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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
1章 俺たちマーモット

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7マモ デカゾンビから逃げろ!

「アバババ」


 ポコン、ガツン、むぎゅう、まもん


 さらに加速するバギーに耐えられなくなり、小柄な体躯のマーモットは簡単に車体にむぎゅうと体を押し付けられてしまう。しっかりと膝立ちで構えているデビルアーミーに感心しちゃうよ。レベル2なのに高性能だなぁ。人間だからか。人間の方が有利なところはあるなぁ。


「大丈夫です。隅っこは私が死守します」


「隅っこから離れないから安心なさい」


「ずるいぞ、俺様にも隅っこに座らせろよ」


「少し代わってよぅ」


 そして、仲間たちは車内の隅っこにしがみついていた。隅っこ大好きマーモットだ。電車の椅子は隅っこから座るのが好きなサラリーマンのように、マーモットも隅っこが大好きなのである。


「おわひわわ」


 前方に転がる車両や瓦礫を躱すべく、右に左にとバギーは蛇行しながら走る。そうなると体重が数キロのマーモットたちは身体が浮いて、今にも落ちそうだ。落ちたら回収するのが大変だ。


「仕方ない。テレキネシスロープ!」


 アイテムボックスからロープを取り出すと、テレキネシスで皆の胴体を縛っていく。そうして、バギーにロープを引っ掛ければ、落ちることはない。


 胴体を縛ったロープを見て、皆は感心する。


「おぉ〜。器用だなマーリンは」


 カジカジカジカジ


「ほんとですね。時折僕よりも頭が良いのではと思ってしまいます」


 カジカジカジカジ


「そうね。道具を使えるなんて、マーリンってどこで覚えたの?」


 カジカジカジカジ


「なんかこの巣揺れるから寝にくいよぉ」


 カジカジ


 と、皆は夢中になってロープを齧り始めた。


「お前ら、それは命綱だから齧ったらだめだろ!」


「でもぉ〜。これを見てたらかじりたくなるよぉ。それにマー君も齧ってるよね?」


「う、つい無意識に齧ってた!」


 カジカジカジカジ


 恐るべきマーモットの本能。たしかにロープって齧りたくなるよ。この細さ、ちょうど手で持てて齧りやすい。歯ごたえあって楽しいのだ。仕方ない。別プランでいこう。


「人参をあげるからかわりに齧ってて!」


 アイテムボックスから人参を一本取り出して、皆の目の前に放り投げる。


「おぅ! オヤツの時間だな!」


「私のですよ!」


「何言ってんの。私に放り投げたでしょ」


「これはミカのだよぅ」


 もちろん皆は人参を齧ることに夢中になり、ロープから興味をなくすのだった。フー、一安心。なんで1本か? マーモットは基本餌を奪い合うんだ。彼らはしばらくはロープには意識を向けずに人参を奪い合うことに夢中となるだろう。


 取り敢えず、皆はこれで落ちない。


「さて、追いかけてくるデカゾンビの様子は、と。うぉぉぉ!?」


 後ろを振り向くと、予想以上に近づいており、もう手を伸ばしても届きそうな距離だ。デビルアーミーはアサルトライフルを乱射しているが、表皮を浅く削り取るだけで、ただでさえ痛みを覚えないゾンビには効果はなく、どんどん距離を詰められている状況だった。


「ヴォォォ!」


 デカゾンビは走りながら岩の塊のような拳をゆっくりと振り上げてくる。ヤバい、あれを食らったらぺちゃんこだ。


『バギー、右にきれーっ!』


 キュルルとタイヤが焦げ付くような音を立てるとデビルバギーは右によれる。と、同時に隕石が落ちるかのように車の横に拳が振り下ろされて、アスファルトへと深くめり込むのであった。


