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ノワール・ルージュ2  新大陸編  作者: 花屋敷


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第46話


 要塞の中ではパニックが続いていた。人間が2人荒野をやってきたと思ったら門から出ていった幹部クラスの魔人があっという間にやられ、城壁の上から人間を攻撃しようとしていた魔法士や弓術士も次々と人間の魔法で倒れていった。


 要塞に詰めていた魔人のうち半数近くがやられている。それもたった2人の人間にだ。彼らが慌てふためいている間に日が暮れ、2人の人間が視界から消えた。おそらく山裾の向こう側にいるんだろうが出ていったら返り討ちにあるのがわかっているのか誰も出ていかない。


 夜が明けると2人は再び要塞の前に姿を現した。城壁の上からは誰も顔を出してこない。そうして待っているとしばらくして要塞の門が開いて魔人が3体扉から出てきた。


「それなりのやつが出てきた」


 デイブの言葉に頷くダン。1人はSSS以上4S未満のクラスの魔人だ。背後の2人はSSSクラスだ。3体は門を出て近くに立っているダンとデイブに近づいてきた。


「なるほど、なかなか強そうだ。2人だけでここまでやってくることはある」


 一番ランクの高い魔人が話をするのを黙って聞いている2人。


「お前達の目的はなんだ?俺達魔人の殲滅か?」


 その言葉に首を横に振る2人。


「殲滅じゃないな。俺達は強い相手を探してやってきた。自分達が強くなるための鍛錬の相手を探してるんだよ」


 SSSSクラスのレベルに近い魔人を前にしても普段と変わらない2人。例によってデイブが話しをする。


「鍛錬?それだけのために俺たちの仲間を大勢殺してきたのか?」


「そっちだって同じだろう。魔人や獣人が人間の領土に入って戦闘能力のない村人を皆殺しにし、冒険者も殺しそして王城の人間を殺して入れ替わってる。人のことは言えないぜ」


 数メートルの距離を置いて対峙する2人の人間と3体の魔人。デイブの言葉にしばらく沈黙していたその中で最もランクが高い魔人が口を開いた。


「つまり鍛錬ができれば殺し合いはしないということか?」


「そうだ。俺達は自分が強くなりたいと言う思いだけでここにやってきている。殺さずに鍛錬できるのならそれで全然構わない」


 ダンが言った。魔人はダンに顔を向けると


「いいだろう。その言葉嘘ではないだろうな」


 頷く2人。


「この門の奥に要塞があり、そこには俺達の首領がいる。首領もお前達と同じで強い相手を探しておられる。鍛錬の相手ならちょうどいいんじゃないか」


 人間と話をしている魔人は2人の技量が相当高いと見抜いていた。自分でも倒すのに苦労するだろう。いや、倒せないかもしれない。特に黒いローブの人間の醸し出している気配は首領並みか下手したらそれ以上だ。この2人が同時に襲い掛かったら首領でも相当厳しい戦いになるだろうと。


「首領が俺たちの相手をしてくれるのか?」


 デイブの言葉にそうだと言う魔人。


「詳しくは首領と会った時に聞けばよいが、俺達は数が多くない。魔人同士で殺し合いをしてきたからな。今の首領はこれ以上魔人が減るのを良しとしない考えをお持ちだ」


 ダンとデイブにとってこの流れは想定外だった。てっきり要塞の連中を全員殺してから奥に乗り込んでいくものだとばかり思っていたところ、鍛錬なら首領に合わせてやろうと魔人から提案が来ている。


 2人が黙って立っていると魔人が言った。


「どうする?来るのか?来ないのか?」


「行こう」


 ダンが言うとデイブも頷く。魔人達は振り返って2人に背を向けると門に歩き出した。後に続く2人。


 山の狭隘に造られている要塞の門を潜って中にはいるとそこは砦の様な建物があり警備しているであろう魔人達がその上から2人の人間を見ている。見た限りだとそう数は多くない。2人が左右に注意をしながら歩いていると前を歩く魔人が後ろを振り返って言った。


「ここには元々100体ほどの仲間がいた。お前達が半分近く殺しているから今残っているのは60体程だ」


 離れた場所から2人を見る魔人だがそこに上位の魔人がいるからだろう、皆黙って見ているだけだ。ダンとデイブは左右にいる魔人を見ながらせいぜいランクSSからSSSクラスだなと見ていた。それなら全員が襲い掛かってきても脅威にはならない。


 要塞を抜けると谷底に一本道が伸びていた。そこを歩くこと10分ちょっと、道がカーブしていた先にもう1つ要塞が見えてきた。2階建の頑丈な作りの要塞だ。


 近づいていくと要塞の門の前に1体の魔人が立っていた。その気配を感じた2人は瞬時にその魔人がこの魔人領のボス、首領と呼ばれている魔人だと理解する。


 醸し出している雰囲気はSSSSクラス以上だ。今までの魔人とは違う。


 近づいていくと首領の魔人も数歩前に歩いてこちらに近づいてきた。門の前で対峙する首領とノワール・ルージュ。


「なるほど。報告通り、いやそれ以上だな。ここまで強い人間は初めて見たぞ」


 お互いに戦わなくても相手の技量を推し量ることができる。高い戦闘能力を持つ者のみが感じることができる感覚だ。


「副首領が言ったかもしれんが自己の鍛錬のために私はいつも強い相手を探している」


「それはこちらも同じだ。魔人領に来たのも強い相手を探すためだ」


 デイブの言葉に頷く首領。


「この2名の人間は鍛錬するのが目的で殺戮のために来たのでは無いと申しております」


 副首領と言われたそれまで2人の相手をしていた魔人が言うとその言葉に頷く首領。


「今この2名の人間たちからは殺気を感じないからな。こちらを殺す気じゃないのはわかっている」


「そっちも同じだな。俺たちもあんたとその副首領から殺気を感じない。それ以外の魔人達は殺気だってたけどな」


 いつもの通りやりとりはデイブがし、ダンはデイブの横に立って黙って首領の魔人に視線を向けたままやりとりを聞いていた。要塞の前で向かい合って話をしている2人の人間と2体の魔人。それ以外の魔人の姿は見えない。おそらく奥の要塞の中にはいるんだろう。微かな気配が漂ってきているがその気配は敵意よりもむしろ畏怖、恐怖で身がすくんでいる気配だった。



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