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17歳の誕生日!1+7で8人に逆凸する!【水瀬夏希】

 10月22日。この日水瀬は逆凸配信をしていた。この日が水瀬は誕生日で、17歳になったことを発表して1+7で合計8人に逆凸を仕掛けることにしていた。

 最初の内は普通に雑談配信をして、リスナーに誕生日を祝われてから逆凸を開始した。


「あ、もしもし〜。今配信中です。逆凸なんだけど、音声載せて良いですか?」


『初っ端って誰よ?』

『同期のエリーとか?』

『先輩か後輩の可能性もある』

『それじゃあ予想にならないだろ』

『ユークリムとか?直属の先輩だし、尻尾仲間でしょ』


 音声を載せる許可を貰ったために、水瀬はその人物との通話を配信に載せる。相手は配信中だったようで、そこを確認せずに通話をかけたので相手は驚いていた。

 その驚きが隠せないまま、音声が載る。


「というわけで、1人目のお相手です。どうぞー」


「え、あっ。4期料理道のドグマ・樹林です……。水瀬さん、いきなりすぎないっすか⁉︎これ初対面なんですけど!」


「だってリリちゃんとのコラボで女の人とコラボしたいって言ってたから……。早めに接点作った方が良いかなと思って」


「ご配慮ありがとうございます!」


 コメント欄では関わりのある人物ばかり予想されていたので、いきなり後輩で男で接点のないドグマが来るとは思わなかった。

 初対面ということで自己紹介と呼び方について決めてから、話し始める。


「ドグマ君、私とゲームでコラボするなら何が良い?今後の参考にするー」


「ゲームですか……。水瀬さん、ゲームあんまり得意ではないと聞いてますが?」


「うん、割と苦手!」


「となるとアクション系はやめた方が良いっすかね?謎解きとか……?」


「えー、アクション系でいいよ?苦手だけど楽しめないわけじゃないから」


「そ、そうっすか?難しいな……」


 そんなこんなでコラボをするとしたらやるゲームを決めて、雑談を続ける。会話デッキと呼ばれる会話のテーマを水瀬が用意しておいて、それに答えてもらう形だ。

 ドグマは相変わらず女性との会話が苦手なようで、しどろもどろになりながら会話を続ける。ドグマのリスナーなら彼は女性相手だとこんなものだとわかっているが、水瀬のリスナーはあまり知らなかったようで親近感が湧いたようだ。


「チェリーちゃんと火乃香ちゃんとコラボしたんじゃなかったっけ?それでも女の人との会話って慣れない?」


「慣れないですねえ……。あの時は一鉄さんも一緒で、一鉄さんが会話を回してくれたんで……」


「一鉄おじちゃんに任せたら安心できるもんね。やっぱり経験豊富なのかなぁ?」


「一鉄、おじちゃん⁉︎」


「うん、おじちゃん。おじちゃんって結構私の歌とかダンスとか褒めてくれるよ?」


「あの人、いつの間に女子高校生とお近付きに……⁉︎」


 ドグマはいつの間にか同期の30歳の大人が女子高生と仲良くなっていたことに戦慄した。水瀬としては事務所で偶然出会って、そこで挨拶がてら話していたらめちゃくちゃに褒められたから懐いているだけだ。

 その情報は初耳のリスナーしかおらず、コメント欄も一鉄に対して戦慄していた。同じ事務所の相手とはいえ、後輩で歳上の人をおじちゃんと呼ぶ、ある意味いつも通りの水瀬の姿に尊敬のコメントもあった。