「うへぇ、あぶなっ!」


 飛び散った破片がパラパラと車体に落ちてきて、カンカンと金属音を奏でる。振り下ろした際に立ち止まったデカゾンビ。再び間合いは開くけど━━。


「ノガスカァァァ」


 再びデカゾンビは追いかけてきた。邪魔な放置車両を蹴飛ばして、瓦礫を踏み抜き、どんどんと迫ってくる。


 タタタタタ、タタタタタとアサルトライフルの銃撃音が響くが不毛に終わり、デカゾンビの走る速度は全く落ちない。


「ひえ~、『今度は左! 次に左、そして右!』」


 振り下ろされる拳。そのたびにガツンガツンと激しい音がして、振動でバギーがひっくり返りそうになる。なんとかデビルバギーは回避しているが、いつかは追いつかれそうだ。


『アーミー、目を狙っても駄目?』


「ムイミデシタ」


 もう確かめたらしい。そりゃゾンビだもんな。痛みを感じないのは一番厄介だ。


「にしても、レベルが違いすぎるのか倒せる予感ゼロだね。このイベントは逃走イベントだな。倒せない敵と距離をとって逃げるしかないか。と、するとどうするか……。おわわわ」


 前方の道路が存在しなく、森林となっているため、デビルバギーはドリフトで右にカーブすると横道に入る。舗装されていない土の道でガコンガコンと車体が浮き上がり、片輪走行をして、マーリンたちもぴょんぴょんと浮いてしまう。


「うひゃー、たのしー。ほらほら、俺様浮いてるぞ」


「ふむ、回し車の次に楽しいですね」


「ねぇ、私そろそろ寝たいんだけど、車を止めて休まない?」


「そろそろロープ齧りたくなってきたぁ」


 ポンポンと身体が浮くのを楽しんでます。仲間たちの危機感はゼロだった。それどころか楽しんでます。野性味ゼロだけど愛すべき仲間だ。絶対に守りたい!


 なにか、なにかないか?


 この状況を逆転できるなにかが欲しい。両脇には崩れたビル群と家屋、道路は放置車両とゾンビたち。そして━━。


 前方に見える車! あれだ!


『アーミー、閃光弾! デカゾンビと距離をとれ!』


『リョウカイシマシタ』


 デビルアーミーが閃光弾を投擲する。山なりに放り投げられた閃光弾はデカゾンビの足元に落ちようとするが━━。


「テレキネシス閃光弾っ! デカゾンビの頭に命中させるっ!」


 テレキネシスにて閃光弾を操作して、デカゾンビの目の前に移動させる。


 カッ


 眩く閃光が空間を支配して、さすがのデカゾンビも顔を押さえると立ち止まる。


「コシャクナァァ」


 でも、盲目状態もたったの数秒。頭を振ってよろめきながらも追いかけようとしてきた。タフネスな敵である。


 だが、それこそ俺の狙いだったのだ。距離を取ることがしたかった。


 よろよろと歩くデカゾンビの足取りが段々と回復してきて━━1台の車の横を通り過ぎようとする。


「チャンス! 『アーミー、タンクローリーへ手榴弾投擲』」


『リョウカイシマシタ』


タンクローリー。ガスをたっぷりと積んだゲームおなじみのギミック。それが前方で放置されていた。


 デカゾンビが通り過ぎようとするタンクローリーへと手榴弾が投擲されて、爆発。タンクローリー内のガスにも引火すると大爆発を引き起こす!


「ヴォォォ」


 炎に包まれて、もがき苦しむデカゾンビ。足は完全に止まり、炎を振り払うべく無茶苦茶に腕を振り回し、身体をビルにぶつけていく。


 それが致命的な行動であった。


 ビルが崩れてきたのだ。


「ヴォォォ、ヴォォォ、アァァォァァ」


 断末魔を上げるデカゾンビ。容赦なく瓦礫が落ちてきてデカゾンビの身体を押し潰していき━━遂にはビル全体が崩れ落ちると、デカゾンビをぺちゃんこにするのであった。


「ふぃ〜。なんとか倒せたか。マーモットの知恵の勝利だな。小さくても、その知恵は巨人を上回るんだよ」


 ゲームでもよく見る戦法。タンクローリーアタックだ! 見たか、マーモットを舐めるなよ!


