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はじまりは初恋の終わりから~  作者: porarapowan
初恋のおわり
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14.義母マルガリータ--02

 いつだって義母マルガリータが、「()()()()を思って」と言いながらイリューリアを外に出さないように出さないようにと仕向けてきたと賢しいマーサとルルーは気付いていた。


 家令のジェームスだって気づいているだろうが、言葉にする事はできなかった。


 ()()は旦那様の奥様。


 イリューリアにとっては義理とはいえ()()にあたるのである。

 邪険にできる筈も無い。


 賢い筈の旦那様は一体全体何だってこんな女を後妻に選んだのか召使一同首をひねったものである。

 確かに美しいのは美しいが、無くなったイリューリアさまの母エマリア様と比べればどうということはない!


 さすがにイリューリアさまの学園への手続きを止めて引きこもらせた件は旦那様もひどくお怒りだったが、その時は肝心のお嬢様自身が外に出る気力をなくされていたことと、自分を庇ってくれたお義母様を虐めないでと旦那様に泣いてすがられた事で離縁にまでは至らなかったけれど…。


 旦那様は、マルガリータ様を別邸に追いやり社交の場への同行の一切を禁じた。


 奥様はそれ以来、公の場には一切、出させてもらえてはいない。

(あれは召使一同英断だったと心の中で皆、拍手したものである。)


 しかし肝心のお嬢様の心は無垢で、まだ幼く義母のマルガリータ様になついていた為に自分のせいでお義母様が追いやられたのだと、またも自分を責めて嘆いていらした。


 賢いはずのお嬢様なのに、無垢すぎるのか、あの義母の悪意には気づかない。

 まるで何か暗示か呪いでもかけられているようだと召使たちは思っていた。


 まぁ、呪いなんて物語の中だけの話だろうけれど…と思いながらも、純真無垢すぎる自分達のお嬢様が哀れでならなかった。


「お義母様、いつもご心配かけて申し訳ございません。でも私も公爵家の娘として閉じこもってばかりではいけないと思ったのです。こんな私でも自分の悪いところはなおそうとこの三年間ずっと頑張ってきましたし…国王陛下や王妃様にまでお気遣いを頂いて…来月、行われる園遊会でお祖母様(ばあさま)の祖国でもあるラフィリル王国からの賓客の案内役を仰せつかったのです。私、これを機に少し前向きに頑張ってみようかと…」


「まぁあ!何てこと!とんでもない!今までろくに外にも出てこなかった貴女がいきなり案内役なんて!無理にきまっています!」

 マルガリータは、舞台女優のような、大袈裟な身振り手振りで額に手をあて叫んだ。


(引きこもらせたのは貴女(あんた)だろ~が!)とその場にいたメイド達は心の中で吐いた。

 自分が社交界に出られなくなったからと言ってお嬢様まで巻き込むなと召使たちは言ってやりたかったがぐっとこらえる。


 いきなり完全否定されたが、イリューリアも今回ばかりは義母の言う事を聞いて引きこもる訳には行かなかった。

 なんと言っても、今回の案内役は国王陛下からの頼まれごとである。

 そして何より自分がやってみたいと感じたお役目なのだ。

 小さい頃から憧れていた祖母の故国、憧れの伝説の国ラフィリルからの賓客のお相手である。

 はじまりの国と言われたり()()()()と呼ばれたりと神秘的なイメージを持つ祖母の祖国はイリューリアにとっては憧れの夢の国である。

 そんな国の御客様の案内役など嬉しいに決まっている。


 自分が、その役に相応しいとは思えないが、 相応しくあれるように努力あるのみなのである。


「ですが、これは国王様からのお達しで断ることはできないのですよ。お義母様」


「ああ、可哀想に!まだ社交界になじめてもいない娘を!大失敗して皆に笑いものにされ、お父様にも迷惑がかかるのが目に見えるよう!」

 マルガリータは、ことさらに『失敗』だの『笑いもの』だのという言葉を強調して大袈裟に言いたてる。


『お父様にも迷惑がかかる』という義母の言葉にはさすがにイリューリアも不安にはなったが、自分を心配しての言葉だと自分に言い聞かせ、安心してもらわないとと、自分自身にも言い聞かせるように言った。


「お義母様、私、そうならないように努力いたしますわ」


「イリューリア、私は貴女の事を本当に心配して言っているのですよ?三年前のあの時だって私は貴女を庇ってあげたでしょう?せっかく悪意に満ちた外界から貴女の事を守ってあげたのに!」


「は、はい。もちろんお義母様が私を心配して下さって下さっているのは分かっておりますわ!お義母様の優しさを疑った事などございませんもの」

 それはイリューリアの本当の気持ちだったがマルガリータには伝わらなかった。


「そう…分かっていて、尚、この母の言う事を無視するならしょうがないわ!後から泣いても私はもうなぐさめませんからね!」とそう憎々し気に言い残してさっさと別邸に帰って行ったのだった。


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