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ハードモードはどこに行き着くんだろう…【SoF】#12

キリの良いところまでと思ったら長くなりました。

 何だか【SoF】も終わりが近そうだったために、次の日もプレイしていた。パーティーキャラが3人になってしまったことが寂しく、そしてここからシナリオ的にもどんどん下り坂になっていった。

 まず全世界的に知られたカテゴリーHの存在。これを撲滅するために主流派を名乗っている組織の炙り出しを大々的に実施。騎士団も冒険者も使って世界規模で撲滅活動に移った。

 フォイルたちも主要な施設を粉砕。助けられなかった人たちが多く、殺すしかなかった出来事だ。

 フォイルはまだアルビオンを失った悲しみを拭えていない。だからこそ八つ当たりのように世界的に反抗組織を潰していた。これまでもギルドへ依頼をしたり、騎士団を使って潰したりしていたが、カテゴリーHのこともあって大っぴらに活動できなかったらしい。


 そもそもが元々世界を支配していた宗教の7割方が大元になっている集団だ。それを立て直したばかりの正教と、実力者でもないとカテゴリーHに敵わないギルドで全てどうにかしろというのは20年あっても無理な話だったらしい。

 娘のレミアにもアルビオンが亡くなったことは伝えていた。葬式などはなく、彼の遺体は秘密裏にグランベルへ運ばれて埋葬された。死者こそ出さなかったものの、龍に変身して暴れ回った姿を見ている者も多い。騎士団長として弔うことはできなかったようだ。

 そしてイベントで、イージーモードの主人公であるケビンに教会の地下で匿っているカテゴリーHに変質しようとする前段階の状態の子供たちを匿っていることを知られた。20年前に実験場として使われていた場所だ。


 フォイルが回復スキルを使って治癒できないか、元に戻せないか試すための隔離施設として運用しており、設備が整っていたこととフォイルの移動時間を考慮してこの地下施設が利用された。口の固い人間しかこの場所の存在を知らないはずだったが、どこからかケビンは聞きつけて見付けたらしい。

 そこでケビンは勘違いしたのか、敵対組織と同じようなことをしているのかとフォイルへ激昂。フォイルは世界で唯一回復スキルがあるために治療をしていると伝えたが、話が通じずに喧嘩別れ。フォイルに剣を抜いたことで繰り上がりで騎士団長になったドムニスにより謹慎処分。

 そのままケビン視点が続き、ケビンは聖女に逆らったことを父親に詰められていた。彼は20年前の大改革を知っており、それでも今の正教に残った騎士の1人だった。


 隔離施設のことも知っており、あくまで治療のためだと説明する。アルビオンのギフトのことは知らなかったようだが、実際に軽微なギフトであった子供はギフトの変更に成功しており、治療施設としては間違っていないことを説明していた。

 それにケビンは納得したのか、していないのか。父親の部屋を後にした後、その部屋に来訪者があった。ケビンのパーティーキャラで、同じく騎士の女性、セルベスタだ。


【確かセルベスタ君だったね。謹慎中の息子に会いに来たのかい?君からも言ってやってくれ。聖女様を疑うなと。彼女に救われた人間がいかに多いかと、姉代わりとして伝えてくれないか?君も救われたクチだろう?あの地獄のような洗脳から解放されたと、本当に世界を裏切っていたのは過去の正教だと諭して欲しい。どうにも私では奴に近すぎて、上手く伝わらないらしい】


【その必要はありませんわ。ヴォーランド卿。──ここであなたは死ぬのですから】


【なにっ⁉︎】


 ヴォーランド卿が腰の剣を抜くよりも先に、セルベスタが抜いた剣で袈裟斬り。その後、残虐に斬りつけた。

 ええー……。セルベスタ、公式サイトでパーティーキャラとして紹介されているのに。ケビンの尊敬する女性騎士で上司みたいな紹介文だったはずなんだけど。


【洗脳?されたのはあなた方でしょう?宗教としての本質から外れ、我らの邪魔ばかり!神の器を作ることこそ我ら正教の至上なる使命!それを放棄した紛い物に仕える貴様らこそ唾棄すべき存在だっ‼︎】


【そうか……。狂信者だったのか……】


【狂信者ではない!神に背く背神者どもが!】


 ヴォーランド卿の落ちていた剣を拾い、それで胸を刺す。突き刺さったまま放置し、セルベスタは何かのアイテムを使ったのか姿を隠してヴォーランド家から脱出した。

 騎士の家だからか、家にはメイドがおり、そんなメイドがヴォーランド卿の凄惨な遺体を発見して叫んだことで殺人事件が発覚。ケビンは落ち込むものの、それを励ますのが殺したセルベスタという地獄。


「セルベスタが主流派のスパイなのは良いとして。いや、良くないけど。……こんな酷いことあります?」


『ひっでえ』

『邪魔だったから殺したのか?現役の騎士とはいえ、父親殺される理由、薄くない?』

『あの年代で騎士を続けてるって今の正教を良しとしている人しかいないわけで。主流派からすれば裏切り者を減らすのに理由なんて要らないんだろ。これで疑念を覚えてくれればそれだけで騎士団の動きを封じられる』

『クーデターをやり返されるってこと?』


 ようやくフォイル目線に戻った。そこで人間爆弾の可能性を調べるのと同時にスパイなどの内部調査をした結果、セルベスタなどの内通者の存在を割り出していた。内通者についてはかなり気を付けていたようだが、大きな組織ほど細部にまで目が届かず、たった3人だけだが侵入を許してしまった。

 主流派の手紙を装い、彼女らを呼び出す。そこでドムニスが本来のゴーレムの姿に戻って内通者3人を殺害。戦闘があったが、ドムニス1人だけの操作かつゴーレムの姿といういつもとは違うキャラを動かしているようなものだったので割と苦戦した。


 先にセルベスタ以外の2人を殺し、最後にセルベスタを殺そうとしたところでケビンたちイージーモードのパーティー4人組がインターセプト。どうやら危険を知らせるアイテムを使って彼らをセルベスタが呼び出したらしい。

 だがドムニスは彼らを無視して左の拳でセルベスタを圧殺。死体も残らないほど一気に潰して血溜まりしか残ることはなかった。

 ここで姉のような存在を殺されたケビンが激昂して戦闘に。連続戦闘はめんどくさい。パーティー全員がセルベスタを慕っていたようで、泣き言や恨み節をぶつけられながらの戦闘になった。