 ピギーピギーと高笑い。倒せない敵を倒せたぜ!


『おめでとうございます! 貴方はボスモンスターを倒しました! 経験値三千取得。しかも小動物なのに格上をギミックを使い倒すという歴史上初の快挙です。そのため、貴方に特別に経験値一万点を差し上げます!』


「やった! 合計一万三千の経験値ゲットだぜ!」


 マーモット最強! ちょっぴりモチモチな身体でステップを踏んでダンシング。やったね!


「うんうん。ミカも一万三千手に入れたぁ」


「おぉ、俺様たちの友情パワーのお陰だな」


「なにに使うのかしら? 睡眠スキル?」


「僕は回し車が欲しいです」


 んんん?


「……もしかして、パーティー全体が報酬貰えたのか。うん、良かった。良かったよ。これでやれること増えるしね?」


 なんとなく解せぬ。


 なんとなくだけどね!


          ◇


 デカゾンビを倒したためか、はたまたゾンビの出現区域を脱したのか、ゾンビは出現しなくなった。街は静かとなり、じゃりじゃりと車が進む音だけとなる。


 なので警戒しつつも、デビルバギーを停車させる。予想外に大量の経験値を貰えた。これから経験値を消費して、スキルを取得しないとならない。


 ずっと見ていたスキル一覧を閉じる。これから俺は皆に酷いことを告げなくてはならない。でも、それは生き残るために必要なことなんだ。


「皆、話があるんだ……聞いてくれ。聞いてくれる? お~い、起きてくれ〜」


 シリアスな俺の言葉は、スヤスヤと寝る皆には通じなかった。マーモットに似合わない激しい運動をしたので皆お昼寝中だ。皆は体を寄せ合い藁の上に寝そべって、目を瞑って幸せそう。


「起きろよ〜。起きて〜。……起きろよ〜。おやすみ〜」


 そんな光景を見て、俺はというと、もちろん耐えられずに皆の上に乗っかって寝るのでした。皆の体温が暖かくて、あっという間に睡魔に襲われる。マーモットは睡魔にあっさりと負けてしまうのだった。


 ━━起きたのは夕方でした。


「皆、聞いてくれ。早急にスキルを取得しないといけないんだ。しかも固有スキルだ」


「固有スキル? なんのスキルを取るんだよ」


 俺の真剣な表情に、ガブたちはさすがに身を正し聞いてくる。マーモットが身を正すってどうなのと聞かれれば、寝そべってぺたーんとなります。


「『進化レベル1』スキル。固有スキルの中でもレベル表記がある珍しいスキルだ。これを取得して、進化したいと思う。もしかしたらお互いに種族も変わるかもだけど……生き残るためなんだ」


 魔物進化物の小説では、動物は様々な種族に変わる。きっとポイズンマーモットとか、マジカルマーモットとかあると思うんだ。その時、お互いに違和感を感じることがあるかもしれない。俺はそれが恐ろしい。仲の良かった仲間が変わるのが恐ろしい。


 でも、これからは強力な魔物とか強い人間に出会うと思う。なによりもマーモットは冬眠したくなるし、種族的に不利なのだ。なので仕方ない。


 涙を堪えて……。


「マーモット+1に進化」


「マーモット+1しかないですね」


「マーモット+1よぉ。これ選ぶ必要ある?」


「ほんとだぁ。マーモット+1だよ」


 んんん? 幻聴かな? 変な内容が聞こえてきたな。もしかして攻撃スキルとか覚えないと派生が生まれないのか? 俺だけ多数の種族が表示されるとか━━。


『進化先:マーモット+1』


「なんでだょぉぉぉ!」


 ピギーとマーリンは叫んでしまうのであった。

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― 新着の感想 ―
おっさん+1とマーモット+1どちらが強いだろうか?
 マジか!?  言葉を操るゾンビはオスクネー辺りまで進まないといなかったのに、デカゾンビでも喋るのか。
ハリウッド映画なら大迫力の戦闘シーンなのにカジカジカジカジするマーモットしかイメージできない。脳内マーモット症ですね。
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