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ノワール・ルージュ2  新大陸編  作者: 花屋敷


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第18話


 王城の中は騒然となった。宰相と国防大臣が3年前から魔人にすり替わっていて国政を担当していたからだ。


 国王陛下の病は本当で医師団が付き添っていたが部屋から出ることは許されてなかった様だ。そして国王陛下はそのまま治療に専念することとなり、国王の一人娘の王女が国王代理として国政の最高責任者になることになった。ちなみに皇后陛下は早くに逝去されていて国王陛下は王女との2人家族だそうだ。


 ダンとデイブは王城で国防大臣に化けていた魔人を倒すと後は守備隊の騎士のヤングに任せて一旦城を出てギルドに戻ってきていた。


 ギルマスに城での出来事を報告をする。そしてギルマスはすぐに国内の全ギルドに事の一部始終を詳細に書いた報告書を送った。


 騒動があってから3週間が立った頃、王都周辺で軽く体を動かしていたノワール・ルージュの2人がギルドに戻ってくるとギルマスに呼ばれる。


「明日の午後に王城に出向いてくれ。今日城から使者が来た。ようやく落ち着いたらしくてな王女様が今回の顛末を聞きたいんだそうだ」


 ダンとデイブはいずれそう言うことがあるだろうと予想していたので魔人を倒してからも王都から出ずにこの周辺で身体を動かしていた。


「王女に会うのは構わないんだが俺達礼儀作法も何も知らないんだけど?」


 デイブが言った。


「それは問題ない。俺からも言ってあるし守備隊のヤングからも話しはしてある」


「俺達が他の大陸から来たってことも話しているのか?」


「簡単にな。ギルドのレポートを渡してある。まぁその辺も実際当人達から聞きたいってことらしい」


 ギルマスはデイブとやりとりをしながらその隣で黙って聞いているダンに意識を寄せていた。魔人を相手にした時の迫力は今は感じられない。もちろん強者のオーラはダンもデイブも醸し出しているが今のおとなしいダンを見ているとあの魔人を相手に平然としていたダンの姿は全く想像できない程だ。本当の強者とはダンの様な冒険者のことを言うのだろうとギルマスはデイブと話しながら内心で思っていた。


「デイブもダンもいつも通りで構わないぞ。お前さん達は厳密にはこの国の人間じゃない。そう思うと気楽に対応できるだろう」


「確かに」



 翌日2人は冒険者の格好のまま王城に向かって歩いていく。城の門には衛兵が控えていたが2人を見ると名前だけ確認をしてすぐにゲートを開けた。どうやらヤングから事前に命令が出されているらしい。


 そして城の入り口には騎士の格好をしているヤングが背後に4名の騎士を従えてダンとデイブを出迎える。


「わざわざご足労をかけて申し訳ない」


「王女の呼び出しだろう?俺たちも事情を説明する必要があると思ってたから平気さ」


 ヤングの言葉にデイブが答えた。


 そうして前後を2名の衛兵に囲まれてダンとデイブ、そして隊長のヤングの3人が城に入ると廊下を歩いていく。歩きながらヤングが簡単に説明をしてくる。


「この国は全て国王一家の領地になっている。いつも城にいらっしゃるのはのは国王一家と大臣達だけだ。今日はその大臣達も同席する様になっている」


 ヤングの説明を聞きながら廊下を歩き、階段をいくつか登った廊下の先に大きな扉が見えてくる。


「この扉の向こうが国王陛下に拝謁する部屋になっている」


 扉の両側に衛兵が立っており近づいてきたダンらを見ると2人がゆっくりと扉を開いた。

 

 中は天井が高い広い部屋になっており扉から奥に赤い絨毯が敷かれ、その先は三段ほどの階段になっていてその先に大きな椅子がある。そこにはまだ誰も座っていなかった。豪華な部屋だ。


 そしてその壇上の左右にそれぞれ数名ずつの男性が立っており扉を開けて中に入ってくるノワール・ルージュの2人に視線を向ける。彼らが大臣連中だろう。


 ダンもデイブも部屋の外から気配を探って問題がないのを確認していたのでリラックスした表情で絨毯の上を歩いて階段下につくとそこで立ったまま待つ。その二人の背後に同じ様にヤングが一人立っていた。


 大臣らは視線を向けてくるだけで一言も発しない中、王座の前の絨毯の上で立っていると奥の扉が開いて執事の格好をした男性が


「王女様が参られます」


 そう言うと両側にいた大臣達が立ったまま首を垂れる。


「悪いがお前さん達もそうしてくれ」


 背後から小声でヤングが言うとダンとデイブも形ばかり頭を下げた。絨毯の上を歩く音がしてしばらくしてから


「頭を上げてください」


 という女性の声がして全員が顔を上げる。ダンとデイブも顔を上げて正面の椅子に座っている女性を見た。年の頃は20代の半ば、俺達と同じくらいだろう。ドレスではないが上品なワンピースを着ている女性がこの国の王女だろう。美人で聡明な顔をしている。


 二人が王女に視線を送っていると王女が口を開いた。


「私は父である国王陛下の代理でこの非常事態にこのジュエノ王国を見ているキャサリンと言います。この度はそこにいる2名の活躍で城の中にいた魔人を退治することができました。宰相と国防大臣は既に新しい人を任命し国としての機能を復活させるべく動き出したところです。今日は城にいた魔人を倒した冒険者の二人にお礼が言いたくて城に来てもらいました。この度は本当にありがとう」