「うーん、数こなすしかないのかな?今度、女子会に顔出す?多分オーちゃん先輩が主催してくれるよ?」


「そそそ、そんな場所行ったらカチコチになって何にも言えないっすよ⁉︎」


「大丈夫ダイジョーブ!リリちゃんいるけど違和感ないから!」


「それはリリパイセンだからですよ⁉︎自分は絶対に浮きます!」


『リリ、女子会に参加してるの?』

『どうせなっちゃんの保護者としてでしょ』

『エリーとなっちゃん2人といた時にご飯誘われたとかじゃない?』

『FORは仲良しだなぁ』


 ドグマとの会話はそんなところで終わり。次の人に聞きたいお題も聞いて、次の人へ通話をかける。

 その人は1期前半組のゴードンだった。


「ゴードンさん、こんばんちゃー!」


「はい、こんばんは。水瀬さん久しぶり。誕生日おめでとう。……もしかしてFPSの打ち上げ以来かな?」


「そうかも!ゴードンさん忙しそうなんだもん!やっぱり平日はお仕事が忙しい?」


「まあ、仕事が普通にあるからね。水瀬さんも平日は学校でしょ?学校楽しい?」


「楽しいけど、最近はどこでも女子の会話の話題が『手乗りドラゴン』で困ってるかも……。休み時間とか踊ってる人多くて」


「あー……。やっぱり現役女子高生からしたら、あれってそんなに流行ってるんだ。じゃあ水瀬さんはそこに参加できないね?」


「そうなんですよー!本家本元がカミングアウトはまずいので!」


 あんまり絡みのないゴードンだったが、ゴードンが大人だからか会話はスムーズに進む。水瀬のコミュニケーション能力が高いこともあるが、珍しい絡みに、そしてお互い知らないことが多かったために会話は進む。

 ゴードンは配信の数が少なく、コラボなどで関われないと人物像も浮かび上がってこないと思われがちだが、公式番組の出演率がそこそこ高く、他の人からの情報などもあるので案外水瀬が人物像を知っていたことが大きい。

 水瀬のことは特にリリからよく聞いていたので、ゴードンの質問もそこまで突拍子のないものではなかった。


「じゃあ、最後にドグマ君からの質問ね。ライバーの中で1番仲の良い異性を教えて、だって」


「ドグマ……。自分がされたら困る質問をするとか、今度覚えておけよ」


「で、誰誰?オーちゃん先輩?」


「そこでオーフェリアが出てくるのがオレたちをどう見てるのかわかるが……。まあ、同期のどちらかだろうな。で、ドロッセルとオーフェリアならオーフェリアだろ。ドロッセルはコウスケとペアなことが多くて、オレは必然的にオーフェリアとペアになることが多い」


「やっぱり?まあ、ペアってなるとそうだもんね。偶数で分けやすいし。FORはどうやっても3人一緒だとリリちゃん真ん中だし、ペアだと私とエリーしかないもん」


 ドグマの質問に怒りつつ、ゴートンは素直に答える。彼的にもエクリプスの中で1番仲の良い女性は唄上だと思っている。表に出す関係性という意味でもそうだが、裏の話をすれば幼少期からの付き合いだ。

 年数とか立場を考えれば、仲が良い人物は確定してしまう。


「オーちゃん先輩に治してほしいところとかある?」


「ああ……。浪費癖だな。人に簡単にカードを渡すなって何回も言っているんだが。アイツ、『ウィザーズ&モンスターズ』の新弾が出る度に大量に買うだろう?コレクターファイルを作るのも、たくさんのデッキを作るのも良いんだが……。もう少し常識の範囲ってものを覚えてほしい」


「そんなに凄いの?」


「確かリリもコレクターファイルを作っていたと思うが、アイツの場合レアリティ違いのカードも全種類集めてるんだ。今度アイツにコレクションを見せてもらうといい。金銭感覚の違いに驚くぞ」


「へー。今度聞いてみますね!」


 そんな同期の困ったところを聞きつつ、次の人への質問を聞いて終わり。

 次の相手はイソラ。イソラともあまり関わりがなかったために、あれがしたいこれがしたいという話がポンポンと出てきた。

 女性陣であれば人狼ゲームや企画などで一緒になることは多いものの、サシコラボという意味ではまだやったことがなかったためにやりたいことがたくさん出てきた。


「そう言えば誕生日でしょ?誕生日おめでとー。そんな良い子の夏希には神からプレゼントがあります」


「え、プレゼント⁉︎なになに〜?」


「画像送ったから見られるかな?載せて大丈夫だよ」


『イソラからプレゼント?クトゥルフ関係?』

『女子高生に名状し難き何かをプレゼントするか……?』

『そこら辺の良心がないタイプじゃね?イソラって』


「む、コメント欄にバカにされてる気がする。割とちゃんとしたもの用意したぞー」


「イソラ先輩の悪口は、めっ!あ、この画像?」


 イソラが水瀬の配信画面も見ずにコメント欄で微妙なことを言われたことを察知して、水瀬が注意した後。

 配信画面に出てきた画像は、ポケクリの立体物だった。四足歩行の胴体が長いダックスフンドのような水タイプのポケクリで、とある世代で主人公が序盤の方に出会う1匹だ。

 可愛いものの戦闘という意味ではあまり活躍させられないくらい微妙な能力で、そういう理由もあって愛玩系のポケクリなのだが、可愛さという意味ではこのスイワンよりも進化前の方が可愛がられている。


