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運命のワルツを貴男と…。  作者: XYZ


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終焉に向けた定めへ布石。2

神々の誕生と思想概念の遅れにより勇者と魔王が誕生しない星があった。

ルナリアナは風の噂を聞き駆け出していた。騎士領の彼のいる場所へと。


「……何故なの?」何にそのせを押されているかは分からない。しかし、彼とこのまま別れるのは嫌だと感じた。飛び込めば、彼を慕いその生活を世話するメイド達が悲しみの表情で、門の出口に向かい歩いてきていた。「…お待ちになって!何故総長様の屋敷から出ていこうとされるのですか?!」


使用人達は泣きながら語ってくれた。【北の駐屯地に赴きここに戻らないので、全員王城に雇われるように。】と、言われたらしい。ルナリアナは事情を聞きながらも止めることは出来なかった。それが彼女達の最良の職場だったからである。


騎士は死ねば財は国に没収され、使用人達はほぼタダ働きで放り出される。前騎士総長の【ドルム・ギル】もそうである。散々部下の騎士達をいたぶり、市井の裏を掌握して甘い汁を啜ってきたと黒い噂の飛び交う人物であったが、リキとの一騎打ちで負け自らの名誉だけは守れたが、奴隷同然にこき使われた下働き達は無一文で路頭に放り出された。


なんで力量差を見抜けなかったのか?彼の戦歴と王の絶大なる信頼に裏打ちされた実績を、なぜ見誤ったのか?使用人を百と従えた腐敗の中心人物は戦う前より勝敗の決していた勝負に勝てると想い、遺言も使用人達への転職先さえ遺言に残さず死んだのだ。


騎士はいつ果てるかも分からぬ存在なれば、生前遺言を書に残し、死後はその言葉通りに国が采配する仕組みなのだ。それは、王も同じ。死ねば妻子すらも遺言なくは無一文で路頭に迷う。現在は修道院の設立によりどんな存在も女子供は駆け込み寺的に仏門に逃げることもできるが、それは次の支配者の采配一つである。初代国王【フォレート・ウッド】は水の女神に選ばれし賢王なれど、次の支配者が賢王である可能性は低い。故に、女神に遺言を託すのだ。


だがドルム総長はそうではなかった。しかし、彼が執着した騎士総長という肩書とプライドだけは守られた・・・悪魔の加護でもあったかのような幸運男である。


その慈悲もリキのお陰であり、使用人が路頭に迷わなかったのも彼が偽の遺言書を捜索結果に添えたためである。


【使用人達には1ヶ月分の退職金をもって功を労う。】


たった一文、彼の性格からは有り得ないその遺言状。騎士として討ち取った存在が応と頷けば成立である。リキは王の御前で判事が述べるその文を聴き、王からの褒賞に彼等百にも登る使用人すべてを引き受けたいと願い出でた。走る少女とは反対方向に流れ歩く使用人達のすすり泣きを横目に何にぶつけて良いか分からない悲しみが込み上げる。


ーーー(……なんで辺境の紛争が起こる地に向かうの?使用人達の心痛は察しもしない無骨者だったの?!)ともかく、使用人達を代表して文句を言おうと齢十五の少女は考え直してもらおうとしか考えていなかった。ーーー


❖❖❖


【数十分前】


皆を玄関前に集合させたリキは皆に告げた。「俺はこれより北に赴き事態の鎮圧に向かう。敵は未知の兵器と異形の身体にされた人の思考を持たない存在となった。」淡々と語る言葉に使用人達は口々に恐怖を口にする。だが、リキにとっては己の故郷の再現であるはずの光景なので何の恐怖も起こらない。この大陸は神々の誕生が遅く、聖女や勇者、魔族や魔王と言う概念の誕生もない。チラリと視線を横に移せば、王と同等かそれ以上の歳の執事が主の言葉を佇んで聞いていた。「生前遺言として語る。王の赦しを得たので支度ができ次第用意した馬車で城に向かえ。お前達の再就職先だ。


