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プロジェクトS【ある男性従業員に密着!我々はそこで商売の基礎を見た!】

このお話は、原作第3章【ふきふき無双】を読んでから読むことをお勧めします。

マーケット…それは一般の我々以外にも冒険者にも無くてはならないものだ。今回、我々【冒険者新聞】は今や飛ぶ鳥を落とす勢いの成長を見せる【スラムドックマート】に勤める、ある男性を取材した。

・・・

・・

日の出とともに起き上がる山…否、山と見間違えるほどの大男【ギラン・カタメ】が起きる時間だ。


ーいつもこの時間に起きるのですか?

『まぁな、ガキの弁当と朝飯を作らなけゃなんねぇからな』

ー奥様は?

『…キランを産んですぐにパタンさ』


我々は聞いてはいけないことを聞いてしまった。さてギランさんはその身体の大きさに似合わない手際さの良さで次々と料理を作っていく。


ー料理はどこで学んだんですか?

『おっ母の残したレシピと旦那のおかげでさぁ』


旦那とは彼の親友にして上司【ゴルドウルフ・スラムドッグ】のことだ。

照れながら料理を作り終わると、息子の【キラーン・カタメ】が起きて来た。

・・・

・・

息子さんが通う『スクールスラムドック』に送る道すがら、ギランさんも勤務先に向かう。裏口から入り、ロッカールームで手早く着替え朝の朝礼が始まる。


『ん、では朝の朝礼を始めますっ』


色っぽい号令とともに、朝礼が始まる。それが終わると、各々 準備に取り掛かる。品出し、店舗前掃除、店舗内掃除、陳列チェック、チラシ製作、最近売り出しの商品などだ。ギランさんは【総合鑑定所】のカウンター内に入っていった。


ーギランさんは鑑定士なんですか?

同僚であろう男性店員に聞いてみた。

『はい。ギランさんは優秀な鑑定士ですよ。社長のゴルドウルフさんの知り合いという贔屓目抜きにしても優秀です』


何とギランさんは、鑑定士の国家資格を持っているそうだ。ランクは【A+】という【S】ランクの一歩手前だ。


ー【A+】ランクなんて凄いですね。

「いやぁ、すごくねぇさ。旦那は【S】ランクですからね。いつかあっしもそのクライに着きたいもんでさぁ」


資格ランクは磨けば磨くほど更にランクが上がり、その道のプロフェッショナルになる。【A+】でも凄いのに更に上を目指す。向上心を絶やさない。そんな男が【ギラン・カタメ】だ。そして、開店時間が来た。彼は目一杯息を吸い…


『いらっしゃいやせ!冒険者の野郎ども!』


開店時間と同時に冒険者達が店内に入って来た。我々、取材陣は邪魔にならないよう隅に固まる。買取希望の冒険者が来た。


ーこれは何ですか?

『ん?これは【ファイヤーマウス】の毛皮さ。1匹の単価は安いが、数があると結構いい値段になるんだ』


ファイヤーマウス…火口付近に生息する魔物で、大きさは25cmほど。生きている間は背中に火が灯るのが特徴だ。


『ふむ、綺麗に皮を剥ぎ処理も丁寧。10匹でこれぐらいで如何でやしょう?』


そこに提示されているのは相場の1.5倍の価格だった。


ー何故、相場より高く買い取ったんですか?

『あの大きさの魔物の皮の処理てぇのは、意外と手間がかからぁ。その手間が無い分、うちでは上乗せしてるんでさぁ』


成る程、しっかりと理由があるようだ。その後も次々と鑑定をするギランさん。


『お願いします!買い取ってください』


次のお客のようだ。見ると薬草のようだ。真剣に鑑定するギランさん。握り締めて持って来た為か量は多くとも状態は非常に悪い。


『悪いが嬢ちゃん。価格はこれだ』


その価格はかなり低い。買い取ってくれるのが有難いぐらいだ。落胆する少女。しかしハプニング!ギランさんすっ転びカウンターの角に頭を強打してしまった。


『痛てぇ、痛てぇよ!薬草をくれ!あ、ここにあった!』


薬草を拳で潰しそのエキスを患部に塗る。腫れが引いたようだ。


『ふぅ、助かった。嬢ちゃん、おめぇさんの薬草のおかげであっしは助かった。ちょっとイロを付けてこれで買い取りでいいかい?』


それは上級ポーションが買える値段だった。とてもじゃないが釣り合わない。


ー何故、あの値段で買い取ったんですか?