「え、スイワンだー!可愛いー!これプラモデル?フィギュア?」


「え、粘土?というか合成樹脂?」


「……ん?粘土?粘土でポケクリの商品ってあるんですか?」


「ないんじゃない?粘土で型作って、乾燥させて塗装して、関節部だけ樹脂で弄ったくらいだから。やっぱりクトゥルフ以外だと顔の造形が微妙だね。イラストをよーく見て作ったんだけど、イマイチ」


「つ、作った⁉︎イソラ先輩の手作り⁉︎これ、商品じゃないの⁉︎」


「乾燥の時間を抜いたら3時間くらいだから、手間じゃなかったよ?顔だけはごめんね」


 配色や立体感、それに本人はイマイチと言っているものの顔の造形もおかしさなど感じないほど出来がいい。てっきり商品として販売されているものか、クレーンゲームなどのプライズ品かと思ったが、なんとイソラの手作りだという。

 リスナーも画像検索で本当に商品がないか調べたが、ヒットしなかった。ポケクリは全世界的な人気があるためにかなりの商品展開をしているが、それでもスイワンの立体物は商品として出てこない。


『ミニプラとか、ぬいぐるみはあってもこんなフィギュアの奴はないぞ……?』

『流石に全ポケクリの立体物はない感じ?』

『プラモとかフィギュアは人気の高いやつだけだな』

『ぬいぐるみは全種類出すっていう狂気の沙汰やってるけど、立体物はそんな展開してなかったはず……』

『イソラ、造形師とかになったら良いんじゃね?』

『我、深淵を見る者。イソラは自作のクトゥルフを結構配信で作ってるからそこまで驚きはない』

『あ、イソラのリスナーじゃん。クラフト系の切り抜きは見るけど、こんなのも作れるんだな』


 公式から発表されている商品がなく、イソラのリスナーからもお手製だろうというお墨付きが出たので全員が手作りであることを信じた。

 事務所に置いておくので都合の良い時に取りに来てと伝えて、ゴートンからの質問に答えて、次のライバーへの質問を出してイソラは帰っていった。

 イソラの次はチェリー。チェリーとは何回かコラボをしていることもあって、話が弾む。チェリーも流石に高校生が相手ということもあってエッチな話題は少なめにした。全くしなかったわけではないので高校生相手に何をしているんだという話ではあるのだが。

 そんなブレない彼女の様子が刺さる人には刺さったようで、先日チャンネル登録者数が10万人を突破した。おっとりしているエッチでスタイルが良いお姉さんを好む人が多かったのだろう。


「私的にオススメのゲームがあるのですが、水瀬さん是非プレイしていただけませんか?R-18ではないので〜」


「何系のゲーム?」


「乙女ゲーです。これでも私、ちゃんとリサーチしているんですよ〜?確か声優の間宮光希さんがお好きなのですよね?『スターライト・フェローズ』という作品を是非やっていただきたくて!」


「あ、聞いたことある〜。アニメもやってたやつだ」


 チェリーがお勧めするゲームの名前を聞いたことがあった水瀬。声優の間宮光希が好きだと公言しているが、出演作全部を網羅できているわけではない。アニメ化されたのは去年だが、去年の水瀬は自分の生活費を稼ぐためにバイトをしていたので未履修だった。

 そもそも『スターライト・フェローズ』で光希の役はちょい役。『パステルレイン』のようにメインでないと必死になって見ることもなかった。


「最初の作品はゲームではなくアニメでも問題ないと思います。その次のファンディスクのゲームは是非プレイしていただきたくて〜。今タイトルと販売ページのURLを送りますね」


