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【完結】ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された  作者: BIRD


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第17話:転校手続きとゲームPV

挿絵(By みてみん)


春休みも終わりに近い日、星琉は高校の担任に転校の報告に行った。

元々就職コースの予定だったので3年生は就活優先の自由登校だったが。

イリアと同じ学園に通う事になったため、転校手続きをする事になった。


「プルミエ王立学園か。異世界の学校に転校なんて君が初めてだよ」

書類のやりとりをしながら担任の中村は言う。

「それにもう就職とは。在学中に内定する事が難しいこの時代に、SETAのような大会社に入社出来るなんて。素晴らしい幸運だと思うよ」

教え子から大会社就職者が出るなんて感動だ、と喜ぶ中村に星琉は笑みで応える。

「…ところで、この社員証の役職:勇者って何だい?」

社員証の役職がおかしな事になってると気付いた人、兄に続き2人目。

星琉が苦笑して説明しようとした時…

「セイル〜っ!!!」

ガラガラッ!と引戸が勢いよく開いた。

ツンツン立った茶髪、耳にはピアス、どう見ても校則に引っ掛かりそうな人物が乱入。

「ソーマ?」

それは星琉が知ってる相手だった。

入ってきたのは、鉄人戦で星琉と決勝を争ったプレイヤー・ソーマこと白井奏真。

20歳なので星琉より3つ年上だが、ゲーム仲間だからタメ口で話していい事になっていた。

「こ、こら白井!OBが勝手に校内に入るな!」

慌てて中村が叱るが、彼は聞いちゃいない。

「何だよお前、あのPV!」

「え?…あ〜あれ、もう流れてるのか」

何の事か理解した星琉。


『Sword of EarthiaⅡイメージキャラクターは前作のトップランカー・セイル』

そんなナレーションと共に、新作予告として星琉と騎士団による100人斬り動画が出たらしい。


「それに何?SETAの社員として異世界派遣とか。羨まし過ぎるだろぉ〜!」

俺なんかまだバイトなんだぞ〜と吠える白井。

「どうでもいいが静かにしろ白井。青野は今手続き中だ」

ファイルでペシッと白井の後頭部を叩く中村。

「ん?手続き?就職したから退学か?」

「んなわけあるか!」

「転校だ転校!」

ボケる白井に中村と星琉がツッコミながら手続きを進めた。


転校の手続きが済んだ帰り、白井に誘われた星琉は馴染みの場所に顔を出す。

星琉が異世界へ行くきっかけになった店。

SETA直営のアミューズメントパーク【Carnival Box】だ。

カボと略する人もいれば、CBシービーと略する人もいる。

ゲーム会社直営のいわゆるゲーセンのようなもので、新作が入るのが早いのが魅力だ。

日本の主要都市にあり、対戦ゲームはSETAの通信網で全店舗繋がっているので、離れた地域のプレイヤーとも遊ぶ事が出来る。


「あ!セイルだ!」

着いて早々、そこにいた人々に気付かれる。

鉄人戦で勝利した場所だし、100人斬りでも勝利した場所なので顔は知られまくっていた。

「観たよPV!あれ異世界でロケしたんだってね!」

「異世界アーシア、VRと同じ動きが出来るって?」

常連たちが次々に寄って来る。

「んじゃ俺は仕事入るから」

白井はここのアルバイト店員で、星琉に声をかけるとバックヤードに入って行った。


星琉は馴染みの人々と談笑していたが、店内に設置されている販促用のモニターを見てギクッとした。

『Royal DanceⅡ、制作開始。親しい人とセレブなダンスタイムを…』

新作告知のナレーションが流れ始める。

「へぇ、Royal Danceも新作出るんだ」

人々はモニターに注目した。

(…や、やばい…)

コッソリ退散しようとした星琉だったが…

「えっ、あれセイルじゃん」

…バレた☆

「相手の女の子誰?」

「アイドルにあんな子いたっけ?」

青い騎士服の星琉と、赤いドレスのイリアのダンス動画だ。

「………」

星琉はそろ~っと後ずさりして出口に向かったが…

「何だよセイル、あのPVは~!」

…惜しい、制服に着替えて戻って来た白井に見つかった。


その後、白井やゲーム仲間たちにプルミエ王国での出来事を話す事になってしまった。

どうせSword of EarthiaⅡが稼働し始めればバレる事だし、この際開き直る事にした。

「くぅぅぅ~っ、あの時俺が勝ってれば姫様に逢えたのに!」

悔しがる白井。

ふと星琉はプルミエ国王と瀬田の言葉を思い出した。

『地球から特別参加する者が優れた能力を見せたら王国の騎士団にスカウトしたい』

『新卒者でも職にあぶれる時代だから、プルミエ国で働く派遣社員になってもらおう』

鉄人戦2位の白井は優れた双剣使いのプレイヤーだ。

高校卒業後2年経つが未だバイトしか仕事が見つからないという。

彼も異世界派遣したらいいのではないか?

しかし今の段階で勧誘するワケにはいかないので、後で瀬田に白井の事を話そうと考えた。


王城の自室に戻ってから、星琉は瀬田に連絡してみた。

「Carnival Boxアルバイトの白井君か。いいかもしれないね」

ボイスチャットの画面の向こうで、瀬田は白井のプレイデータを確認して言った。

「異世界派遣部の主任は渡辺君だから、彼にも話してみたらいいよ」

「分かりました」

その後、渡辺にも同様の相談をする星琉。

「そうだね。人員は増やしておきたいし、陛下に提案しておくよ」

そして渡辺から国王ラスタへと話は伝わる。

まずはその者の力を見てみたい、という事で白井スカウト前準備が密かに進められるのだった。

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