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ノワール・ルージュ2  新大陸編  作者: 花屋敷


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第47話


 妙な展開になったなとデイブは思っていた。敵対している魔人の親玉と鍛錬する羽目になった。まともな武器でははく模擬刀での鍛錬だ。ただ隣のダンは全く問題がないと言った顔をしている。強い相手と鍛錬できることを純粋に喜んでいるのがわかる。


 ダンが魔人のボスと、そしてデイブは魔人のNo.2を相手にそれぞれ鍛錬することになった。場所はこの要塞の前の広場だ。人間と戦闘をしないということが分かったのか要塞から魔人達が出てきて広場に集まってくる。見た限りだと目の前の2体の魔人よりはランクが1つか2つほど落ちる。


「模擬戦の前に一つお願いがある」


 それまでほとんど口を開かなかったダンが正面にいる魔人の首領と副首領を前にして言った。何事かという表情になる2体の魔人。


「人間はこの魔人領に入る気はない。なので今後は魔人達も人間領には入らないで欲しい。その確約が欲しい」


「あの中央部の川の北と南を国境にしてお互いに不可侵とするということか」


 首領の言葉にそうだと頷くダン。


「魔人以外の獣人にも徹底させてもらいたい。こちら人間は俺達が徹底させる。お互いに無益な殺し合いをしても仕方ないだろう?」


 ダンの提案に暫く思案顔になる首領。ダンとデイブが黙って様子を見ていると暫くして首領が言った。


「よいだろう。ただし今からの模擬戦で私と同等かそれ以上の力量があると認めた場合に限る。どうだ?」


 弱い奴の言うことは聞けないという事かとやりとりを聞いていたデイブが思っていると


「いいだろう。俺があんたと模擬戦をする。こっちのデイブはそっちの副首領とだ。お互いに魔法無しの剣だけの模擬戦でどうだ?」


 ダンの提案に頷く2体の魔人。


「魔法を使うと周囲にも影響がある。剣だけでの模擬戦でこちらは問題ないぞ」


 首領の言葉を聞いたダンが顔を魔人からデイブに向けた。


「デイブ、どうだ?」


「いいんじゃないか」


 頷くデイブ。


「決まったな」


 やりとりを聞いていた周囲の魔人達が歓声を上げた。目の前で人間と対峙している2体の魔人以外の周囲にいる魔人達は自分達の首領が負けるはずがないと決めつけている様だ。


 ただその2体の魔人はそれぞれ人間、ダンとデイブと対峙しておりその人間がそう簡単に負ける相手ではないと認識をしていた。体格差は魔人の方が背も高くて大きい。当然リーチも長く剣を持てば圧倒的に有利になるはずだが2体の魔人はそれでも目の前の人間が只者ではないと見抜いていた。


 広場で左右に分かれるとダンが首領と、デイブが副首領と向かい合い模擬刀を両手に手に持った。魔人はそれぞれ1本の大きな片手剣を持っている。


 魔人が構えると2人も戦闘姿勢になる。始めの声もなく突然に模擬戦は始まった。魔人たちがそれぞれの相手に突っかかっていったのだ。


 ダンは魔人の足の動きで攻撃を予想し振り下ろされた剣を身体をずらせて交わし際に片手剣を横に払うと首領もすぐに体を横に反らせてそれを避ける。


 そうして今度は刃と刃がぶつかり、そしてお互いに後方にジャンプする


「想像以上だぞ、人間よ」


「こっちもだよ。久しぶりに本気の相手が見つかったよ」


 離れた直後に言葉を交わすと再び剣を交えるダンと首領。その剣捌きは周囲で見ている魔人達には見えないほどのスピードだった。剣同士がぶつかるキンキンという高い音が聞こえているがその剣は見えていない。


 最初は魔人の首領がダンの模擬刀を弾き飛ばした。湧き上がる歓声。しかし次はダンが首領の片手剣を弾き飛ばす。シーンとする周囲の魔人達。


 デイブと副首領との模擬戦も同じ様にぶつかっては離れ、そしてまたお互いに切りつけるという繰り返しで行われていた。3回に1回はデイブの剣が副首領の剣を弾き飛ばす。魔法の方が威力があるデイブだが剣の技術も相当にアップしていた。


「俺に勝てるのは首領だけだと思っていたが、なかなかやるな」


「こっちもだよ。ダン以外にここまで強い相手は初めてだ」


 お互いにそれぞれ剣を合わせる模擬戦。10分ほど立つと一旦休憩を取り、再び剣を合わせる。そうして3時間弱鍛錬を続けたのち、


「見事だ。ここまで強い人間がいるとは想像もしていなかった」


 模擬刀を収めた首領がダンを見て言った。隣でも副首領とデイブの模擬戦が終わっている。休憩しつつとは言え互いに3時間真剣な鍛錬を続けて流石に疲れが見えていた。ダンと首領は完全に互角であり副首領とデイブでは少し副首領の方が強かった。


 気がつくと陽が大きく傾いていた。


「もう少しやっていかないか?」


「いいだろう。ここまでの相手はそうはいないからな」


 魔人の首領の言葉に即答するダン。


「お前も戦う人間だな、気に入ったぞ」


 そうして首領は要塞の1部屋を2人に用意した。部屋と言っても何もない部屋だが野宿よりはましだ。


 首領自らここだと要塞の中の1部屋に案内してきた時にデイブが聞いた。首領の背後には副首領もいる。


「あんたはいつ首領になったんだ?」


 2人が案内された部屋に入ると入り口に立っている2体の魔人に向かってデイブが聞いた。


「1年とちょっと前だ」


 なんでそんなことを聞くといった体で答える首領。デイブはその首領を見ながら、


「1年ちょっと前か。俺たちの国の大臣が2人魔人に入れ替わっていたが、それはあんたの指示じゃなかったんだな」


 そう言うとなるほどそのことかと言ったあとで、


「あれは前の首領の時の命令だ。そして人間領に行って入れ替わっていた仲間は前の首領の部下だ。前の首領が俺に倒されたことで、ここに帰ると自分達も殺されると思ったんだろう。俺は殺す気は無かったが戻ってこいとも命令しなかった」


「放置したんだな」


 デイブの言葉にそうだと言ってから2人を見て


「人間領にある要塞に残っている我らの仲間の魔人も前の首領の仲間というか子分たちだ。奴らは弱かっただろう?」


 と聞いてきた。


「雑魚だったよ」


 とデイブ。


「お前達ならそうだろうな」


「戦いとは正面からぶつかるものだと思っている。あのやり方は俺のやり方ではない」


 副首領がそう言うとその後を首領が続ける。

 その言葉にわかったというダンとデイブ。


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