第九話:森の異変と片鱗と
この世界はあまり大々的に魔法は使用しないのか、アレク達がそうなのか、なかなかバトルが地味かもしれません。
誤字脱字等、ミスがあるかと思いますが、どうぞご清覧お願い致します。
アレクたちは王国兵士ボイルに連れられて"禁止区域"に入ろうとしていた。どうやら、報告内容どおり森自体が拡大しているようだ。
街道だった道には木の根が張ってしまい、所々隆起している。
(しかし、何で森がこんな速さで拡大しているんだ?魔力が森全体を覆っている影響にしては、その規模がデカすぎる。...魔力の影響かモンスター化している植物が多数見受けられるようだ)
「なぁボイル。お前はこの森全体を覆っている魔力の原因は何だと思う?」
「あぁ、ガレットさんは知らないんでしたね。元々禁止区域には最奥にある植物が発生させている魔力が充満しているんですよ。
ただ現在、何故森全体を覆っているのかを見る為に俺が派遣された感じですね。
...で、ガレットさんの問いに対してだと、『毒の影響で最奥の植物が暴走している』のが、落とし所かなと思います」
(なる程、毒の影響で暴走と考えるならば合点がいくな。
この森自体の急成長と、一部のモンスター化。これは早いとこ解決しないとヤートだけの問題では済まされないな。)
その時森の奥からガサガサと何かが来ている音がしている。それも複数で、しかも速そうだ。
「なんだ!?」
「分かんないですけど、囲まれても良いように背中合わせになりましょう!」
ボイルさん達は迷う事なく戦闘態勢に入った。この決断の早さと淀みない動きが王国兵士特有のモノかも知れない。
「足音的に犬か猫のような四本足の動物みたいです」
アレクは村で培った観察眼で様子をみる。
「...ただ、動きがぎこちないのが謎ですね」
続けて犬であれば群れで襲う為、編隊を組む。猫であれば、じっと身を潜め獲物の動きを観察するのだと、アレクは言う。
ただ、今回アレク達を狙っているのはそれぞれの位置もバラバラで落ち着きがないらしい。犬とも猫とも思えないようで、様子がおかしい。
ギャァアアア!と悲鳴に近い叫び声を上げながら、アレク達の前に現れた生き物の姿を見て、驚愕した。
姿は狼に近い魔物である"アークウルフ"だった。しかし、頭にアンテナの様なキノコの様な生物とも言い切れない形容し難い物が付いている。
「な、なんだあの魔物は!?アークウルフじゃないのか!?どんな攻撃をしてくるかも分からんから下手に動くなよアレク!」
「はい!」
とボイルとアレクが話している隙にアークウルフ?が一匹ボイル目掛けて襲いかかってきた。
やはり動きがおかしい。体の動きがバラバラなのに普段よりかなり速く走ってくる。
口を大きく開けて牙を剥き出しにし攻撃を仕掛けてきた。どうやら、足を狙っている様だ。
ボイルは魔物の速さに反応し一刀両断するかの如く剣を振り下ろした。
ギャン!と一声上げた後、アークウルフ?は事切れた。
ボイルがほっと息をついた矢先もう一匹が今度は飛び掛かってきていた。反応が遅れたボイルを助けようとしたガレットに対しても、また一匹ガレットの足元を狙って襲いかかってきた。
「危ない、ボイルさん!」
反応できたアレクがフォローに入る。
「何だよ!この統率のとれた動きは!息つく島もねぇ。
ボイル!アレク!大丈夫か?」
「えぇ、俺はアレクが反応してくれたお陰で大丈夫です!」
なんとかこの状況を打破なければ、調査どころでは無い。ガレットは対応しながらアレクに相談をした。
「アレク!お前、バリアは張れんのか?一旦距離を置きたい」
予想以上の波状攻撃で後手に回ってしまった状況を変えようと思考を繰り返していると何か思いついたのか、
「...ボイルさん!ここら辺少し燃えても構いませんか!」
「あぁ?ここはまだ大丈夫なはずだ!しかも森は急成長をしているから直ぐに分からなくなるはず。...この状況を打破出来そうなら何だってやってくれ!」
「よっしゃあ!じゃあ、やりますよ!」
アレクは魔法陣を展開した。すると瞬く間に三人を覆う様に半透明のバリアが出現した。
「もう一丁!」
アークウルフ?達は攻撃の手を緩める事なくバリア越しに襲いかかってくる。
それを見越したのかアレクは半径十メートルをバリアで囲んだ。アークウルフ達はバリアとバリアに挟まれた形になった。
「二人とも!耳を塞いで下さい!」
「「えっ!?お、おう!」」
二人が耳を塞いだのを見届けた後、バリア内で爆発が起こった。
"レイジングフレア"
本来の威力であれば、半径20メートルに及び炎が包み込む範囲魔法であるが、今回のケースではバリアとバリアに挟まれる形であった為、威力が凝縮され爆発が起こったとされる。
魔法を放ったアレクは肩で息をする程疲弊しており、ぐったりしていた。
パラパラと周囲が焼け焦げ、炭化した木が崩れ去っていく。勿論、アークウルフ達も生きておらず、脂で空気がベタベタと肌に張り付くようだ。
バリアを解いた後、アレク達は消火活動をしながら、何故アークウルフ達が奇妙な行動をしたのか考えていた。
するとガレットがアークウルフの死体を見ていた時である。死んだはずのアークウルフの頭が僅かに動いた、と思ったら頭からセミのような寄生虫が出てきた。
どうやら外に出ていたキノコの様な部分は焼けてしまったが、本体は寄生元の肉体の中に入っていた為、即死は免れた様だ。
しかし、爆発による衝撃波に耐えられるほど頑丈では無かったのか、外に出た途端に事切れた様だった。
「一応、サンプルとして持って帰っておくか。...おーい、この寄生虫みたいなやつサンプルとして持ち帰るが、他に持ち帰った方がいい物はないか?」
「あぁ、ありがとうございます。では寄生虫が侵入していた付近の肉もお願いします」
おう、と返事をしたガレットは再度採取をしながら、アレクの魔法についてふけっていた。
(それにしてもこの魔法の威力は...いよいよ覚醒し始めてきてるな)
・・・・・・そして
「...では、いよいよここから禁止区域に入りますので、更に気を引き締めて行きましょう」
サンプルを採取したアレク達はいよいよ禁止区域に入って行った。
ご清覧ありがとうございます。
次話からヤート編の核心に迫って行きます。
どうぞ、次話も宜しくお願い致します。