるほど……」
要は広告塔になれって事か……。
「分かりました……。じゃ、今から行きます……」
この衣装を今から汚すのかと思うと、ちょっと気が引ける……。
けど、せっかく作ってくれた装備なのだ。これくらいなら、まぁいいかな……。
「オススメは、北にちょっと行ったところにある〈ゴブリン迷宮〉かしらね。あそこはゴブリンしか出ないし弱いから楽だし、経験値もそこそこオイシイしね。レベリングには人気のダンジョンなのよ」
「そうなんですね」
レベリングか……。
それなら行くだけの価値はあるかな。
攻撃力が低めなオレでも何とかいけるかもしれない。
「じゃあ、行ってきます……」
「「行ってきます」」
「はーい、行ってらっしゃい♪」
ちょこっと訂正するかもです。