「『スターライト・フェローズ〜星の瞬くこの世界で〜』かな?これ、タイトル絵のどっちかがみーちゃんってこと?」


「背中を見せている方ですね。攻略ルートがあります〜。ただ続編なので前作を知っている必要がありまして。アニメか、ゲームをやっていただく必要があります」


「みーちゃんルートあるの⁉︎やるやる!アニメって何話あります?」


「25話、2クールです〜」


「おお〜……。結構多いなぁ。ちょっと考えます、ありがと!」


 そんな紹介も受けて、イソラの質問に答えて貰った後、チェリーとしては弁えた質問を残して退散。

 5人目は宗馬が選ばれていた。


「夏希っち、誕生日おめでと〜!成人してたらお酒とかパチンコとか教えたのになぁ」


「お酒もギャンブルもまだダメです!」


「ま、それは3年後ね。包まれる電気毛布、事務所にあるから持って帰ってよ〜。パチンコの景品」


「純粋に嬉しいなって思ったのに!なんか一気に微妙になっちゃった!」


「はっはっは!大当たりして持って帰ったら前にも同じの交換してて余ってるんだよね。マネージャーに伝えて夏希っちの箱に入れてもらったから、この冬使ってよ」


「タバコ臭くない……?」


「パチ屋はずっとタバコの匂いしてるからわかんないや!」


「もー!何で宗馬先輩は上げて落とすのー⁉︎」


 そんな感じで弄っていた宗馬だが、会話デッキによって罰を受ける。水瀬が用意した内容なら問題なかったのだが、チェリーが残していった内容に撃沈することとなる。


「『異性で1番ドキッとする仕草は?できたら40文字以上で答えよ』。はい、答えて!」


「何か一気に趣旨が変わったんだけど⁉︎これライバーからの質問?」


「そう、チェリーちゃん」


「あ〜、心っちかぁ。じゃあセーブした方か?……ロン毛のおねーさんが、白いワンピースを着てて長くて緩いスカートをゆらゆらさせながら、麦わら帽子を被りながら耳にかかる髪をそっと掬って笑ってるのがツボなんだけど、このシチュエーション夏希っちはわかる⁉︎」


「男の人の浪漫って感じ〜。今時いないよ、そんな清楚な人」


「高校生にマジレスされた⁉︎」


 仕草というよりはシチュエーションだったが、40文字を超えていそうだったために良しとした。

 ここで追撃をした水瀬。エクリプスのメンバーだったら誰がそのシチュエーションが似合うかと聞いて、ドロッセルと唄上、それに亜麻井が似合いそうだと聞き出した。

 ドロッセルと唄上は聖女とお嬢様というパブリックイメージから。だが亜麻井という同期の名前が出たことで水瀬の頬は一気に上がる。


「亜麻井先輩⁉︎そうだよね、清楚だよね!わかるわかる!今度亜麻井先輩にそのシチュエーションやってもらおうよ!」


「がああああ⁉︎そうだった、この子もカプ厨だった!他意はないんだって!他の面々は異形要素多いし、ネムリアっちはなんか違うじゃん⁉︎」


「真崎先輩は委員長的存在で違う感じ?」


「わかってるじゃ〜ん。清楚ってよりも真面目!が来ちゃうんだよなぁ。真崎っちは」


「亜麻井先輩は清楚認定になるんだ〜?」


「マジでただの同期だから!オレっちだって亜麻井っちに迷惑かけたくないんだよ!」


『今更言い訳は無理だぞ、宗馬』

『口を滑らせたお前が悪い』

『ドロッセルとオーちゃんだけならまだ弁解できたのに……』

『急にてぇてぇの波動を観測したために来ました』

『切り抜き師ー。ここお願いー』

『任せろー(バリバリ)』


 散々揶揄われて帰っていく宗馬。ちゃんと次の人への質問を残していき、次は水瀬としても1番どうなるかわからない相手だ。

 その人物に通話がかかり、逆凸のことを説明したがとにかく雑談をしたいと伝えてようやく主旨を理解したらしい。

 そんな説明を要したのは、宗方だ。さっきの宗馬の同期であり、お侍さんの17歳。ただし年齢は公表していないため、同い年という話は水瀬もするつもりはなかった。


 2人は通信教育と普通教育という差はあるものの、学校に通っている者同士。通信教育ではどんな風に勉強をしているのかなどを聞いて和やかに雑談は進んだ。リリと関わることが多いので人物像は知っていても、ちゃんと話すことはほぼ初めて。

 水瀬が普段は学校ということもあるが、宗方側もコラボに積極的ではないので関わり合える機会がとことん少なかった。大人数がいるコラボなどで顔を合わせたことはあっても、1対1で話す機会はここまでなかった。