「いや、でもスパイだし……。ただケビンたちにとったら姉代わりで、上司ですもんね。うわ、イージーモードをやる時が怖い……」


『パーティーキャラとして親しくなっていたところにこれだからね』

『ドライグ騎士団長だってこっちを気にしている良いお爺ちゃんだったのにあの末路だぜ?』

『立場でこんなに感情が変わるんだな……』


 苦戦したものの、どうにか勝ってドムニスは元の姿に戻ることで姿を隠した。そして何食わぬ顔で現場に戻り、ケビンたちから情報を聞くフリをしていた。

 ゴーレムの姿と人間の姿を自由に切り替えられる存在なんて頭にないんだろう。カテゴリーHは変質したら魔物の姿になりっぱなし。それはアルビオンさえ、逃れられない宿命だった。

 因果が逆の存在なんてそう簡単に行き着かないだろう。


 ドムニスがセルベスタを襲っている間に彼女の私室へ入り込み、スパイとしての証拠を集めていたのだが、そこはセルベスタの方が上手だった。ヴォーランド卿を殺した時点で自分の存在が発覚すると予想していたのか、ケビンに宛てた手紙を押さえることができなかった。

 結果としてケビンに、今の正教がカテゴリーHを産み出している元凶だという嘘八百が伝えられ、ケビンがクーデターを画策するようになる。


「あのぉ、それあなたたち主流派ですよね?あなたたちがやってたことを今のフォイルに押し付けるんです?」


『奴ら曰く主流派こそが真の正教だから』

『だからこそ主流派なんて名乗ってるわけだし』

『フォイルからすれば鼻で笑うレベルの蔑称なんだけどな』


 そして今度はノーマルモードの主人公であるマルス視点になり、こちらでも倒したカテゴリーHの施設から正教と関連する資料が発見される。これで正教に疑義を感じて問い質そうとしたところでランダから20年前の話がされた。

 そんな正教を変えるために今の聖女がクーデターを起こし、昔の正教を潰したのだと。このカテゴリーHについては昔の正教が今も活動を続けているのだろうと諭した。

 そしてフォイルがそのクーデターを手助けして死んだとも、伝える。


 そんな彼らへ、ギルドからクーデター参加の依頼がされる。騎士団長ドライグがカテゴリーHであり、世界を滅ぼそうとしたと。正教がカテゴリーHを研究していたとされる様々な資料が見付かり、正教こそ悪であるとギルド本部が認定したために出された強制ミッションのようだった。

 この強制ミッションはヴァルモニカ解放戦と同じく、一定以上のランクの者は強制参加となるもの。マルスたちも先日Aランクになったため、このミッションは受注しなければならない。

 だがそれに反発したのはランダ。こんなミッションを受けるくらいなら冒険者を引退すると宣言。


 マルスたちはこのミッションを受けるかどうかを多数決で決める。いつも重要な時にはそうやって決めてきたようだ。

 そうして多数決の結果、冒険者はやめられないと思ったのか受ける方が多数。その結果を見てランダが冒険者を辞めた。

 と思ったらフォイルの元にやってきた。


【よ、フォイルの嬢ちゃん。ギルドがバカな真似したからお前さんを守りにきたぞ。あそこの上層部のほとんどが昔の正教に乗っ取られてるな】


【ランダ兄さん……。そうですか、ギルドも。騎士団も20年前を知らない若手を中心にクーデターが画策されています】


【そっちもか。……アルビオンのことは聞いた。お前さんも信用できる奴が少ないだろ。アルビオンの代わりになるとは思えんが、オレも戦う。お前が作ろうとしている平和はまだ道半ばだ。こんなところでお前を失うわけにはいかない。そうしたら今以上に、神の器とかいう馬鹿げたもののために犠牲が増える】


【……わたしは……】


 ここで選択肢が出る。ランダを仲間にしますか、ではいといいえの2択だ。

 クーデターで騎士と冒険者、両方を相手にするなら正直ランダという戦力が欲しい。ただここでいいえを選んだらどうなるのか。

 怒涛の展開に、頭を使う。


「セーブしたい……!ランダをもう一度仲間にしたい欲はある、けど……。フォイルが悪認定されたならレミアが危ない……?」


『ここでランダのパーティー復帰熱すぎる!』

『仲間にする一択じゃね?タンクとして優秀すぎる』

『あ、そういうこと?』

『グランベルにはバルドフとか冒険者とかいるけど、それよりもランダの方が安心か』

『娘ちゃんは確かに狙われるかも?人格的にも能力的にもランダは信用できるし』

『クーデターを抑え込むための必勝のための盾か、負けた時のことを考えての娘の護衛かぁ』

『うっわ、悩む〜!』


 1分くらい悩んで、いいえにすることを選ぶ。ランダを信用しているからこそ、レミアの護衛をお願いしたかった。

 いいえにしたらランダに信用ないかと聞かれたが、信用しているからこそレミアをお願いするという予想通りの言葉をフォイルは口にする。


【わかった。その依頼、このランダが一生を賭して引き受けよう】


【お願い、ランダ兄さん。わたしも頑張るから……】


 重大なストーリー分岐を終えて、このままメインストーリーを進める星マークを押す。

 若い騎士団とギルドのクーダターにより教会は戦場になった。流石の彼らも住民を巻き込むつもりはなく、アンジェリカの中では暴れずに教会へ一直線に向かってきた。小細工などはなく、純粋な暴力による正面突破。

 それに合わせて主流派も罠を仕掛けてくるだろうからとドムニスが残った騎士を平均的に配置。各所で戦いが起こっていた。

 教会の大聖堂で、ドムニスとサフィラしかいない。フォイルの姿がそこにはなかった。


【クソ、邪神め!このクーデターに合わせてフォイル様を亜空間に閉じ込めるなどっ!本当に神というのは度し難い‼︎】


【あなたの手は、もう回復したわね?……予想よりも冒険者の数が多い。あっちならフォイル様の目も届かないと思ったのか、相当数主流派が混ざってるわ。悪いけど、騎士の大半は南側に配置させてもらったわよ?】


【構わない。正面から来る裏切り者は騎士とオレで十分だ。サフィラ、数の多い冒険者を任せて済まないな】


【AランクだろうがSランクだろうが、こんなバカなクーデターに参加した信念のない輩に負けるなんて思ってないわよ。私はフォイル様の右腕であり、先槍の剣。近衛隊賭しての力を見せてやるわ】


【アルビオン殿が右腕ではないのかね?】


【あの方はもう一心同体とかそういう奴よ。あなたが左腕。その巨大な身体で、フォイル様の心臓を守ってね】


【……そう来たか。心得た。貴殿もその剣で逆賊を鏖殺せよ】


【わかってるわよ】


 グータッチをして別れる2人。北の大聖堂から南側の大聖堂に移るために、屋上庭園を通るサフィラ。そのサフィラが庭園の中心で見上げる。そこには禍々しい色の光が中心に流れ込むように球体を維持していて、その中央にフォイルがいる。

