合流
アンペンダープは粉々に砕け散る。
俺はリントブルムと共にアイラとフィールレイの元へ着地した。
「ハヤテ……」
アイラは泣いていた。
フィールレイは泣きこそしていないが、ホッとしているようだった。
「やはり英雄は奇跡を起こす、ということか」
フィールレイの言葉に俺は苦笑する。
「英雄なら敵に丸飲みになれるなんて間抜けなことをしないだろ」
多分、今は興奮しているから、痛みをあまり感じないが、体は酷い状態だろう。
「今すぐにおぬしを抱き締めたい気持ちじゃが、早く行かねばならぬところがあるじゃろ?」
「そうだね」
アイラとフィールレイもリントブルムに乗った。
「…………アイラ、ごめん。リザが君に酷いことを言ったね。俺の責任だ。リザを許してやってくれ」
「構わぬ。今回はハヤテや儂が悪い。怒られて当然じゃ」
「じゃあ、二人でたくさん怒られようか」
アイラは「そうじゃな」と笑った。
「にしても久しぶりじゃな、リンドブルム。それにその姿、どうしたんじゃ?」
『我にも分からん。しかし、以前より強い力を感じる。こうやって話すのはお前の城で戦った時以来だな』
リントブルムに言われて、思い返すと確かにアイラとリントブルムはニアミスばかりだ。
俺たちはリザを発見した。
リントブルムが地面に着地する。
俺はアイラに手伝ってもらって、リザのところへ辿り着く。
その瞬間、リザが抱きつく。
怒られると思った。
覚悟した。
しかし、リザからはなんの言葉もなかった。
「わぁぁぁぁぁ!!!!!」
ドミードとの一件、自分が奴隷に戻るか戻らないか、という時だって、リザはここまで泣いたりはしなかった。
「ごめんよ。本当にごめん」
リザに言葉はなく、ただ声を上げて泣いている。
「まったく今回は本当に色々と覚悟したぞ」
アイラは大人の姿から子供に戻る。
ナターシャも泣いていた。
立ち上がることが出来ないようで座り込む。
「アンペンダープはどうなったの?」
パトラティアが尋ねる。
「リントブルムの攻撃で粉々になったよ。これもう……」
――全てが終わったと思った時だ。
アンペンダープの残骸に異変が起きる。
「なんだ!?」
残骸の周囲に黒い霧が発生していた。
「まだ終わりじゃないのかよ」
「………………」
リザは無言で俺の服をギュッと掴んでいた。
恐怖からではなく、俺がアンペンダープと再び対峙するのを止めているようだ。
やがて霧が晴れるとそこにいたのは異形の怪物だった。
二足歩行ではなくなり、四つ足になっている。
それに先ほどより巨大化していた。
『ウォォォォォォォォ!!!』
咆哮で大気が震え、突風が発生する。
「ついに本物の化け物になりおった…………」
アイラは悲痛の表情だった。
逃げる、という判断が正しいのだろう。
いくらリントブルムがいるとはいえ、俺もリザたちもボロボロだ。
撤退しよう。
そう思ったのだが……
「どうやら逃がしてはくれんようじゃな」
アイラは呟き、再び大人の姿になった。
多数の飛行生物がこちらに接近する。
飛行型の魔物のようだ。
大きさはワイバーンの半分ほどだが、数が多すぎる。
「やるしかないか…………」
そう思った時だった。
バン、という爆発音のようなものが複数聞こえた。
前ではない。
後ろからだ。
「な、なんだ!?」
確認する前に何かが飛んできて、魔物に着弾する。
「砲撃? でも、誰が……?」
振り向くとそこには船が浮いていた。
「あれは鳥人族の空船よ! でも、なんでここに?」
パトラティアが言う。
『こちら、航空船ヒューベリアの船長、ウエッセ。緊急時と判断し、許可なく、砲撃したことをご容赦ください』
スピーカーから出されるような声が聞こえてきた。
直後、二回目の一斉掃射が放たれる。
「どういうわけか分からんが、味方じゃな。それにしても相変わらず、あやつは無茶をするの」
アイラは笑った。
二度目の砲撃、その砲弾の一つに乗っている人影がある。
まさかとは思ったが、アイラの言葉でそれは確認に変わった。
砲弾に乗っていた人物が飛び、刀を抜いた。
「魔陰流特式ノ一『マストビ』……多連撃!」
懐かしい声が響いた。
砲弾と斬撃が魔物を全滅させる。
女剣客が俺たちの前に着地する。
俺たちの頼もしい仲間だ。
「おぬしが儂を助けた時(※第127部分『仲間がいる』参照)のことを思い出したわい。いつも絶妙なタイミングじゃの。まさか、おぬし、こういったタイミングを狙っての登場じゃあるまいな?」
アイラは笑いながら言う。
「異変に気付いて、急いで駆けつけたのにそんな言い方は酷くないですか!? 私的にはもっと平和的な再会が良かったんですけど!?」
香はそう訴えた。




