第49話:ギルドと転生者
翌朝、登録情報更新のために、俺は冒険者ギルドを訪れた。
「アズ?!」
受付嬢と話している子供を見て、思わず声を上げてしまった。
幼少期のアズと同じ白い服を着て剣を背負った子供。
その服は、アズが夜間訓練や野外実習へ行く時にいつも着ていたものだ。
背負っている剣は、攻撃魔法が使えないアズのために、魔工学部が開発して俺が攻撃魔法を付与したものだ。
それらを装備している青い髪の少年は、受付嬢と話している時の仕草も笑い方も、アズによく似ている。
俺はその子供がアズに思えてきて、歩み寄りかけたところで1人の老猫人に先を越された。
「おぉ……その姿は! 勇者アズール様の転生者様ではないですか?!」
老猫人は、かつてアズと共に魔王軍と戦った冒険者の1人だ。
20年前はギルド長だったけど、今は引退して息子に任せているらしい。
アズが勇者として活躍したのは7歳の誕生日を迎えた頃で、受付前にいる子供はその年頃に近かった。
「はい。でも前世の記憶は無いので、新人として扱って下さい」
本音を隠すジャパニーズスマイルを浮かべ、そう告げたのは転生者イオ。
その場にいた人々は誰も気付かなかったけど、現世の記憶は仮面の下の感情を読み取る。
イオ、めちゃくちゃ嫌がってるぞ。
そこから逃げようとしないのは、冒険者になる目的ゆえか。
「承知しました。しかし転生した御方なら、アズール様の剣技を再現できる筈。いつかこの爺に見せて下され」
「分かりました」
爺さん無茶ぶりすんなよ。
イオ、微笑んでるけど内心は溜息ついてるぞ。
「これで手続きは完了しました。まだ学生とのことですので仮登録ですが、クエストは受注可能です」
「ありがとうございます。じゃあ、クエスト板を見てみますね」
受付嬢は爺さんのテンションなんか無視して平常運航だ。
イオは仮登録カードを異空間倉庫に入れて受付を離れて歩き出したところで、俺と目が合う。
声をかけようとしたところで、今度は俺が爺さんに捕まってしまった。
「なんと! エカルラート様の転生者様もいらっしゃった!」
「あ~……どうも。久しぶり」
テンション高い爺さん、誰か抑えてくれないか?
しかし誰も割り込んでくれないまま、爺さんの昔話に花が咲いた。
イオはその間にちゃっかりクエストを受注して、建物の外へ出ていってしまった。