 まるでフォイルの命を貪ろうとするような黒い闇に、サフィラは歯軋りをした。


【邪神め……!そこまでして自分の降臨を邪魔するフォイル様が憎いかっ!このクーデターを止めたら、貴様を八つ裂きにしてやる……!】


 今にも斬りかかりそうな形相で、彼女は持ち場である南の大聖堂に向かった。教会は北と南で全く同じ建物を作っており、そこを繋ぐのは屋上の庭園だけ。それ以外は一切繋がっておらず、両方の建物を行き来するには地上階か屋上を通らなければならない。

 だからこそ最後の砦として、ドムニスとサフィラが待ち構えているのだろう。


「神倒せる展開あるよね⁉︎ここでフォイルを拘束とかヤバすぎなんですけど⁉︎」


『徹底してんなぁ。ぶっちゃけフォイルが暴れたら終わらせられるだろうし』

『神とか主流派とか、カスしかおらんのか?』

『カスばっかだからこっちとしても倒しやすい』

『残った2人がフォイルを守ろうとするの、いいな……』

『これ、クーデター起きた時点で割と詰んでね?勝ったとしてもまともな正教のメンバーほぼ全滅。騎士も冒険者のトップも多数が死ぬ。負けたら主流派の天下に逆戻り』

『あ、確かに。ヤバくね?』


 そこからもイベントムービーが続き、騎士や神父が奮戦するもののクーデター側がどんどん上層へやってくる。何かを探すことなく、とにかく邪魔をする者を倒すだけ。カテゴリーHに関する情報を探さないのは演出の都合か、それとも証拠はもう十分だからと攻めることだけを考えているのか。

 視点はドムニスに。彼が待つ北の大聖堂に騎士たちが流れ込んでくる。その先頭はイージーモードの主人公のケビンだ。


【来たか、逆賊ども。天を信じ、地を信じぬ者たちよ。ささやかな幸せでは我慢できなかった強欲を身に窶し者どもよ。見果てぬ楽園を信じるくらいなら、オレは今の愚かな世界を糺す方がマシだ】


【ドムニス……!カテゴリーHを討伐することを隠れ蓑にした、本当の元凶!あんな化け物を産む正教は間違っている!】


【なんだ、存外世界を知っているではないか。人の心も、正義感というものも備わっている。なのにクーデターとは、足りないのは年月か?ドライグ団長が目を掛けていた者も数人いるが……。あの人の見る目が良かったのは、伴侶だけか】


 騎士たちは30人ほどだろうか。その誰もが騎士団の格好をしているため、自分たちが正義の騎士団とでも主張しているのかもしれない。

 一方のドムニスはそんな元部下たちに怒りの形相を隠さない。彼らが時間をかけて教育しても、古い偽物の情報に踊らされてクーデターをしているのだから。


【ドライグ元団長だって急にドラゴンに変わったわ!あの人もカテゴリーHだったんじゃないの⁉︎】


【ふむ。ヴェティ、だったな。──あの方がカテゴリーHだと?そうやって死者も冒涜するのか。そもそもカテゴリーHは化け物などではない。本当の化け物は、こういう奴のことを言う‼︎】


【なっ⁉︎】


 ドムニスはゴーレムの姿に戻る。そのゴーレムに見覚えがあったイージーモードのパーティーが剣を握る力を強めたり身体を震え上がらせた。

 それはそうだろう。最近パーティーメンバーを目の前のゴーレムに殺されて、パーティーで挑んでも勝てなかった強敵だ。


【お前、が、あの時のゴーレム……⁉︎じゃあセルベスタを殺したのも……!】


【哀れだな、ケビン・ヴォーランド。父のように志も持たずに惰性で騎士になった者よ。剣を振るってお前の世界は変わったか?変わらないさ。このまま世界は無に帰す。お前の世界は零れ落ちていくだけだ】


【これ以上そうならないように!お前たちを倒すんだよ!】


 そうして戦闘に。逆レイドのようでゴーレム状態なこともあってドムニスのHPが爆増している。そして30人の敵が一斉に襲ってきた。

 ドムニスのゴーレム状態は攻撃の範囲が広く、威力も高いために蹴散らすのはそこまで難しくない。

 だから戦いながら、この状況部ついてリスナーと話す。


「これ、イージーモードだったら多分巨悪を倒すという目的で頑張れると思うんです。普通にレイド戦でしょうし。けどイージーをクリア済みでハードをやったら、昔旅をしていた愛着のあるキャラが盲信して襲いかかってくるわけで。……シナリオライターとプロデューサーたち、鬼なんです?」


『そっか。元仲間を倒さないといけないのか』

『巨悪が隠れてるなんて思わないよなぁ』

『イージーモードやってた方がこの場面キツくね?今ならまだ愛着ないやろ』

『イージーだって何十時間も旅をしてるんでしょ?しかもお姉さんをやられてるし。まあ、そのお姉さんが悪側だったわけですが』

『主人公分割って、こんな人の心を抉ってくるんだ』

『(運営)フルプライスの倍の値段もらうね!丁寧に人の心へし折ってくね!』

『金と時間をかけた畜生のお遊び』

『多分制作サイド、めちゃくちゃノリノリでゲーム作っただろ?』

『インタビュー記事、どれもこれも値段以上の物が出来上がったと自負してます、みたいな感じだったからな』


 とにかく攻撃スキルを連打。モブはどうにかなるものの、主人公パーティーはしぶとい。とはいえ、回復はされないためにとにかく攻撃を当てたもの勝ちだ。

 数が多かったものの、奥義などをしっかりと当てたために13分で倒せた。それでもそんなに時間がかかったのか……。ハードモード、基本少人数戦が多くないだろうか。

 戦闘では勝ったのに、イベントムービーではケビンたちの連携に終始押されていた。魔法で足を止められて、最後はコアに当たる心臓部分をケビンの剣に貫かれた。そこから身体全体に罅が入り、足から崩れていく。


【ここ、まで、か……。申し訳、ありません……。フォ──】


 フォイルの名前を言い終わることもできず、ドムニスは倒れ伏す。さまざまなパーツに砕かれたが、彼は他のカテゴリーHのように人の姿に戻ることなくそのまま動かない。

 元が逆だからだ。ゴーレムが主なので、死ぬ時もそのままなのだろう。

 そのことを訝しみながらも、ケビンのパーティーが屋上庭園の扉に手をかけた。

 そこで画面が切り替わり、今度はサフィラが待つ南の大聖堂に。彼女も1人で待ち構えていたが、そこに雪崩込んでくる冒険者たち。


 冒険者としても裏の顔で活動していたサフィラは、軽蔑するような目線を彼らに向ける。その対象にはノーマルモードの主人公のマルスたちも含まれている。

 こちらは逆に人数が少ない。20人いないくらいだろう。冒険者の方が質は高いだろうが、人数が冒険者側の方が多いとわかっていたからこそ、こちら側に人員を多く回していたようだ。

