17 閑話 -ガルスside
- 二年前 -
「彼が一緒にいてくれて良かったわ」
「風使いの息子っすか?」
「えぇ」
「アル坊一人だと、激しく落ち込むっすからね」
「そうね」
「まぁ、無事で良かったっすよ」
エルメニアを離れたと聞き、半年もの間、心配で仕方がなかったのだから、今度会ったらお父様にちゃんと説明して貰いたい。
「いくら何でも、まだ必要無かったのでは無いかしら?」
「そこまで行くと思って無かったかもっすよ」
「お父様が?」
「まぁ、イルネラで誰と知り合ったか知らないって事はないっすね」
「でしょうね」
「主人も、もう少し後とは思っていたみたいっすね」
「お父様よりずっとアルの方が繊細なのに」
「酷い言われようっすね」
「その割り切りが出来るのが、お父様の良いところだと認めているわよ。
そして出来ないのが、アルの良いところなのよ」
エルメニアは多くの魔物が生息している土地で、その為に人々から見放された土地でもあった。
数百年前、初代の王が魔物を制する手段を得、国が造られたが、その魔物がいる為に他国の侵略を受けていないのも事実だった。
エルメニア周辺の国家が覇権を争っていても、それ程この国が影響されないのは、魔物がいる事とエルメニア人が魔力を持っている事が大きく関係している。
ウエストリアの領主になるなら、周辺の国の状況を知る必要がある。
そして、魔物ではなく、人と人が争うと言う事がどう言う意味かと言う事も。
それが知識で知っているより、ずっと辛いものだと言う事も。
「今はスーの海軍にいるのね?」
「そうっすね、落ち着くまで少し発散しろって事っすかねぇ」
「落ち着くといいのだけど」
「大丈夫っすよ、アル坊も風使いの息子も、人を守る為に力は使っても、人を傷つける為には使ってないっすからね」
「本当に、お父様は相変わらずだわ。それよりも、、、ねぇ、ジャルド」
「えっ、なんすか?」
「お父様がたくさんの手足と良く見える目を持っているのは、知っているけれど、、、貴方はどこからその情報を貰っているのかしら?」
「えっ、何のことっすかねえ」
相変わらず都合が悪くなると、こちらの人もサッサとどこかに行ってしまう。
「もう」
「相変わらずですね」
「あれで、人を育てる事が出来れば完璧なんだけど」
「部下の方は、何人もいましたよね?」
「連れて来た人も多かったのよ」
「彼が育てたのでは無いのですか?」
「フランツに丸投げよ、それはもう気持ちのいいくらいにね」
「それは残念ですね」
「私もフランツにお願いしようかしら?」
山のように積み上げられた書類を見ながらロニが答える。
「確かにそろそろ必要ですね」
「今は貴方がいてくれて何とかなっているけれど、そうも言っていられなくなるわ。
せめて交易や収支の管理が出来るくらいの人が欲しいわね」
「ジャルドはそちらも当てになりませんからね」
「人掴みいくらで計算するような人に、冗談でも任せたくないわね」
本当にフランツに相談してみようかしら?
彼が自分の後を継ぐ者達を常に育てているのは何時もの事で、その中からこの国に来てもいいと言ってくれる人を紹介して欲しい。
この調子では、後何年かすれば、流石に私の手には負えなくなってくる。




