08 ミリオネア(8) -ダナーside
「俺が信用出来なかったのか?」
「何の話だ」
カリーナが疲れたと言うので船室まで送り、そのままレオーナの部屋で寛ぎながら話をする。
「確かにロートアで、アイツの顔を知っている奴がいなかったけど、、、そんなに知りたかったのか?」
「なんだ、それで変な顔をしていたのか?」
「そう言う訳じゃ無いけど、、、今までアレス殿の船に乗った事なんて無いだろ?」
「お前も乗ると言うしな、良い機会だからちょっと借りを返して貰いに来ただけだ」
「借り?」
「他の女の事を考えながら、私の唇を奪った借りだな」
「へぇ」
「なんだ、驚かないのか? お前にとっては良い話では無いだろう?」
「まぁね、嬉しくは無いけど、、、どちらにしても選ぶのはカリーナだからね」
「お前が受け身なのは珍しいな」
「大切な幼馴染だ、強引な事はしたくない」
「そんな事では奪われるぞ」
「過去に無茶して遠くに連れて行かれたからなぁ、、、彼もちょっと独占欲強そうだし、また会えなくなるのは嫌だからね」
「ダナー」
「それより、姉上は顔を覚えているのか?」
「"風使い"のか?」
「うん」
「いや、、、二年も前の話だし、すぐに船を降ろされたからな」
「ふ〜ん」
「お前は、カリーナの側にいなくていいのか?」
「ちょっと疲れたみたいだからね、船室で休んでる。さすがに女性の船室までついて行く訳にはいかないだろう?」
「ここも女性の部屋なんだがな」
「姉上は、別」
「全く、少し向こうを向いていろ、着替える」
「了解」
レオーナが着替える衣擦れの音が聞こえて来る。
「波の音が変わった、そろそろミリオネアの領海かな」
「聞いてはいたが、本当に早いな」
「う〜ん、残念。この調子だと夕焼けが終わりそうだ」
「カリーナに見せたかったのか?」
「うん」
「呼んでみたらどうだ?」
「いや、疲れているみたいだったしね。でもせっかくだから姉上を誘ってみるよ」
「お前、他人の代わりと言われて喜ぶ女がいると思うなよ」
「代わりでは無いよ、姉上は別」
「全く」
ミリオネア風の服に着替えたレオーナを連れて船室を出る。
「これは美しいな」
「うん、綺麗だ」
母親譲りの金髪と薄茶色の瞳、夕焼けに照らされたレオーナは本当に綺麗だった。
「この姉上を選ばない奴の事が、本当に理解出来ないな」
「ダナー、間違えるなよ。私が奴を選ばなかったんだ」
「ハハッ、確かに。それならよく理解出来る」
彼なら名前も知らない男の事を忘れさせるかと思ったが、そう上手くはいかないらしい。
これであの男が、本当に"風使いのファリス"なのか、確実に確かめる必要が出て来た。