 裏切ったとはいえ元同僚の騎士と戦わせるのは忍びないとか思ったのだろうか。兎にも角にも、こっちは数が少ない。とはいえ新設された、ランダと同レベルに強いSランクが何人もいるのだろう。


【ギルドの走狗ども。お金や名誉が大事?それとも立場?依頼されたからと、聖女様に逆らう畜生ども。──近衛隊筆頭騎士、サフィラ=バースが間引く】


【近衛隊……!Sランクに匹敵する実力者だ!気を引き締めろ!】


【Sランクなんて紛い物ばかりじゃない。本物のSランクと称されるのは老兵ランダか、ヴァルモニア解放の英雄たちくらい。あんなもの、ランダが別格だったから、そして異常だったフォイルという少女を冒険者として認めたくなかったから後付けされた、ギルドの我儘だというのに】


【はぁ?何の話だ?】


【冒険者のくせに知らないの?カテゴリーHを1人で倒せるレベルの実力者がSランクの証だという取り決めを、正教とギルド、そして行政府が全会一致で決めて、それを為したのはランダだけ。他はパーティーでの討伐だというのに、1人しかいないのは威信に関わるとギルドが条件を緩和したのよ。そして、過去にそれを為した少女がいた。ヴァルモニアを支配したカテゴリーHをほぼ1人で倒した少女、フォイル。当時9歳の少女の圧倒的な戦果をギルドは認められなかった。カテゴリーHを甘く見ていたのもあるんでしょうね。フォイルでさえ為していない偉業をSランクの証としたのに、それを超える逸材もこの20年で産まれなかった。当て付けで決めた条件を突破する者がいないために、返って少女の特異性を強調してしまった。そんなバカな称号なのよ、Sランクって】


「へー、そうなんだ」


 やっぱランダって実力という意味では頭一つ抜けているのでは?それにその条件ならフォイルは散々やってるんだよなぁ。だからこそ正教としても過去の自分を超えた程度でSランクなら簡単だろうと思って許可をしたのかもしれない。

 でも当初の規定を超えたのはランダだけ。あとはパーティーでカテゴリーHを倒したんだろうな。

 とはいえ、それで人の被害が減るならフォイルは何も言わなそうだけど。


【そもそも!貴様らがカテゴリーHなんてものを産み出さなければ良かっただけだろう!人間を化け物にするのはギフトだという!そのギフトを与えられるのは正教の神父だけ、ギフトを与えられるのも神だけ!ならば正教が悪だというのは簡単な話じゃないか!】


【そこまで話がわかっているのなら、なぜその後のことまで頭が回らない!民衆の目が届くところでギフトを与える正教が、目の前で子供を魔物に変貌させたのか⁉︎そんな事象を聞いたことがある者はこの中にいるのか⁉︎】


 冒険者の怒声に、サフィラも怒声で返す。そして目の前で魔物になった人間を見たことがあるかという問いに返せる者は誰もいなかった。

 魔物になった人間を戦闘の結果わかっても、目の前で見たという者は皆無だった。


【それは!お前らが秘密裏にやっているからだろう⁉︎】


【冒険者なら我ら騎士団の仕事も調べてみせろ!そういう、ギフトを悪用するクズどもを間引いてきたんだろうが⁉︎20年だぞ!この20年でどれだけの人間が救われたと思っている⁉︎それを為したのは誰だと思っている⁉︎聖女デメテル様だ!エレシア様だ!弱冠10歳で見習いから聖女になった、かの方が世界へ慈悲を与えた!そんな当たり前で、真っ当なことをしている聖女を悪だと、唾棄すべき存在だとこうして教会に乗り込んできた能無しどもはどこのどいつだ⁉︎鏡はいくらでもある、持ってきてやろうか⁉︎】


【ま、待てよ⁉︎じゃあ大元のギフトが、神がおかしいことにならないか⁉︎そんな魔物へ変貌させるようなものを与えようとする神が……!】


【ギフトが元凶だと知った時点で気付け‼︎かの唯一神とやらは神ではない!我ら正教が信奉する方はただ1人、聖女デメテル様だ!過去の正教を改革し、主流派を名乗り未だに神の器などという3000年も用意できないものを作るために人類を消費し続ける狂信者どもを取り除いた、真なる聖者をっ‼︎貴様らは悪魔として誅伐せんとここへやってきた!デメテル様の忠臣として、そんな世界の敵をここで排除する‼︎】


 サフィラが結界魔法を用いる。炎でできた亜空間のようなもので、過去にフォイルも使ったことのある、中にいる人間を逃さないようにするための魔法だ。

 彼女はここに来た者を人間として扱っていない。フォイルに仇なす者としてここで殲滅する気だ。


【これ、逃げられない……⁉︎】


【待って!何でそのことを真実として世界に公表していないの⁉︎公表していたらこんなことには……!】


【ギルドは知っている。行政府も。だがそんなことを言ってすぐ信じるか?狂信者の言葉でこんな簡単に騙されているお前たちがその証拠だろう?まずは主流派を名乗るクズの殲滅を優先した。それに時間がかかっていただけだ。邪魔者がいなくなれば徐々に情報を浸透させるつもりだった。何せ3000年の歴史があり、武力で周辺諸国を統一した世界の枠組みだ。……それに人間は弱い。ギフトがなければ魔物に勝てないくらいに。だからこそ魔物の殲滅と、狂信者の排除をしていたところに貴様らの裏切りだ……!ギルド本部はほとんどが狂信者に頭を挿げ替えられたんだろうな!でなければこんなミッションを下すはずもない!それを拒否しなかった時点で、貴様らは冒険者を名乗る資格すらないっ‼︎】


 今まで剣を抜いていなかったが、とうとうサフィラが抜く。その刀身が光り、断頭台の刃が光っているかのようだった。

 ギフトが原因で変貌しているとわかったのなら、その大元の神がおかしいというのは真っ当なロジックだろう。そこに行き着かなかったのはそこまで頭を回せなかったか。

 それとも、冒険者側の狂信者が情報操作をしていたか。

 何にせよ、ここに攻め込んで騎士や神父に実害を出している時点でサフィラは彼らをここから出す気はないのだろう。


【死ね、誇りを捨てた夢追い人の残骸ども……!貴様らはグランベルとヴァルモニアで歴史を学ぶべきだった!】


 戦闘が始まる。

 20人との逆レイド、ではなかった。HPも普通だったことと、やはり高ランク冒険者ということもあって苦戦した。回復アイテムをガンガン使って、数を半分にした頃、イベントムービーが挟まる。

