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01 ミリオネア(1) -アン&ダリルside

「ラナを侍女に、ですか?」

「僕はその娘のことをほとんど知らないからね、どうかと思ってね」


「カリーナ様に侍女が必要なのは分かりますが、彼女では心許無(こころもとな)いですね。必要ならノアの方から誰か付けますし、商隊の中からでも選ぶ事は出来ますが、、、」


「いや、、、元々、ミリオネアに行く時は、誰か付けるつもりだったんだ。只、その娘がカリーナと一緒に行きたいと言ったらしくてね、どうしたらと相談された」


「その様な願いが、通るはず無いでしょう?」

「まぁ、そうなんだが、最初に境界を曖昧にしたのもこちらだからね、カリーナも無下に出来ないのだろう」


 アレス坊ちゃまはそう言っているが、ラナが侍女ではどちらが世話をしているのか分からなくなってしまうだろう。


「では、侍女見習いはどうですか? エマをカリーナ様の侍女として行かせましょう。彼女なら若い娘の指導にも慣れていますし、今後、ラナが侍女になりたいと思うなら良い勉強にもなります」

「そうか、それなら問題無いな。ありがとう、アン」


 使用人の中にいた可愛らしい娘が公爵令嬢と知った時は、驚きもしたが、これで彼女はアレス坊ちゃまの相手に何の問題も無くなったと、とても安心した。


 確かにアウスレーゼ公爵令嬢となっている少女は、エルメニアの社交界では難しい立場だが、すっかり社交界から遠ざかっている坊ちゃまがそれを気にするとも思えない。


 それどころか何かと彼女の為に心配る様子は、アンも見ていて驚かされる。


 どちらかと言えば、女性の方から誘われる坊ちゃまが、随分と年下の少女に振り回されている様に見えるのは、なかなかに面白かった。


「失礼致します」


 坊ちゃまが彼女を大切に思っているのは間違い無いので、エマにも良く話しておこう。

 

 これで王都のノアの屋敷も賑やかになる、アンが現役の間に赤ん坊の世話がまた出来る様になるのも、時間の問題に違いない。



***



 確かに一介(いっかい)の騎士が、公爵令嬢を夫人に望む事は難しい。


 ファリスの気に入った娘が公爵家の娘と知り、彼の仲間達は、彼以上にこの恋が実らないのではとヤキモキしたが、しばらくすると案外問題ないのではと思えて来る。


 アウスレーゼ公爵家の令嬢は、エルメニアの社交界に受け入れられるのは難しいだろうし、ファリスはウエストリアのラングロア家の者だ。


 年の離れた兄夫婦に子どもは無く、彼が兄の後を継ぐのではと言う噂もあるくらいだし、元々、ウエストリアは実力が認められれば出自は殆ど問題にならない。


「ファリス、そう落ち込むな」

「何の話だ」


「彼女だよ」

「それは別に、、、」


「ロートアに着いてから、ほとんど外にも出ていないだろう」

「いや、、、ちょっと考え事をしていただけだ」

「そうなのか?」

「あぁ」


「なぁ、お前もミリオネアに行くんだろう?」

「そうお願いしている」

「時間はまだあるさ、それともティジィスの男を気にしているのか?」

「確かに気にはなるかな」


「お前の方が、似合いだと思うぞ」

「ダリル、、、ありがとう。

 気にして貰って申し訳ないが、、、まさかまたみんなで盛り上がっていないよな?」


 野盗に襲われた頃から何かと仲間連中に余計な心配をされているファリスは、少々こちらの対応に悩まされているらしい。


「気にするなよ、今はみんなで心配しているだけさ」

「、、、お願いだから止めてくれ」


 ミュールを出発した辺りから何となく彼が大人しく元気がないようだが、どうやら彼女の事で悩んでいるのでは無いらしい。


 彼がまだ諦めていないなら、是非頑張って貰いたい。

 どちらかと言えば堅物で真面目な彼が、彼女と恋仲になってどんな風に変わるのか仲間連中は楽しみにしていて、そして変わって欲しいと彼らは本気で思っているのだから。



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