『そいつを聞くのは野暮ってもんじゃねぇか?』


鬼の顔にもほころびが…我々はその瞬間を見た。


手際よく鑑定をしようやく一息ついたギランさん。


ーお昼ご飯は何を?

『キラーンと同じもでさぁ。ただ量は多いがなぁ』


美味しそうに頬張るギランさん。ところが休憩所にまで響く声が聞こえる。


『おい、これはどうなってんだゴラァ!』


クレームのようだ。顔に包帯を巻いた、怪しい人物が店員に詰め寄っていた。困り果てている店員。


『どうしやした?』


ギランさんが対応するようだ。慌ててご飯をかき込んだようで頰に米粒が付いていた。クレーム内容は買い取り額。


『こいつはちょいと安く買い叩きすぎじゃんねぇかゴラァ!やっぱり、汚ねぇ犬が経営している店は汚く儲けてんだな!』

『じゃあキチンと説明してやらぁ。お前さんが持って来たこの【コールドバード】の羽のことだな?』


コールドバード…真夏でも氷柱が下がる氷洞に住み着く魔物。羽が綺麗で主に装飾に使われる。


『そうだゴラァ!』

『んっん“!まず乱暴に取っちまったせいで肝心の羽がボロボロ。さらに血が所々の付いてやがる、これを落とす手間にこれだけ金がかからぁ。つまり[適正値段-状態-手間]でこの値段なんだぜぇ?わかったか?』


正論を言われ後ずさるクレーマー。三下みたいな捨て台詞を残してその場を後にした。


ーああいうクレーマーは結構いるんですか?

『前まではそんなにいなかったがなぁ。最近になって出てきやがったんだよなぁ。まぁ、アッシは本当のことを言ってるんで筋を通して貰うだけでさぁ』


接客業の難しさを我々に教えてくれたギランさん。こんな質問をしてみた。


ー今まで鑑定してきて冷や汗をかいたものはありますか?

『そうさなぁ、キッズルームに飾ってある絵あるだろぉ?あれ【パインパック・ホーリードール】がお書きになったんだがなぁ。価値いくらだと思う?』

ー絵を見ると本当に幼い子が描いた絵ですね。お世辞に言っても価値は無いんじゃ?

『そう思うだろうぉ?だけどよぉ、鑑定してみてビックリ仰天、こんだけの価値があるんだ』


我々に提示した額は、一般ではとても手に入らない額だった。鑑定結果の理由はスキルが【A+】の為、詳しくはわからないそうだ。

クレーム処理が終わり、ギランさんの帰宅時間になった。

【スラムドッグマート】では8時間以上の勤務を禁止している。その為、8時からの勤務のギランさんは17時上がりだ。お店は18時閉店でその後、在庫チェックをし18時半には完全に閉店だ。店によっては違うがこの地域の営業時間だそうだ。他にも、夜限定のダンジョン近くの【スラムドッグマート】は19時に開店し、4時に閉店している。

最後にギランさんに聞いてみた。


ーあなたにとってスラムドッグマートとは?

『アッシら、そして冒険者に一般のお客さまが笑って楽しめる場所でさぁ』


「っと書けた!さぁ明日の一面記事はこれで決まりだな!」


残念だが明日の一面記事は後に【シャンタさん事件】と呼ばれる、大聖母による出来事でこの記事は先送りになってしまった。そしていつしかこの記事のことは忘れられてしまったのだ…

だがしかし!そのおかげで、野良犬の手の内がジェノサイド家長男に知れ渡ることはなかったのだ!


~END~

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