 そういう事情もあって今回、話し合ったわけだ。

 話してみればちょっと常識に疎い部分はあったものの、普通の男性だと思えた。そして最後の話題として、宗馬からの質問をぶつける。


「宗方君。『同期で1番仲が良い人は誰ですか?』って質問なんだけど、誰?」


「母上だな。同期と言わず、全員の中で1番だろう」


「ネムリア先生?まあ、ママだもんね。同期以上に仲が良いのもそうとしか言えないか」


「生物学的に母なのだから、1番に決まっている。宗馬殿も仲が良いが、1番が母上なのは譲れぬ」


「……生物学的に?」


「そうだろう?そうでなくては我々人類は産まれてこれぬ」


『あー、また始まった』

『ただのマザコンとか、Vtuber文化で仲が良いとかじゃないんだよな』

『これってネタではなく、マジで言ってるの……?』

『宗方の辞書にボケるという単語は存在しない』

『Vtuberとしての母親と、実の母親を勘違いしてるってこと?』

『そういうこちょ』

『社長が父親代わりとは言ってたけど、宗方の家庭環境どうなってんの……?』

『割と闇が深いのでリスナーは全員首を突っ込むの辞めました』


 水瀬もコメントも、宗方の言葉に混乱した。ネムリアは絵師として宗方の母になっただけで、実の親でも養子縁組を組んだわけでもない。なのに自信満々に生物学的な母親だと断言しているのだ。

 生物というか理科、もしくは保健体育の授業が必要ではないかと思ったが、同い年の異性にそういう内容を配信でするのもどうかと思ったので何も言わなかった。

 ネムリアの実年齢的に、宗方の実の母親であることは無理なのだが、そこには何も言わなかった。ここでネムリアの実年齢バレなどをしたら大惨事になりかねない。

 水瀬も他のライバーがするように、この件についてはスルーすることにする。

 最後に貰った質問は凄くまともで、常識がズレているということを思いながらも宗方との通話を終えて7番目の人にかける。


「あ、エリー?今配信中なんだけど、音声載せていい?え、リリちゃんもいるの?じゃあいつもの方に切り替えるね」


『エリサ様!』

『リリも一緒?ってことはこれで8人か』

『音声載せる前に相手わかってるやん』


 霜月にかけたらリリもいるということだったのでFORのグループで通話を掛け直した。2人は事務所で収録があったようで、収録終わりでそろそろ帰ろうとしていたところらしい。

 この2人とはいつも話しているので、精々裏でやっていることをリスナーに発表しようくらいのことだ。


「そういえば、何で『手乗りドラゴン』は2パターンだったの?大変じゃなかった?」


「ちょうどその時、色々アレンジをしている時で。他の曲とかも作りながら雰囲気を変えるにはどうしたらって勉強してるところだったから、ついでとばかりに2曲作ったんだよね。20万人記念で2繋がりでちょうど良かったんだよ」


「へー。アレンジの方も好評だよ!なんかあっちでも踊ってみたが投稿されてるんだよね……」


「ゆっくりなダンスになってるの?」


「そうそう。あとは曲調が違うから、途中のダンスも変えてるみたい。なんかオリジナル振り付けとかも流行ってて何が何だかって感じ」


 バズった曲の『手乗りドラゴン』だが、スローペースのピアノとオルゴールが中心のアレンジ曲の方も公開されて、そちらも既に100万再生を超えている。

 そしてそちらの楽曲を使用したダンスも投稿されているのだ。アレンジバージョンはアニメ絵によるMV的な構成になっているが一切踊っていないので、ただ流行りの曲を使用しようとしているだけだろう。

 ただ引用されればそれに引き摺られるように元の動画も再生されるので、閲覧数がどんどん伸びていく。元のショート動画なんてエクリプスでトップの再生数を誇るようになっていた。


「あ、誕生日プレゼントの話しようね。夏希の家に明日届くように郵送しておいたから、明日の夜受け取ってね」


「ホント⁉︎ありがと、エリー!何くれたの?」


「届いてからのお楽しみ、って言おうと思ったけど。ヘアアイロンとマニキュアセット。写真は撮ってないから、どんなのかは届いてから見てね」


「ヘアアイロン持ってなかったから嬉しい!マニキュアも一応持ってるんだけど、ちゃんとした奴じゃないんだよねー。大事に使う!」


 水瀬の部屋に何度も行っているだけあって、足りないものを把握していた霜月。家具などは揃えたものの、美容系はまだまだ買い足す必要があるだろうと思っていたのでプレゼントした次第だ。

 霜月が渡したのなら、次はリリの番。


「画像送ったから、それを見て」


「何これ?チケット?」


「そう、チケット」


「えーっと、『夏目宗谷 年越しコンサートS席』……?どこかで聞いたことあるような?」


 水瀬はリリから貰ったチケットの中身を読んで首を傾げる。個人情報のところは隠されているので配信に載せても大丈夫だった。席番号や当選者の氏名などはしっかりと隠れている。

