力の代償
「もう……魔力も、力も……残ってない……」
カイは肩で息をしていた。剣の柄を握る手は震え、膝も今にも崩れ落ちそうだった。
後方では、ノクスとエルナも倒れ込み、かろうじて意識を保っている状態だ。
だが、目前には――**最も巨大な“審判の根”**が、まるで意志ある怪物のように蠢き、最後の一撃を振りかぶっていた。
「このままじゃ……終わる……」
カイは己の剣を見下ろした。
――長く戦ってきた、相棒のような剣。そして、今まで鍛錬してきた力。
これまでの旅路を共にした、幾多の試練を乗り越えたこの武器《力》が、今――最後の“代償”となる。
「だったら……最後に一緒に、ぶっ放そうぜ」
カイは剣を逆手に構え、力を込める。
プロミネンスは本来、魔力を源とする大技。
だが今は、魔力がない。
代わりに――この剣そのものを燃やす。
「プロミネンス……ブレイカーッ!!!」
剣が軋みを上げた瞬間、炎が走った。
剣から噴き出したのは魔力ではない。武器そのものの“存在”、そしてカイ自身の力を燃料とし、絶対破壊の炎。
全身から絞り出すように放たれた火炎が、大地を穿ち、天井にまで届くほどの爆裂を引き起こす!
「うおおおおおおおおっ!!」
巨大な炎の柱が根の群れを一掃し、“審判の根”もまた断末魔のような悲鳴を上げ、焼き尽くされた。
火柱の中で、砕ける音がした。
カイの手の中で――剣は、音もなく、灰になって砕け落ちた。
「……ありがとな」
カイは崩れ落ちそうになりながらも立っていた。
静寂が戻る神殿。
ただ、空気が変わっていた。
「……力を捨ててでも、仲間を守ろうとしたか」
低く、どこか敬意を感じさせる声。
神殿の最奥、ゆっくりと石の扉が開かれ、奥から現れたのは――土の仙人。
「……認めよう。お前たちは、力の価値を知っている」
カイの瞳がわずかに揺れる。剣と力は失ったが――その手には、新たな絆と力が残っていた。
これは、力への執着と、その代償を問う――真の試練であった。