 とんでもない身体能力で蹴散らすサフィラ。昔のフォイルを感じるような身のこなしだ。跳んで跳ねて、剣で斬り飛ばしながら魔法の大火力で消し炭にする。血反吐を吐きそうな顔色で、冒険者を倒していく。

 だが、数が数だ。サフィラも傷を負っていく。マルスの短剣が迫り、斬られると思った時に2人の間に光による魔法が降り注ぐ。それを神懸かりな脚力で全てを避け切ったマルスはサフィラ以外の魔法の行使者を目線で確認する。

 光の雨による魔法を放った人物は、カソックを着こなした初老の男性。だがそのカソック姿はかなり堂に行っていた。まさかここで救援に来てくれるなんて。


「ドリー⁉︎」


【ドリー卿⁉︎どうしてあなたが……!】


【その卿ってのをやめろ、サフィラ。俺はデメテルの共犯者だぞ?あいつが聖女として責められるなら、彼女を守れなかった俺が手を出したって良いはずだ】


【どんな理由ですか……。正直助かりましたが】


【今あいつが殺されたら、クソッタレな神への復讐が止まる。こんな機会、もう3000年経ったとしてもないかもしれない。だからこそ、聖女を排除しようとする奴は俺にとっても敵だ】


【待ってください!あなた方が手を止めてくれたら私たちだって撤退します!ギルドへ本当のことを問い糺しますから!】


 フォイルにギフトを与えてくれて、回復スキルのことも隠してくれた物臭神父。その歩みはゆったりとしているが、ずっとフォイルの味方だった人だ。

 そんな人がサフィラを助けてくれるなんて。

 というか卿って。正教には正式に属していないはずなのに、上位の階級の人にしか付けられない卿で呼ばれているんだ。会いに行っても話すのはフォイルくらいだったのでサフィラがそう呼ぶなんて知らなかった。


【正教に攻め込んでおいて何寝ぼけたこと言ってるんだ?お前らは正教が要らないと判断したんだろう?たとえ強制ミッションだとしても、受けると決めたのはお前たちだ。それはつまり、聖女は要らないと考えたってことだろ?あんなんでも俺にとっては娘みたいな奴なんでな。──娘に手を出されてキレない親がいると思うか?】


【逃げるなんて許さない。貴様らはここで朽ち果てていけ。聖女様のいない地獄が欲しいと願ったのだろう?なら私はそんな地獄に付き合いきれない。主義主張の違いというやつだ。大人しく口を閉ざしておけ!】


 キレたドリーが追加で戦ってくれる。回復薬か何かをオートで使ってくれる上に、魔法で攻撃やバフデバフで援護をしてくれる。サフィラでとにかく攻めまくれば良くなったのでとにかく数を減らす。

 まさかこんな終盤でドリーが臨時とはいえパーティー入りしてくれるなんて思わなかった。気になりすぎてステータス画面を見に行ったくらいだ。

 しっかりと立ち絵やギフトの設定などもあって、ステータスは完全な後方支援型だった。後ろは任せてサフィラでとにかく倒しまくる。


 ノーマルモードのパーティーメンバーだろうと容赦無く倒した。もしかしたらさっきのドムニスが勝っても負けイベントになったように、ここでは負けてもいいのかもしれないけど、せっかくここまで一度も負けずに来たのだから最後まで負けないまま終わりたい。

 というわけで時間はかかったものの、ドリーの援護もあって勝利。強かったけど、2人ともやられずに勝利。2人とも戦闘不能にならなかったからか、シークレットミッションをクリアしたらしい。

 これ、ドムニス側でもシークレットミッションあったんだろうか。条件は何だったんだろうと思ってしまう。


 戦闘的には勝ったのに、やはり負けるのか様々な冒険者に終始押されていた。先にやられてしまったのはサフィラ。爆発魔法で宙に浮かされた後に風の鋭利な刃を産み出す魔法で剣を持っていた右手を切断された。

 それに続けるように跳んだマルスが短剣を構えていたために、魔法を行使しようとする。放ったのは雷撃の魔法だが、それはマルスの前に出た障壁魔法で防がれてしまった。

 連続魔法も使えず、2本の短剣が彼女の胸に突き刺さる。そのまま地面に激突し、彼女は喀血。マルスも馬乗りになる形で彼女にトドメを刺した。


【……ランダ、さんに鍛えられたのは、本当みたいね……。実力、だけは。それなりにあるって認めて、あげる……】


【俺たちが、間違っていたのか⁉︎冒険者はギルドに逆らえない!自由を謳っていても、結局は組織の駒だ!その上が正教を否定して、どうやって生きていけばいいんだ……!】


【視野の、狭い子……。新しい自由な組織を、創れば良かったじゃない……。ランダさん、のよう、に……自分の意志を貫いて、冒険者を辞めれば、良かったじゃない……。あなたは、何のために冒険者になったの……?】


【英雄になりたかった!魔物に苦しむ人たちから誰かを守る、英雄に!】


【じゃあ、今度は道を間違えちゃダメよ……?ごめんなさい、サフィラはここまでのようです。──フォイル様……】


【え……?】


 サフィラの目が閉じる。その表情はどこか優しげで、満足しているような顔だった。

 そしてサフィラの最後の言葉を聞いて、マルスの表情が固まる。


「ああ、そっか。これ聖女がフォイルだって知ってしまったってこと?マルスの憧れの人が聖女で、殺そうとしてたってことだからなぁ。……ドムニスも、サフィラもいなくなっちゃうなんて。もしかしてこれバッドエンド一直線で走ってる……?」


『えぐ』

『サフィラぁあああああ!』

『パーティーメンバー、全滅です……』

『一番少ないパーティーの死亡率が高すぎるんですが?』

『ま、まだこの土壇場で加入したドリーがいるから!』

『殺す必要のない悪くない人を殺して、しかも聖女が憧れの人と知るなんて、マルス君のメンタルもやばくね?』


 サフィラがやられたからか、ドリーは両手を挙げて降参をする。彼はあくまで後方支援。1人になった時点で戦うのは無謀だと思ったのだろう。

 冒険者で立っているのはノーマルのパーティーメンバーだけ。他の冒険者はさっきの戦闘で倒した扱いなのだろう。マルスは呆然としているが、そのマルスにドリーが声をかけて、サフィラを綺麗に埋葬したいと告げて退かせる。


