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聖夜は恋の雪に埋もれて  作者: 桜坂ゆかり
第1章 12月22日まで
9/15

瑠璃のプレゼント選び

 翌朝、いつものように奏と二人で登校したけど、お互い気まずい空気だった。

 奏も私も、土曜のことについては一切触れぬまま、学校への道を歩く。

 私としても、瑠璃とお付き合いするのかどうか、聞きたかったけど、聞けるはずもなかった。




 その後、瑠璃にもいつも通り会ったけど、普段と何ら変わらぬ様子だった。

 それは、奏や鉄平君もまた、同じだ。

 私も表面上は、普段通りの様子に見えるようにつとめていたけど。




 その日の放課後、瑠璃が話しかけてきた。

「今日は、私んち寄っていってよ。ちょっと相談したいことがあるんだ」

 相談したいことって、まさか……。

 私は「うん、いいよ」と答えると、瑠璃の家へと一緒に向かった。




「これこれ。これを見てくれたまへ~」

 瑠璃の部屋に落ち着くと、仰々しい言葉遣いと挙措動作とともに、瑠璃が何かを持ってきた。

 見ると、どうやら分厚いカタログのようだ。


「奏君へのクリスマスプレゼント、時計にしようと思うんだ。土曜に本人から聞いたんだけど、奏君、朝が弱いんだってね。目覚し機能が優れてるヤツがいいかな?」

 たしかに、奏は朝が弱い。

 普段から両親に起こしてもらっているらしいけど、それでも起きないことすら、たまにある。

 そんなときは、私が奏の家にお邪魔して、奏の部屋のドアをノックする。

 そして「早くしてよ。遅刻しちゃうよ」と言うと、中から「ああ、うん」と低い声がし、しばらく待ってようやく眠そうな顔の奏が出てくる……という流れになるのだった。


「でね、麗はどれがいいと思う?」

 私はカタログを覗き込む。

 そして、奏が好きそうなのを一つ見つけ、指差して伝えた。

「こういう、シンプルなのが奏は好きかも。色は、無彩色がいいかな」

「む、むさい?」

「無彩色。白、黒、グレー系の色のこと。奏って、そういう色が好きだから。これなんか、良さそうでしょ」

「ああ、ほんとだ! 黒でシックだね~。奏君のクールなイメージにぴったり!」

 たしかに、奏はたまにクールかも。

「いや~ありがとね~。さっすが幼馴染だけあって、麗は奏君に詳しいね」

 幼馴染……。

 そうだ、奏にとって、私はそれに過ぎないんだ。

 私にとっての奏は、単なる幼馴染ってだけではなく……もっと、大切な人。

 でも、そのことを言う勇気はやはりない。

 もし言ってしまうと、もう幼馴染にすら戻れないから。


「あ、じゃあ、こっちのはどうかな? これも黒でしょ」

 瑠璃が別のを指差す。

「ああ、うん。こっちのほうが、少し大きめで、文字盤が見やすくていいかも」

「じゃあ、きっまり~! このおっきくて黒い時計さん、私の恋を叶えてね」

 そう言って立ち上がると、くるりと一回転する瑠璃。

 スカートがふわりと舞う。

 これが許されるのは、瑠璃みたいに可愛い子だけかも。

 私がやると、かなり寒そう……というか、「ぶりっ子やめろ」で終わりそう。


 ……全く心が晴れないけど、こんなに器が小さいなんて、良くないかな。

 奏にも瑠璃にも、そして鉄平君にも申し訳ない。

 もしも、奏が瑠璃とお付き合いを開始しちゃうなら……鉄平君とお付き合いしようかな。

 ダメダメ!

 そんな理由で付き合っちゃ、鉄平君に失礼。

 でも、もし断ったら……。

 遊園地デートに誘ってくれた際に見た、しょげる鉄平君を思い出す私。

 あんな風な姿、見たくないなぁ……。

 だけど……。


「いや~、麗のおかげで助かったよ~。奏君、喜んでくれるといいな」

 瑠璃の言葉で我に返る。

「う、うん、そうだね」

 そう言えば、奏へのクリスマスプレゼントとして、私はお菓子を作ろうとしていたんだった。

 もし、瑠璃とお付き合いすることになっていたら、プレゼントを変更しないと。

 親友の彼氏に、手作りお菓子を渡すとか……まずすぎる。

 



 その後は、たわいもない雑談をして過ごした。


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