 霜月はリリの用意していた物を知っていたので驚かなかったが、コメント欄はその内容に驚いていた。


『夏目宗谷って、世界的ピアニストじゃん!』

『え、誰?』

『日本人とイギリス人のハーフで、国籍は日本。弱冠25歳でヨーロッパでも有名な楽団の主席ピアニストになって、世界が誇る日本人として紹介されるようなピアニスト!』

『楽団じゃなくて、個人コンサートか。……これやばくね?』

『関係者席でも、最上級のSS席でもないからまだマシ、のはず……』

『3席連番で取れたの⁉︎』

『コンサートって家族や団体での鑑賞が多いから、申し込みの際に複数枚予約できる。で、当たれば当然全員連番でいける』

『とはいえ、年越しコンサートなんて毎年のように売り切れ続出だぞ……?』

『値段をHPで見たけど、バカ高え!さすが世界的ピアニスト!』


 コメントを見ることで水瀬もどういう人物か理解する。ネットでも調べて、どんな人物か知る。

 そして当選したチケットの内容を知って、水瀬としては驚く。なんか1人2万円とか書いてあるのだ。だがこれは夏目宗谷が所属している楽団で、海外で彼のピアノを聴こうと思ったら簡単に10万円以上することからかなり安くなっていることを彼女は知らなかった。


「こ、こんなの貰っちゃっていいの……?」


「良いの良いの。せっかく当たったんだから聴きに行った方が良いよ。一生に1回あるかないかなんだから。それに価値観変わると思うよ、彼の生ピアノ」


「音楽をやるなら聞いた方が良いってリリくんが太鼓判押してて。ただ問題はドレスコードがあるんだよね。だから今度ドレス買いに行こっか。制服だとちょっとね」


「ど、ドレス⁉︎コンサートってそんなのが必要なの⁉︎」


「格式が高いとね。僕も前に彼のコンサートに行ったけど、ピッシリとした服を着て行ったよ」


「リリちゃん行ったことあるの⁉︎」


「昔、機会に恵まれてね」


 そんな高級なプレゼントを貰いつつ、2人が最後だったので普通の雑談に戻る。

 雑談をしつつも、告知があるという話をして、また何かあるのかとコメント欄が警戒したところに出たのは、どちらかというと水瀬個人のものではなく、エクリプスでの公式発表。

 それは全国流通の音楽CDの発売決定のお知らせだった。


「というわけでドーン!全国流通音楽CDの発売です!A盤がエクリプスオリジナル楽曲のみ収録で、B盤はカバー曲しかないよ。私はどっちも参加してるから、興味があったら聴いてね。カバーは動画として出してない曲しかないよ。今リスト出すね」


『き、きたああああ!』

『全国流通⁉︎ありがとうございます!ありがとうございます!』

『なっちゃんどっちも参加かよ⁉︎買います!』

『お値段的にアルバムですか?10曲以上って神か……?』


 リストを表示する水瀬。コメント欄は大騒ぎで、エクリプスと言えば、という曲があれば、知らない曲もあった。

 その中で水瀬のリスナーだからこそ、見えてしまった作曲者の名前を気にする。


『14曲も良いんですか⁉︎』

『おお、知らない曲が5曲ある……』

『作曲者リリが8曲あるのはバグかな?』

『アイツ作曲者として食っていけるだろ……』

『『polar night/Luna』あるやん!それに新曲っぽいのをユークリムとネムリアてんてえと歌ってる‼︎』

『料理道のデュエットもあるんですか⁉︎それもリリ作曲してるじゃん!』

『と、特典は⁉︎初回限定特典とかは⁉︎』


 コメントがとても速くなっているので読むのを諦めた水瀬は、もう1つのカバーアルバムの方もリストを出す。とんでもなく有名な曲から、昔懐かしの曲まで。様々なジャンルの歌が収録されていた。

 こちらも14曲。ただ両方を合わせてもリリが歌っている曲は1曲もなかった。

 彼的には作曲で手一杯だったというのもある。それを残念がるファンも多かった。


「というわけで発表は以上だよ。詳しい情報は公式HPを見てね。というわけで誕生日配信でした!皆お祝いしてくれてありがとうね!また来年も誕生日配信をしようね、バイバーイ!」


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