【マルス、どうするの……?】


【今更、かもしれないけど……。騎士団を止めよう。それくらいしか、俺はサフィラさんに贖えない……】


【それなら屋上庭園を抜けていくと良い。北棟に行くにはそれが一番近道だ。向こうにいるであろうドムニスを手伝ってやることがデメテルやサフィラのためになる】


【ドリー神父……。ありがとうございます】


 彼らは屋上庭園に続く扉を開けて先へ進む。

 残されたのはドリーと何も言わないサフィラだけ。ドリーはサフィラの髪を撫でながら、悔しげに言葉を漏らす。


【若くて良い奴ばかり死んでいく……。サフィラもドムニスもバカだよ……。お前らが生きている方がフォイルも喜ぶのに、こんなところを死に場所に選びやがって……。神よ、こんな世界を創造した下衆よ。呪いあれ】


 そんな言葉と共に暗転し、セーブしますかと聞かれたのでセーブしておく。なんとなくセーブファイルは分けておいた。

 ここから分岐でグッドエンドに行ったり、するんだろうか。仲間がこうもいなくなってグッドエンドですと言われても受け入れられなさそうだ。

 セーブをした後、何度か見たことのある白い空間にいた。神と話す際に連れ去られた場所だ。そこにフォイルと、金髪の偉丈夫がいた。

 フォイル以外の相手となると、あれが神なんだろう。


【さっさとわたしを解放しなさい!貴様と話している暇はないっ!】


【そう言うな、最も私の器に近しい者よ。この際貴様で良い。女の身体だとしても、弄れば元の姿に戻れるだろう。貴様らが貢いだ金貨も十二分にある。これだけあれば聖女などいくらでも産み出せる。ご苦労だったな、偽聖女よ】


【わたしがいる限り、器を創り出せないからって、女の身体で妥協?ハッ!心底クズね!この身体を渡すものか!名前も奪われて、夫も仲間も奪われて、この身体まで明け渡してたまるか!ここで死ね、神!】


【私は殺せぬよ。位相が異なる、ここはあくまで私の創り出した精神世界。私は不滅也!】


 ラストバトルか、荘厳なBGMと共に戦闘になる。レイドのようにHPゲージが上部に表示されており、境目は4本。それの下によくわからないゲージがある。MPとかの表示は今までのレイドにはなかったけど、今回だけの特別だろうか?

 神の名前は「唯一神 ヴァルドロス」というようだ。フォイルの倍くらいの身長で無手ながら殴りかかってくる。

 こっちの装備はいつも通り。というわけで戦闘に。


「皆の仇!たとえたった1人でも、お前を倒してやるっ!」


『ヴァルドロスなんて神、いたか?』

『多分いないと思う……。そこは既存の神にはしなかったんじゃね?』

『こいつを倒さないとハッピーエンドにはならなそうだからな!やれー!リリー!』


「あ、瞬間移動⁉︎こいつ、ちょこまかと……!というかなんか減ったゲージ何⁉︎」


『下のゲージ、なんか段々減ってね?』

『マジ?減った?』

『誤差では?でもHPとは別だろうけど、なんのゲージだ?』


 なんか下のゲージは神が技を使ったり、瞬間移動するたびに減っているっぽい。短いモーションで範囲攻撃をしてきたり、いきなり瞬間移動で真後ろに来て殴ってきたりと面倒極まりないが、群れで攻撃を仕掛けてこないためになんとかなる。

 こっちだって攻撃を与えれば怯むし、何かの障壁で攻撃が全く通らないということもない。とにかく攻撃を当てるのみ。


 ゲージの1本目を削り切ると、連携技のアイコンが出る。誰もいないのに、何でと思いながらも反射的に押していた。

 半透明の姿になって、フォイルの後ろにゴーレム状態のドムニスが現れる。彼との連携技が出て、声はなかったのでフォイルだけのものだったものの、ゲージブレイクをする。

 そして何も押さないまま、奥義が出た。


【鋼鉄の鎧よ!今一時の解放を!我は全てを受け止めし盾なり!我は全てを破壊せし巨拳なり!ファランクス・インパクトォっっ‼︎】


「何にも押してない⁉︎勝手に発動した⁉︎フォイルバージョンのドムニスの奥義⁉︎」


『ドムニス!!!』

『かっけえ!皆が力を貸してくれるのか⁉︎』

『フォイルは1人じゃないんだ!皆がいるよ‼︎』


 ゴーレムになったドムニスが巨大な拳で相手を叩きつける奥義で、HPゲージがそれなりに減った。これ、ゲージを割るごとに味方の連携技と奥義を放っていく感じか⁉︎

 MPも減らずに、自動発動っぽい。それならとにかく神のHPを減らしまくればいいと畳み掛ける。

 神は魔法を連発してくるが、回避ローリングをしつつ攻撃を当てていく。隙はあまりないものの、攻撃できない程ではない。とにかく斬って斬って斬りまくる!


 HPゲージの2本目が終わる時に、また連携技の表示が出る。ボタンを押すと今度はサフィラが半透明になって現れた。

 剣で何度も斬り刻む技の後、やはり奥義が自動発動。カットインこそは通常のものだけど、技がサフィラのものだった。


【一撃・二撃・三撃!まだまだまだぁああああ!雷光よ、唸れ!剣閃よ、空を斬れ!擬似烈風、弾けて混ざれ!ドミニオン・ドライブ‼︎】


 魔法による雷撃の後、高速の剣技によって剣に竜巻が纏う。更に雷撃を重ねて相手を痺れさせたところに、雷と風を混ぜた魔法剣で叩きつける奥義。

 これで残り半分だと思ったところでイベントムービーが挟まる。屋上庭園に視点が移り、騎士団と冒険者が同時に屋上庭園に足を踏み入れていた。

 そして彼らが見たのは黒い球体に囚われたフォイル。警戒するために騎士は武器を出すが、冒険者はサフィラの言葉からまずは様子を見ることにした。


【騎士たち、ちょっと待ってくれ!おそらく俺たちは踊らされている!】


【偽情報でも掴まされたか?新しく騎士団長になったドムニスはゴーレムの魔物だった!しかも騎士を殺すような凶悪な!そしてあの聖女を見ろっ‼︎あんな禍々しい光を放つ存在が聖女であってたまるか!新たな災厄を産み出さないように、ここで我らが諸悪の根源を斬り落とす!】


【グゥ……!聖女も何でこのタイミングで、あんな力を使っているんだ……!そもそもあの光はなんだ?あれも魔法なのか、それとも聖女の力の一部……?】


 主人公同士、ケビンとマルスの会話がされるものの、2人が持っている情報の差から交渉は成立しない。マルスも禍々しい黒に取り込まれたフォイルの姿を見て、この状況じゃなければもう少し交渉が上手くいくと思っているような表情だ。