 そこでキャサリン王女は一旦言葉を切り、


「あなた達お二人がこの大陸ではなく他の大陸からここにやってきたという話も報告を受けております。したがってこの国の作法を知らなくて当然でしょう。今よりは気を使わずに普段通りにしていただいて構いませんよ」


 その言葉を聞いてダンもデイブもホッとした表情になる。


「この国の冒険者ギルドよりお二人のこと及び今回の一連の騒動についての報告は受けておりますが今一度お二人から直接話していただけませんでしょうか」


 王女の言葉に二人顔を見合わせてからデイブが俺が言おうと行って王女や大臣のいる前で自分達の事やこの大陸に移動してきてからの事を順を追って話をしていく。


 黙って聞いている王女と大臣達。デイブが話を終えると王女から


「あなた達は別の大陸で魔人を相手に鍛錬を重ねていた、だから実際この大陸で魔人の気配がすぐにわかった。そして相手の強さも知っていたのですね」


「その通り…です」


「わかりました。この国にあなた達の様な強い冒険者がいて本当に助かりました。それでこれからですがあなた達はどうされるおつもりですか?」


 王女の問いにデイブはダンと顔を見合わせそれから正面を向いて言う。


「とりあえず獣人が占領している土地を取り返すつもりです。聞いたところによると以前の国境はこの大陸の中央を流れている川だったとか。まずはそこまで国境を押し上げるつもりです。そうしてからここにいるダンと二人で今度は魔人領に乗り込むことを考えています」


 その言葉を聞いて王女をはじめ周囲の大臣も思わず声を出す。場がざわざわとしたのを嗜める王女。そして二人を向いて


「今おっしゃった事、お二人だけでやるつもりなのですか?」


「大丈夫。ここにいるダンと二人なら難しい事じゃないですよ。それに」


 そこで一旦言葉を切ったデイブ。すぐに言葉を発した。


「それに言い方は悪いが他の連中と一緒に動いても邪魔になるだけでね。ダンとは付き合いが長い。お互いに言わなくても次の動きがわかる。そう言う関係性の方が数が多い相手には有効なんですよ。なので少人数の方が動きやすい」


 口調がだんだんと砕けてくるが周囲は何も言わない。


「王女様も弱体化した軍隊を再強化したり人員を配置したりとしばらく時間がかかるでしょう。それはそれで進めてもらって自分達は冒険者として敵を倒すのが仕事なんでそっちに専念するつもりです」


 王女はデイブの言葉にわかりましたと頷いてから、


「レポートによりますとダンは魔人に弱いと言ったそうですが本当に弱かったのですか?私たちの理解では魔人を倒すにはこの国のAクラスの冒険者達が何名も組まないと倒せないと聞いています」


 とダンを見て言った。今まで黙っていたダンが王女をしっかりと見ながら口を開いた。


「その通り。倒した2体の魔人は弱かった。弱すぎて鍛錬にもならない程だった。王女や大臣の前で言うことじゃないかもしれないが敢えて言わせてもらうとこの国の冒険者は総じて弱い。弱いというのは自分達が以前いた大陸に住んでいる冒険者と比べてという意味で弱い。ただこれは仕方がない面もある。モレスビーからこの王都まで移動してくる時に出会う魔獣が皆弱かった。これじゃあ鍛錬にならないだろう。そんな中で獣人よりも強いと言われている魔人に勝てないのはある意味仕方がないと思う。自分達は前の大陸ではダンジョンに潜れば今回倒した宰相や国防大臣に化けていた魔人よりもずっとそれこそ何段階も上の強さを持っている魔人や魔獣を相手に訓練を続けてきた。戦闘の経験の差はどうしても出る」


 ノワール・ルージュの話が終わるとキャサリン王女が二人を見て


「なるほど。それならわかります。お二人は前の大陸で厳しい戦闘を何度も繰り返してその技量を上げてきたのですね」


 そうですと言う二人。王女はわかったという顔になってから、


「ところで今回の活躍に対して王家より何かを贈呈したいと考えています。希望があればこの場で言ってかまいませんよ」


 王女に言われてデイブはダンと二言三言言葉を交わすと王女に顔を向けて


「この大陸の地図があればそれを頂きたい」


 デイブのその言葉に王女はもとより大臣連中も表情を変えた。地図は最高クラスの機密事項になり一般には流通していない。ただダンとデイブはこれから北に向かうつもりだ。移動にあたって地図は必須になるなと二人で話をしていた。


 しばらくの沈黙の後王女が二人を見て言った。


「わかりました。あなた達はこの国を救って下さった英雄です。王家にある軍事用の地図を1つ差し上げましょう。失った領土を取り返すためには地図は必要でしょうからね。そして二人はこの国での完全なる自由を王家として保証しましょう。どこに行っても構いません。もちろん国境を超えて獣人領に行くのも自由です。ただ北に向かう時は気をつけてください。そして領土を取り返してくれると信じています。私からは以上です」


「ありがとうございます」


 デイブがいい、隣でダンもお礼を言った。


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