その言葉に感極まった女達が啜り泣き始める。「・・・今まで窮屈な思いをさせた。お前達にとっては憎い主の敵であろうが彼の生前遺言に従う選択をしたことを俺は間違いではなかったと思う。」皆はドルム・ギルが他者を慮る存在でないことは知っていた。発見者であり決闘相手のリキの言葉を聞いた瞬間、明日売られるか否かの選択を迫られていた使用人達は涙を浮かべて咽び泣いた。


長い、長い、奴隷生活からの解放であった。最初はリキもドルムと同じ存在と警戒していた使用人も彼の人柄と押し掛けるルナリアナの天真爛漫さに、警戒する者達は居なくなり、皆がリキの為に良く働いた。愛らしい少女のワガママにまるで血の繋がった兄のように困り果てる姿もざらに見受けられた。


泣く部下や使用人の顔を忘れまいと、良く付き従ってくれたと感謝の全てを一礼に込めた。頭を下げるその仕草に皆がさらに泣き声をあげる。きっと誰が何処にいても等しく惑星崩壊をその目にするのだろうが、惨殺されて終わる最後よりも、穏やかな余韻の中で緩やかな最後を迎えてもらいたい。その中で一際声を張り上げた青年がいた。


「リキ様、俺を連れて行け!役に立ってみせるから!!」「・・・【ハオ・レイド】・・・剣技は習得できたのか?【マキ】がこの前盗み食いをして鍛錬をサボっていたと報告を受けているが?」珍しくリキが場を和ませようと口にした小話を受けて、空気を読んだかのように皆が微笑ましい視線を注ぐ。



【ハオ・レイド】・・・勇者や魔王という固定概念が生まれなかったこの世界で、リキさえ来なければ【勇者】という輝かしい栄誉を賜れた存在である。横で黙していた執事の【ウィマ・アルム】が答える。「フッ、お前の片手間へなちょこ剣技ではハエ一人殺せなんだ。」笑う執事と庭師の掛け合いが更に場を和ませる。


【ウィマ・アルム】彼もリキさえ紛れ込まなければ【魔王】に昇華するはずであった存在である。死闘を繰り広げる予定調和の北の大地で相対していたのは彼らなのだ。思想概念の誕生も復活の布石も回収できていないので、この話はFの惑星再生後に引き継がれていくのだろうが、それでも、その運命連鎖がこの世界の神々をより強くさせる修練なのだから微笑ましく二人を見守った。


数分後、執事のウィマとの最後の余韻を暫し堪能する。「・・・そろそろお前も行くがいい。ドルムのお守りは大変だったであろう?」「・・・フフフ、何の。建国当時の王に並び立つ貴方様の背中を眩しく思ったあの幼少の頃より貴男に使えるというこの人生への褒美を得る瞬間までただ長く感じただけに御座います。しかし、賜った後のなんと儚いことよ・・・死地まで共に参りましょうぞ・・・」絶対に着いていくという決意を感じて苦笑しか浮かばない。


「・・・死にに逝くだけだぞ・・・」「この老いぼれの命を散らすには最高の晴れ舞台ですよ。例えば我らの死で終わろうとも、貴男には是非、叶えてほしいことがあります。」「・・・なんだ?」「・・・また、我らの御霊が戻るのならば、貴男もその時にはお戻りいただけないかと・・・」一礼する執事に驚きの視線を向けつつも、階下で勇んで駆ける少女も見えて人の繋がりを愛おしまずにはいられない。


ーーー「・・・じゃじゃ馬に見つかると大変だ・・・隠し通路を使う・・・」穏やかな視線にウィマも微笑み返した。「・・・御意に。お嬢様の説教は長そうですからな・・・」イタズラっ子のように二人は笑んで部屋を退出するのであった。ーーー

Fの惑星再創造後、この星もまた予定調和の歴史を紡ぐが、ウィマの願いが叶ったかどうかを識る術はない・・・。

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