 あれが神の厄介だなんてわからないよなぁ。

 あとケビンたち騎士側はドムニスがフォイルの正当性を何も話さず、パーティーメンバーを殺しているゴーレムとしての姿を見せていたために、説得しようとかそういうつもりが最初からなかったのも大きい。ドムニスは殺すことしか考えてなかったんだろう。


 身内だったからこそ、裏切り者なんて不要だと切り捨てることにして情報なんて話さなかったんだと思う。多分イージーモードの中ボス扱いだってこともあるんだろうけど。

 サフィラは逆に、冒険者は元々別の組織で、この状況になって辞めたランダの存在と、こっそり裏で活動していた冒険者としての身分。それにマルスが憧れていた存在がフォイルということもあって怒ったからこその情報提示なのだろう。


 組み合わせの問題、とも言える。そしてサフィラ側がノーマルモードの中ボス扱いだからこうなったんだろう。

 一触即発の空気が出来上がる頃、宙に浮いていたフォイルが降りてきた。地面に辿り着くと、黒いオーラを纏ったまま、目を閉じてヴェールを付けたまま剣を抜いて暴れ始める。それに対処し始める騎士と冒険者たち。


「え、まさか暴走してる⁉︎精神世界で神と戦ってる影響が出ちゃってる⁉︎精神世界の制御くらいちゃんとしろよ神ぃいいい!」


『こうして敵対するのか。世界がフォイルの敵になってるな』

『手を出しちゃったら言い逃れできなくない……?』

『それだけ神が追い詰められているってことでは?』

『(精神的に)ハードモード』

『難易度的にも全然ハードモードだが?』


 騎士たちと冒険者たちと戦っているイベントムービーからいきなり戦闘画面に戻された。それと同時に範囲攻撃をしてくる神。

 姑息だな!


【人の身でどうしてそこまで抗う……!貴様も私がいなければ存在しない、矮小な命だろうに!】


【知るか!産まれてきたから、優しい人がたくさんいたから!その人たちが苦しまないようにって、その人たちに報いるために復讐心を火種に歩いてきただけだ!お前の狂信者がたくさんの人を奪う!だからそれに抗っているだけでしょ⁉︎諸悪の根源が、上から目線で語るなぁあああ‼︎】


「全くもってその通り!もっと言ってやれ!」


 神って本当に全てを1から作り上げたんだろうか?にしては身体を失っていたり、聖女くらいにしかテレパシーを送れなかったりとかなり弱体化しているように思えるんだけど。

 外のことなんて知らないとでも言うようにこっちは戦闘に集中する。魔法の種類が増えたものの、HPが減ったら回復薬で治しつつMPは攻撃に全部費やす。そしてとうとう3本目のゲージを削りきって、連携技の反応が。

 やはり3番目は、アルビオンだった。


【雷鳴!】

【蒼波!】

【十波斬‼︎】


 アルビオンとの連携技も1人で叫びながら放ちゲージをブレイクした後、子供の頃の彼が現れる。さっきの連携技は大人の透明の姿だったのに、今回は子供時代のモデリングで透明になっていた。


【ただ今は、この一撃に全霊を込める!うおおおおおおお!龍王の迅撃(ドラゴニック・ブロア)‼︎】


 4ゲージ目の半分近くまで削る高火力。やっぱり火力はアルビオンが一番高い。フォイルも様々なギフトでステータスの嵩増しをしているものの、基礎火力が多分違うんだろう。

 パーティーのメインアタッカーはずっとアルビオンだった。フォイルはどちらかというと器用万能。何でもできる上にどのステータスの伸びも良かったために、火力がどんどん上がるアルビオンには敵わなかった。


 そんなアルビオンの力も借りつつ、神の奥義も喰らいつつ、体勢を立て直して削っていった。途中で神が回復スキルを使って4本目のゲージだけ全快にしたのは大声を出してしまったが、ゲージそのものが増えることはなかっのでよしとする。

 奥義も自力で発動できそうだったのでそれも使いつつ、とうとう最後のゲージも削りきった。回復されたのでかなり時間がかかったものの、今度は連携技が出ずにそのまま奥義が自動発動された。


【炎は熱く、暖かく!全ての子供たちに届け、わたしの想いよ!そして──この悪き魂を浄化せよ!これで、トドメ!『ウェスタの(ほむら)』‼︎】


【グアあああああああ⁉︎バカな、唯一神たる私が、人間の小娘にぃ……!】


 専用セリフでの奥義、そして撃破セリフも流れてリザルト画面になる。ラスボスらしく経験値はもらえなかったものの、G-EXPは貰えて、それに【刻の羅針盤】なるアイテムを手に入れた。

 ここからどうなるのかと思って、イベントムービーを待つ。

 白い空間がかなり揺れている。そして神が膝をついて倒れていたが、その足が崩れ始める。


【消える……⁉︎我が魂も、集めた資金も……!ま、まだだ!羅針盤さえあればやり直せる……!また人間から金貨を毟り取れば……!】


【しぶといぞ、害虫。とっととわたしを元の世界に戻せ!】


 足掻こうとする神を縦に一刀両断。それがトドメになったようで神は完全に消えていった。それと同時に白い空間の揺れもなくなり、奥からだんだんと萎んでいくようで黒が奥からフォイルに向かってきた。


【神は倒したけど……。クーデターをどうにかしないと。サフィラもドムニスも無事だと良いのだけど……】


 そう呟いた後、夕方になった屋上庭園に場面が切り替わる。先程まではフォイルから出ていた黒い光に引っ張られて曇天となっていたのに、今では鮮やかな緋色だ。

 そしていきなりコントローラーが揺れるのと同時に、グサリとSEが聞こえる。フォイルの視界が現実世界に戻ってきたのか、イージーの主人公であるケビンの剣が胸に刺さっていた。


