時の箱舟-4
さて帰る手立てが見つかったプリムラだが課題が残されている。
1つ、呪文札に書かれていた術式はどのようなものか
2つ、普通ではあり得ない時計の存在
この時計、明らかにおかしく偶々いたスラムドッグマートの腕利き鑑定士に見せた所
『こ、これは⁈ダンジョンの核を中心に作られている時計⁉︎これ1つ売れば孫の代まで安泰ですよ!』
と鑑定資格【S】をもつ、『キラーン・カタメ』が鑑定した。しかし、動力が無いようで
【ばたんきゅ〜⤵︎】
と裏に表示されていた。つまり術式とこの時計の使い方がわからなくてはダメなのだ。
更に術式に関しても、パリ・タワーのツテを使い調べたがちんぷんかんぷんだった。
全くのお手上げ状態である。
とりあえずプリムラは、その日はパインパックのいるスラム街の屋敷に泊まった。そして習慣というのは恐ろしいもので、翌朝もプリムラはスラムドッグマートに足を運んだ。日課の店舗前に掃除をするためだ。自分が元の世界に帰れないかも知れないのに、なんていい子なんだ。
しかし!この何時もの日課のお陰で事態は急変する!
『おはようございます!あのお掃除したいので道具を借りますね』
『え!?いいのかい。ありがとう。うちの決まりで3軒となりまでしっかりお願いね』
『はい!』
プリムラは、店舗の裏にある物置から掃除道具を取り出し掃除を始めた。ふと看板をみるとやはり汚れている。
【看板はお店の顔】
とゴルドウルフにいつも言われていた。店内で品出しをしている店員にお願いし脚立を一緒に出し、支えて貰いながら看板を拭き始めた。
『例えどんな時でも私は、私のできることをする!』
すると、『スラムドッグマート□』のステッカーが一部剥がれかけていた。角の所がペラペラしている。よく見ると…
『あれ…?何これ…?』
ステッカーの後ろに、蝋封された手紙があった。そしてなんと!
『えぇぇ!ゴルドくんからの手紙⁈』
慌てて裏を返すと宛先に自分の名前が書かれており、裏にゴルドくんの文字が。看板を拭き終わり封を切ると
【プリムラさんへ
この手紙があなたのいる時代に届くことを、この時代から願って手紙を書いています。
いきなりの出来事にさぞかし驚かれたでしょう。
プリムラさんが載ったあの魔道具は『時の箱舟』というもので時を超えることが出来る物なんです。今回私の不注意で、プリムラさんが未来に行ってしまいました。本当に申し訳ございません。
さて、元の時間の帰り方ですが〜】
そこには『時の箱舟』の操作方法とは別に術式が書かれた新しい呪文札改に、時計の電動力【げんきいっぱい!】が同封されていた。
【〜最後にこの手紙を読んだらすぐに帰って来てください。あまり別の時間帯にいるのはよくないので。 ゴルドくんより】
プリムラはその手紙を読むと、すぐに店のキッズスペースに入る…事もしないでパインパックの元に行くことにした。お別れの挨拶をするためである。
驚かれたが帰り方がわかった、と伝えると抱きしめてくれた。そしてスラムドッグマートの2階キッズスペースの一角。深呼吸をし何度もやり方を確認し、準備万全。
『よ〜し、やりますよ〜!タ〜イム…スリップ!』
その掛け声と同時に滑り出すプリムラ。すると3階からの階段から…
『おや、もうキッズスペースに誰かいるみたいですね』
『あ、会長!大丈夫ですよ私が見てきます!』
え…今の声。おじさまと、私⁈一目だけでも!
ツルン!
『はっ⁈』
タイムスリップが成功したようで、そこは何時ものキッズスペースだった。ただ一つ違うとしたら…
『おや、起きましたか?プリムラさん』
『お、おじさま⁈』
そうそれは男なら誰もが羨ましがる、膝枕をしてもらっていたのだ。男の膝枕で喜ぶなど、そういう性癖を疑うが今回は男が女に膝枕である。プリムラ、これには喜ばずにはいられない!
『あ、あのおじさま!私、未来に行って会長で!』
『落ち着いてください。さぁ、疲れが溜まっているんです。ゆっくりお休みなさい』
『あ…』
クゥと可愛らしい寝息を立て始めた。
膝枕していたゴルドウルフはそっと腕を伸ばし、近くのアロマを焚いている鉢の蓋を閉じた。すると、ゴルドウルフの姿がゴルドくんになった。そうさっきのお香には、催眠作用と幻覚作用があったのだ。
プリムラさん、本当に今回の騒動はすいませんでした。未来のことを知り過ぎるのは良くないのです。あくまで可能性の一つに過ぎないのです。
プリムラさんが時を越えた時は焦りました。すぐ様、【錆びた風】にしがみつき王立中央図書館に駆け込み過去の新聞を100年分読みました。聖女が過去に現れたという記事が無かったので、未来に託したのです。
プリムラさんなら日課の掃除を怠らないと思ったからこそ成功しました。そして、酷ですが未来の出来事は夢だと思った方がいいのです。未来は無限ですから…一つの世界を知りその道を辿ろうとしなくていいんです。
さぁ、おやすみなさい。
ゴルドくんはこっそり、プリムラのポケットから自分の手紙をとり跡形もなく燃やした。それから数日後に、看板にステッカーを貼り付けた。
自身がデザインの耐久性が優れたステッカーを、未来への聖女に向けた手紙と一緒に
~END~