第四章 ランチタイム、ブレイクタイム、キントレタイム
キンコーンカーンコーン、キンコーンカーンコーン。
授業の終わりを告げる教会の鐘。
「はい、今日はここまで…続きは…。」
パタッとノートと教科書を閉じ、筆記用具は筆箱の中へ。
鐘が鳴ればお昼休み‼先生の声も聞こえない。
「では次の授業は教科書の64ページからにしま…。」
先生の言葉も半分にあたしは急いで階段を下り、食堂を目指す。
「アリアさーんまだ、授業は…。終わって…。ないんです…けど。」
後ろからイオ先生の声聞こえるけど、鐘が鳴ったら昼休みなのである。
理由なんてないし、決して早弁とかではない。
というかチャイムなったし。
問題ないのである。
そして向かう先は食堂一直線。
「おばさんいつもの。」
「あいよ。」
「今日も一番乗りだね~。」
肉と野菜がごろごろ入ったシチューみたいなのをかき混ぜながら答えるおばちゃん。
「えへへ、走ってきちゃった。」
「いつも一番だけど、ほんとに授業聞いてるのかい。」
おばちゃんは心配してるのか、残りの在庫数を気にしているのか、あたしの後ろに並んだ列を見ながら問いかける。
「いやーまー。ほどほどに…ね?」
「ほどほどって何だい。勉強は学生の本分だろ?」
「えへへー。」
笑ってごまかすあたし。
インク壺ぶちまけて寝てたなんてとても言えない。
消えてるよね跡?
それで声かけてきてるわけじゃないよね?
マリアとイオ先生に見てもらったから大丈夫だとは思うけど…。
「ほいよ。いつもの揚げパン。」
「ありがと。」
限定20個の食堂の揚げパン。
紙の包の中でアチアチの揚げパンが飛び跳ね、油汚れを包装紙ににじませる。
「あちっ。」
「気をつけな。それ、今、揚げたばっかだから。」
我学園の食堂のすぐなくなる人気商品なのだ。
ただできたては熱い。
このまま、口の中に突っ込んだらやけどするだけである。
手の上でお手玉して、冷まして、フーフーして、最悪は背中の羽で仰いで何とかするのである。
そして、すでに後ろには筋肉自慢のわが校の大量の学生。
「おばちゃん、揚げパン。」
「あいよ。」
「今日、熱くない?」
「いつもより気合が入ってるからね‼」
こういうのって、たいてい男子に人気あるんだよねー。
あと、運動部の筋肉もりもり系天使。
カロリー高いし、エネルギー消費いい人には人気なんだよね。
まあ、あたしはそういうのあんま気にしないんだけど。
そして、この後は天上庭園で雅なランチの予定なんだけど…。
一向に列が進まない。
もう揚げパンは手に入れたのに。
運動系、エネルギッシュ天使たちが、筋肉を魅せあって進む場所も隙間もない。
「ホント、そういうのはよそでやってよね。」
ここジムじゃないから。
思わずそう言いたくなるほど、視界に入るのは筋肉、筋肉、筋肉ばかり。
下からならいけるかなとおもってしゃがんでみたけれど。
またの下からもとても通れそうにない。
揚げパン争奪戦はまさに戦いなのである。
「こりゃ、ムリだな。」
筋肉、ひしめき合う中では一歩も前に進めない。
仕方ないので…。
「飛んじゃいますか。」
天使の特権そのいちっ。
天界では飛行魔法が使えます‼
「失礼しまーす。」
「ん?おう、まかせろっ。見ろこれが俺の上腕二頭筋。」
その自慢の上腕二頭筋にぶら下がり、その上に逆上がりの要領でくるっと着地する。
「ん。ちょっと汗臭いね。」
ついでにあたしはやさしいので、ちゃんと感想も述べてあげる。
「んえ?匂う?」
「匂う。」
「おかしいな…。清涼スプレーかけたのに…。」
二人の間に流れる沈黙。
「…。いや、別に筋肉品評会に参加する気はなかったんだけど…。気にしてたらゴメン。」
「え?筋肉見たいわけじゃないの?何する気?」
「ちょっと混んでるから、飛ぼうと思って。」
屈強な学生の顔を直視して、そうつぶやくあたし。
「え?飛ぶの⁉」
一周、遅れて反応してくる筋肉さんにこくっと頷くあたし。
「ここから⁉」
「いや、だってあなたが一番、背が高そうだし。筋肉の土台もしっかりしてそうだし。」
「それ、褒めてるのか?」
「もちろん。最上級の褒め言葉だよ♪」
背の高い屈強な男の子の肩によじ登り、ダイブ。
屈強な筋繊維で弾みをつけ、ピュンと屈強な男たちの上をあげぱんもってひとっ飛び。
「手のばされてもあげないよ~。」
限定のやつだし。
そして屈強な男たちをかわし華麗に着地芸を決めると、外に続く扉を開ける。
「そもそもこれあたしのだし。20個しかないからあげーない。」
そういって扉をしめるあたしなのだった。
☆☆☆
「もちろん。最上級の褒め言葉だよ♪」
「うれしい?」
「うれしくない。」




