情報解析
飛行艇内部、最深部。
リリスたちが掌握する特別拘束室。
エルナは、魔法による拘束具──透明な魔力の手錠と、足枷で縛られ、椅子に座らされていた。
周囲は冷たく、無機質な空間。
そして——彼女の前に立つのは、美しき悪魔、リリス。
「ふふ……さあ、もう一度始めましょうか。
エルナちゃん?」
リリスは微笑みながら、手にした赤い水晶を掲げた。
それは、《記憶探査宝珠》。
対象の深層意識に侵入し、封じた記憶すら抉り出す禁忌の道具だ。
エルナは蒼白な顔で首を振った。
「……もう、やめて……!
リクのこと、これ以上……!」
しかし、リリスは容赦しない。
「ダメよ? だって、あなたの中にまだ“鍵”があるんだもの」
にこやかに言いながら、リリスは宝珠をエルナの額に軽く触れさせた。
──発動。
■ スキル発動:《メモリー・スティール》
エルナの意識が一瞬、真っ白に弾けた。
彼女の内側に沈んでいた記憶の断片が、次々に浮かび上がる。
《リクがスキルを創る光景》
《リクが魂を削って結界を展開した瞬間》
《リクが未来を見据えて語った“仲間を守る誓い”》
その一つ一つが、エルナの心を切り裂く。
(やめて……やめて……お願い……!)
必死に抗おうとするが、宝珠から放たれる精神圧に抗うことはできない。
リリスは、エルナの記憶を器用に拾い上げながら、口元に笑みを浮かべた。
「……なるほど。
リク=フォルナ……あなた、本当に恐ろしいわね」
彼女が読み取ったのは、リクが単なる“スキルクリエイター”ではないこと。
■リクは戦闘時に即興でスキルを創り、状況に応じて自在に改良する。
■リクの“創造”は、ただの攻撃技術ではなく、《現実そのものの書き換え》に及びうる。
■未だ成長途上にありながら、すでに規格外の危険性を秘めている。
リリスはため息をついた。
「……本当に、殺すのは惜しいわ」
彼女の瞳が妖しく光る。
「できるなら……従わせたい。
私たち《オーダ・セラフィム》の“道具”として──」
エルナはうつむき、震えていた。
リリスは、そんなエルナの髪を撫でるように触れながら、囁いた。
「でも安心して。あなたも、リクも……
これから、私たちの“理想”に奉仕してもらうだけだから」
冷たく甘い声。
──その瞬間。
エルナの胸の奥で、何かが小さく砕けた。
(リク……ごめん……)
暗闇に沈む意識の中、エルナは涙を零した。
◆
そして、リリスは得た情報を仲間たちに伝えるため、静かに通信魔法を起動した。
「──こちらリリス。
情報確保完了。リク=フォルナは、緊急危険対象《オリジン級・最優先捕縛対象》に格上げするべきよ」
通信の向こうから、冷徹な声が応じる。
『了解。即時、作戦を修正する。リク捕獲班、増強へ。』
リリスは微笑みながら、エルナに視線を戻した。
「さあ、これでリクくんを“確実に”追い詰められるわ──」
エルナの絶望を背に、リリスの声が響いた。




