07 ミリオネア(7) -ラナside
ロートアの港街から船に乗った人も本当に嫌な人だわ。
何も知らないくせに私に辛く当たってばかりいる。
私がミリオネアに行くのは、それを彼が望んでいたからで、使用人の真似事をする為では無いのに、それを全く分かっていない。
あんな人を雇っているなんて、"赤の騎士"が優しいからに違いない。
赤の騎士は私の事もミリオネアに連れて行ってくれると言っていた。
優しい人に甘えてあんな人が偉そうにするなんて、間違っている。
それにやっぱり彼は私に親切で優しかった。
「大丈夫ですか? 足元に気をつけて」
船に乗る時も、私に手を添えて案内してくれたし、何時もの様ににっこりと微笑んでくれる。
彼からの贈り物をそろそろ私が貰っても良いのでは無いかしら?
私から贈り物を取り上げた人は、空色の瞳をした人とずっと一緒にいるみたいだし、せっかく貰ったのに身に付ける事もしないで、机の中に隠している。
「ラナ、ちょっと一人にさせてくれる?」
彼女が部屋を追い出すので、船室から出る。
日差しが強くなった為か甲板には誰も居なかった。
誰もいない世界は、ラナにとって何時もの世界だった。
ラナは、王都の養護院で育った。
養護院は、親のいない子ども、特に親が籍を持たない為、せめて子どもにだけでも籍を与えようと王都の街門に捨てられた子どもを養育する場所だ。
王都の第二層には、そうした養護院がいくつかありラナもそこで育った。
養護院は王宮の予算で運営されているが、育てている子どもの数ではなく、養育した子どもの数で予算が振り分けられた為、養護院で働く者達は、少しでも早く子ども達を独立させようとする。
魔力を持つ者、手先の器用な者、容姿の優れている者など、養子や弟子に欲しいと望まれれば約定を結ぶ事も多かった。
また引き取り手の無かった子ども達を多少厳しく躾ても、16歳になれば養護院を出なくてはならず、それらは生きていく為に必要な事でもあった。
引き取り手も無く、幼い頃からのんびりしていたラナは、特に厳しく育てられた。
その中でラナは段々と空想の世界に逃げるようになった。
彼女の世界では、彼女をいじめる人は悪い人で、優しい人はいい人になる。
ずっと自分だけの世界で幸せだったが、最近一緒にいて欲しい人が出来た。
彼もラナと一緒にいたいみたいで、いつも優しく微笑んでくれる。
「そうだわ、彼女が私から盗んだ物を返して貰おう」
船室に戻り、彼女が私から盗んだ物を引き出しの中から取り出す。
「ふふっ、やっと私の所に返って来たわ」
盗んだ人は眠ってしまったので気にする必要は無いが、目が覚めてラナが持っている事に気が付いたらどうしよう。
「また、彼女に盗まれてしまうかもしれないわ」
彼女がこの船から居なくなればいいのに。
もう一人の人も上手くいった。
彼女の時も上手くいくに違いないわ。
だって私は特別なんだもの、彼だってそれを望んでいるに違いない。