 溢れ出る鮮血。口からもゴポリと血を流す。騎士たちはやった!という表情をしており、冒険者たちは逆に顔を真っ青にしている。

 風が吹いた。それでヴェールが飛ばされた。滅多なことでは外れないヴェールが、何かの悪戯のように簡単に飛ばされてしまった。

 そのフォイルの素顔を見て、冒険者の何人かは息を飲んでいた。


【嘘……⁉︎】


【それが民衆を騙していた悪魔の顔か!悪魔と契約して世界を滅ぼそうとでもしたか⁉︎残念だったな、その企みは俺たちがこうして潰した!】


【……そう。こんな、ものが……わたし、の……末路……。まあ、いいわ……。もう、ギフトは増え、ない……!ざまあみろ……!】


【何?デメテル!お前、ギフトに何をした⁉︎】


【ふふ……。最期、くらい……。聖女の真似事、でもして……終わらせてやるわ……。神の恩恵を、無くし者、たちよ……。その道のりに、幸あれ、ってね……】


 言い切るとフォイルは自分で剣を引き抜き、後ろに倒れた。マルスが駆け寄って状況を確認するが、口元に手を当てて息をしていないことを確認する。

 冒険者たちも彼女の顔を確認するように近付く。そして疑惑が確信に変わったようで、彼女の正体を知るのと同時に、サフィラなどの正体も芋蔓的にわかったのだろう。


【マルス、この人って……!】


【ああ、フォーさんだ……。だからランダさんは……】


【知り合いだったのか?まあ、こんな悪女の素性などどうでもいい。ギルドの諸君も協力ご苦労。これから忙しくなるだろう。何かあった時は協力を頼む】


 そう言って騎士たちは凱旋へと行ってしまう。グランベルで会ったことのある人たち。そしてとある少女の家族を殺してしまったことに気付いて、彼らはどうすべきかと思っているところにドリーがやってきた。


【フン。盲目に突き進んだ結果、世界の衰退を選んだか。俺が見た破滅はこういう意味だったか……。デメテルの遺体は俺が貰うぞ。こいつの遺体を悪用しようとするバカどもに心当たりがある】


【お願い、します。護衛は必要でしょうか?グランベルに行かれるのでしょう?】


【そこまで知っていたか。なら護衛をしろ。いや、ドムニスの一部も持って帰りたい。しばし待て】


 教会の外では悪政からの解放でもなされたかのような歓声が沸き起こる。冒険者たちはなんとも言えない表情のままドリーと一緒にアンジェリカを脱出した。

 その後にエンディングらしきものが流れる。音声は権利的に切らないといけないので、急いで消音にしてエンディングを見た。キャラ名とCVが流れ始めて、大きく息を吐いてコメントを見ることにする。


「ええ〜……。バッドエンドだよぉ……!救いは⁉︎残されたレミアはどうするの⁉︎ランダを味方に引き入れてたらこの結末は回避できたのかなぁ⁉︎」


『お、終わった』

『ハードってリリ何時間やった?その行き着く先がこれですか?』

『ランダのところが分岐なんだろうけど。ランダ1人で変わるだろうか』

『リリは今日の分も含めて70時間超えです』

『ハードクリアまで70時間マジ?』

『メリバってやつ?ギフトで苦しむ人はいなくなったんだから、神も倒したしある意味変革は成功よ?』


 エンディングでハードモードの冒険を思い返すかのように描き下ろしっぽいアニメ絵が画面半分に表示されて、もう半分でエンディングクレジットが表示されているのを見つつ、この後の世界のことについてコメントと話し合う。

 考察タイムというやつだ。


「まず主流派が正教に舞い戻るじゃないですか。それでギルドは信用を失って、Sランクがほぼ全滅して戦力ガタ落ち。神がいなくなったからギフトを与えるというのは無理になったとしても、あの主流派が神の復活を目指さない理由がなくないですか?」


『まあ、地獄だろ。騎士団もほぼ壊滅で、おそらくトップは勘違いしたままのケビン。それって主流派に言われるがままだろうし』

『流石に主流派の悪事を見付けてくれ。そうじゃないと悲しすぎる』

『ギフトを与えられないから、カテゴリーHの新しい被害者は出ないんだろうけど……』

『そうか。魔物を倒し切ったらある程度平和かもって思ったけど、そのギルドもズタボロじゃん!』

『主戦力なんてグランベルにしか残ってないんじゃね?』

『主流派はそりゃあ暴れるでしょ。狂信者なんだから』


 これ以降聖女は産まれない。戦力としても結構酷くて、これ以降ギフトの更新もできず自力で頑張るしかない。だというのに黒幕は倒せたけど黒幕の配下はずっと残ったまま。

 これ2を想定した残党の残り方なんだろうか。DLCはないって宣言をしていたから、やるなら続編なんだろうけど。

 エンディングが終わると、イベントムービーなのか神に閉じ込められていた白い空間のような場所が現れる。そこには寝ていて目を覚さないフォイルと、レミア?


【ごめんよ、我らが子よ。貴女に随分な重荷を背負わせてしまった……。でも、これなら。【刻の羅針盤】があって、今の時空にあの男もいない。それなら間に合う。ワタシという存在を、過去に差し込めることができる。──このままじゃ終わらせないわ】


 セリフの上に本来ならキャラクター名が出るのに、???で表示されるレミアらしき人。多分声優さんも違うんじゃないだろうか。レミアとは違う気がする。その人物はフォイルから懐中時計のようなものを預かってそこに光を当てる。

 そこで白転して、セーブ画面が表示される。セーブして次に進むと、ゲームの難易度選択画面が出て、今まで3つだったのにハードモードの横が開いて新しい選択肢が出た。

 ただしグレーアウトしていて暗くて、鍵マークが付いている。そして下の方の3つの丸の内一番右側の丸に白い球体が差し込まれた。

 ポップアップが表示される。


「ハードモードクリアおめでとうございます。エクストラモード『刻の羅針盤』のロックが1つ解除されました。イージーモードとノーマルモードをクリアして『刻の羅針盤』へ進みましょう。……続きあるの⁉︎」


『エクストラ⁉︎』

『シナリオバカ長え!分岐もあって、3つですら多いと思ったのに4つ目⁉︎』

『これはフルプライスの倍の値段ですわ……』

『そうだよなあ!こんなメリバで終わりな訳ないよな!』

『エクストラの女の子、フォイルの小さい時?』

『レミアじゃね?さっき意味深にいたし』

『レミア主人公⁉︎』


 どれだけ驚かせてくるんだ。このゲームは。

 キリが良いので終わらせようと思って時間を見たら、AM4:27とか見える。AMってことは午前?もうすぐ朝ってこと?


「あのー、僕がゲーム始めたのって18時じゃありませんでした?」


『そうだぞ』

『10時間ぶっ続けてやってますね』

『仕事のために起きたらまだやってて横転』

『トイレとか水分補給とか大丈夫だったん?』

『終わりも見えてたしね。行けるところまで行くでしょ』


 マジか。気付かなかった。

 ちょうどよく終わらせるところもなかったし、続きが気になっちゃったからなぁ。

 今日の配信は終わりという話と、朝配信はなしと伝えた。終わりだと思うと一気に眠気が来た。

 SNSで【SoF】のハードモードがめちゃくちゃ面白かったことと、朝配信がないことを伝えて、シャワーを浴びて寝る。

 真紀さんも同じぐらいの時間まで配信をしていたので、おやすみと伝えてから寝ることにした。


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