満身創痍
灼熱の砂と激戦の名残を背に、カイたちは重い足取りで迷宮の石門をくぐった。すぐに空気はひんやりと湿気を帯び、砂の世界とは異なる静寂に包まれる。
エルナが壁に手をつき、息を整えた。「くっ……左の脇腹、さっきの衝撃で……折れてるかも」
ノクスも肩から血を滲ませていた。「あの重力のひずみ……内部から骨格が捻じれたようだ。普通の医療じゃ回復は難しい」
そして、カイは右腕を押さえている。
「……俺の剣筋が読まれていた。重力に乗せられた衝撃で、関節に違和感がある」
傷の確認と応急処置を終えた三人は、迷宮内の初層「導きの間」へと足を踏み入れる。石造りの天井からは淡い青い光が差し込み、刻まれた文様が脈動するように光っていた。
【迷宮の異常】
「……この迷宮も、ただの遺跡じゃない。生きているみたい」エルナが周囲を見回す。
ノクスの目が細められる。「内部の影が、一定の法則で動いている。おそらく監視されているな」
そのとき、カイの“魂為眼”が淡く光った。
「見える……この迷宮の“結界の流れ”だ。進む方向は……あっち」
まるで意思を持つように、光の紋様が道を照らす。
だが、カイの足がふらついた。エルナが支えに入る。
「休むべきよ、あんたも無理してるでしょ」
「いや、ここで止まったら追いつかれる……進むぞ」
【罠と幻影】
一歩進んだ先、石畳がひとりでに動き出した。
「罠だ、気をつけろ!」ノクスが叫ぶと同時に、無数の光の槍が空間に出現し、三人に向かって放たれる。
カイは咄嗟にプロミネンスを構え、エルナとノクスを守るように前に出た。「“陽炎の盾”!」
爆発的な衝撃。焼けつくような痛み。
カイの腕がはじけ飛びそうになりながらも、なんとか攻撃を相殺した。
「……一つ一つが、さっきの戦いのダメージを増幅させてくる」
そのとき、迷宮内に幻影のような声が響いた。
「鍵を求める者よ──魂を削り、心を見せよ。我ら聖獣がふさわしき者を選ぶ」
「……試練が始まったってことね」エルナが矢をつがえ、前方を見据える。
「もう戻れねぇな」カイが笑った。「行こう。俺たちが揃ってここまで来た意味を、証明しようぜ」




