プロローグ
「いい? 絶対にこのことはあいつには内緒よ? もしもあいつに知られたら、私はあの愚弟を処分しなければいけなくなるから」
窓から差し込む光に部屋の埃がきらきらと舞う会議室。
年上の先輩から真剣な目でそう言われ、私はただこくこくと頷くことしかできなかった。
「ちょっと麗華ちゃん、もう少し言い方ってものがあるんじゃないの~? ほら、相手一年生なんだから、そんな怖がらせるようなこと言っちゃダメだって~」
「んなっ、私はべつに彼女を困らせるつもりは――」
「だから麗華ちゃんにそのつもりがなくても、実際に困らせてるんだって~。いい加減その弟くんのことになると周りが見えなくなる癖、直した方がいいと思うよ~?」
「っ、……そ、それはあんたも同じでしょう⁉ 大体、自分だって妹のことになると――」
「はいはいそこまでですよ。お客さんが来ているんですから、あまり恥ずかしいところを見せないでください」
そんな先輩たちの会話を聞きながら何も言えないでいる私に、割って入って来たもう一人のメガネの先輩が、
「すみません、うちの会長二人がご迷惑をおかけしました」
そう言って頭を下げる。
「ちょっ、飛鳥! それじゃ私たちが恥ずかしいことしてるみたいに聞こえるじゃない!」
「だからそう言ってるんだって、飛鳥ちゃんは~。年下に怒られるとか、かいちょーなのに恥ずかしい~」
そしてまた始まる二人の言い争いに、メガネの先輩はため息を吐いた。
「すみません、せっかくご相談に来ていただいたのに。……こんなところを見られてはあまり説得力はないかもしれませんが、あの二人の言うことは信じても大丈夫ですよ。きっあなたの悩みも、解決してくれるはずです」
「は、……はい」
申し訳なさそうに言うメガネの先輩にお礼を言った私は部屋を出る。
何とも言えない態度から、きっとまだ半信半疑だということは伝わってしまっただろう。実際ほんとうに信じてもいいのか迷っている。
でも、もうこれ以外にどうしていいか分からないから。
私はぎゅっと唇を噛み締めて、震える足取りで階段を上った。




