ある王の話
ゴルドウルフがいる大陸より離れた所には島国がいくつもある。サシミの故郷【シブカミ】もその1つだ。その国のいくつかは、勇者ゴットスマイルも訪れ魔王討伐の為に鍛錬を積んだり、その国を支配していた魔王の手先を倒したりした。もっとも、勇者がその国を救った裏には名もないオッサンの影があるのは確かだ。
国名はグリーン。国土の6割が森で埋め尽くされている、自然豊かな国だ。その国王が住まう場所、その庭に2つの像がある。
1つの像は、庭のど真ん中にあり造形も美しく常に手入れがされている。像の名前は【ゆゥしャさマとなカまタチ】と書かれている。
もう1つは決して整った顔ではないが、勇気ある顔立ちでキズつく事も厭わない男の像が隠されるように安置されている。像の名前は【G】とだけあり、常に誰かしらのお供え物が捧げられて定期的に像の掃除もされている。
庭に出てきた幼い子供は、隠された像のことを父に聞く
この【G】という像は誰?
父は答える
この像は、真の男だ
じゃあ、あれは?
もう1つの像を指差す
あれは、人の手柄を奪う愚か者だ
父が生まれる前よりこの地には魔物がいた。その魔物は恐ろしく強くかつ凶暴だった。私が生まれ成長し【成人の儀】の時、彼らは船で海を渡りこの地に来た。なんでも、この地にいる魔物を倒すべく来たとみなにそう言った。国の民はもちろん喜び、私も喜んだ。彼らを歓迎する宴が開かれみなが希望の眼差しで見ていた。
その中のリーダー格の男はこう言った
こんなステキな宴をありがとう。つきましては明日からの戦いのために今日はもう寝ることにします
そう言うと、1人の見張りを残し仲間と共に天幕に入っていった。私たちは
流石は我らをお救いになってくださる方だ
と褒めた。次の朝、なぜかそのリーダー格の男は不機嫌そうに起きてきた。今日は魔物の偵察に行ってくると言い残し、森へ入っていった。その後は見張りの1人が何度か森に入り、それが何日か続き、私たちは不振に思った。
彼らはいつになったら魔物を退治してくれるのだろうか?
疑問に感じてきた
私は我慢できず、別行動をしている見張りの1人に聞いてみた。
失礼ですがいつ頃に、勝負を仕掛けるのでしょうか?私たちも手を貸したいと思います
彼は答えました
… いま、彼は英気を養っています。一撃必殺を放つためのね
そして彼らがきて、20日目の時に遂にその魔物は退治されたのだ。その日は、力を貸して欲しいと言われ私を含め国の中で特に武に秀でた者を連れて森に入った。魔物は普段、寝ていても少しでも近付いたら起きるのに、今日は熟睡していた。その隙を突き彼らの攻撃が始まった。それはどれも派手な物で、あたりの物を巻き込むほどのものだ。だが、私を含め誰も彼らを見ていない。見ているのは1人。
たった1人で魔物の注意を惹き、なおかつ味方に適切なサポートをしているあの見張りだ。なんと彼があの魔物を熟睡させる為に、睡眠作用のある果実をあの魔物の食わせていたのだ。あの恐ろしい魔物のたった1人で近づきそれを実行するのは勇気がなくてはできない。
更に自分だけでなく、味方に対する配慮もするその姿は本当に男であった。リーダー格の男たちの技は確かに派手だが、それはあの男がいるからこそできる技。普通は技も出せずに死んでいるだろう。
そしてリーダー格の男が、奇声をあげながら剣を振り魔物の首は斬られその首は、リーダー格の男が持ち民の前で披露した。まるで見張りを除く自分たちだけで、退治したかのように振る舞ったのだ。私はそれに異を唱えようとした。もちろん、私の同行者もだ。しかし…
いけません
彼が止めた。なぜと聞くと
彼は勇者です。彼が活躍する事で、みなが勇気付けられ頑張れるのです
しかし、貴方も勇者だ!敵を倒すためにたった1人で、敵の前に餌を出し味方が大技を出せるように囮にもなった。彼らはただ大技を出したに過ぎない。貴方がいなければ全滅していただろう。貴方もあの輪に加わるべきだ
彼は頰を掻き、困った顔をして
そのお言葉だけでいいです
と言って去っていった。次の日にも勇者は不機嫌そうに起きてこの国を後にした。民は勇者へのお礼とし庭の真ん中にあの像を作った。しかし、影の英雄を知る同行者だった私達はこっそり彼だけの像を作った。彼のように強く、周りに気配りが出来る男になろうとね。
そうなんですね、父上。私にこの像を見せたのは、人を外だけでなく内も見ろ。光を創り出してくれる影のものにも気配りをするように、という事なんですね?
あぁ、そうだ。そして私は彼のような男になって欲しいと、お前にその名を付けたんだよ
グッドゥ・モス
この国の意味でグッドゥはゴールド、モスは狼の意味だ。そして、家名のコーリをつけて…
グッドゥ・モス・コーリ
〜END〜
語源はアイスランド語です(^-^)
Gull=金
Moth=狼
コーリ(氷)は英語でアイスで島国なのでアイスランドです(*^_^*)




