4 春でも朝は意外と寒い
目の前の非現実で幻想的な現実に対してしばし呆然としながらも、俺は高揚感に満ちていた。
(なにひとつ理解できないが、、、これはワクワクする!)
もう少しこの謎の洞窟の奥に進んでみたいが、そもそも池にいた時点で既に深夜だ。明日も仕事なのだから、眠れなくても、多少は休まなくてはならない。
後ろ髪引かれながらも、踵を返して、歪んだ空間がある方面へ歩を進めた。
果たして、この空間に飛び込めばいつもの現実世界に戻れるんだろうか?
まあ考えてもしょうがないので、仮に戻れなかったとしてもそれはそれで良いやと考えながら、俺はその揺らぐ空間に身をゆだねた...。
__________
「あーた、こんなところで寝てたら風邪引くよ?」
意識を取り戻した俺がいたのは池のほとりだった。朝日で池の水面が薄暗くきらめいている。ポケットの携帯を見ると、時刻は6:02だった。
戻ってこれたのか、、、。
周りを見渡すと近所のおばちゃんが箒を持って家先を掃除していたり、犬を散歩させているのか犬に連れられているのかわからない老人や、周りを見向きもしないランナーなどがいる。
横になって寝ている人もいる。春だからか、ホームレスも引っ越してきたようだ。
「すいません。ありがとうございます」
そう呟いて、俺はひとまず自分のアパートに戻ることにした。
眠ることはできそうにないが、2時間程度横にはなれそうだなと思ったが、不思議と眠気や疲れは感じず、むしろ普段より身体の調子が良いように感じられた。
何かを蹴っ飛ばしたりしたから、良い運動になったのだろうか?
そんなことを考えながら、さっきまでの洞窟での出来事をゆめうつつに脳裏に浮かべながら、1日ぶりに自分の部屋のドアを開けたのだ。